SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート

カンファレンスで聞く技術選定が現場で適用できないのはなぜか──AIエージェント時代の「穢れた技術選定」

【17-B-7】穢れた技術選定について

 技術カンファレンスで語られる技術選定はどれも参考になるのに、いざ自分の現場に持ち帰ると使えない。その距離はどこから生まれるのか。Developers Summit 2026 Summerに登壇したNTTテクノクロスの渡邉洋平氏は、ラーメン屋を舞台にしたフィクションから講演を始め、技術的に正しい選定が必ずしも待遇や組織、顧客の利益につながらない構図を解説した。浮かび上がってきたのは、「積極的な技術選定/消極的な技術選定」という軸だ。

「良い技術が採用されなかった」のはなぜか?

 渡邉洋平氏はNTTテクノクロスに所属しながら、AWS Ambassadorやコミュニティ「JAWS-UG 東京」の運営を務めるなど、その活動は多岐にわたる。2026年5月には『Agentic Coding 生成AI時代のシステム開発入門』を上梓し、コーディングエージェントの分野でもアウトプットを続ける。そんな渡邉氏が今回のテーマに据えたのは、「技術選定」だった。

NTTテクノクロス株式会社 渡邉 洋平氏
NTTテクノクロス株式会社 渡邉洋平氏

 渡邉氏は冒頭、現場の技術選定で向き合う難しさを、身近な例に変換して解説した。舞台はラーメン屋。やる気のある職人が「もっと麺の道を極めたい。手打ち麺を追加していいですか」と申し出るところから、4つの結末が順に示される。

 Take1は賃上げ交渉の決裂だ。手打ち麺は完成したが仕込みの負担が大きく「今の給料だと厳しい」と訴える職人に、店主は「お前がやりたいと言ったんじゃないか。給料はそのままだ」と返す。満足のいく待遇を得られず、職人は辞めていった。

 昇給を受け入れるTake2では試算が示される。粗利率を約33%と仮定すると、職人の月給を5万円上げるには売上を15万円、つまり850円のラーメンを従来より180杯多く売る必要がある。これは、月間販売数2000杯の約10%だ。顧客は味の向上に気づくが、通う頻度を上げるほどではなく、ラーメン屋は立ち行かなくなる。

「テスト駆動開発(TDD)をはじめよう」。登場人物を顧客・エンジニア・プロマネに置き換えた小話
スキル向上の対価を支払うために、より多く販売しようとするも、うまくいかない

 職人の給与を向上するためのコストを顧客に転嫁するTake3では、1杯あたり約80円の値上げが必要で、850円が930円になれば常連の来店頻度が落ちて赤字に転落する。残るTake4は手打ち麺の導入見送り。「儲からないからそのままだ」と言われた職人は、やはり辞めてしまった。

 ラーメン屋の事例は一体何を示すのか。渡邉氏は続いて、同じスライド構成を顧客・エンジニア・プロジェクトマネージャーの立場に置き換えて繰り返した。「もっと技術力を高めたい。チームにテスト駆動開発を取り入れていいですか」から始まる4つの結末だ。

 良い技術を採用しても待遇が良くなるとは限らず(Take1)、組織にも(Take2)、組織の外にも(Take3)利益をもたらすとは限らない。短期的には現状維持が「マシ」になってしまう場合もある(Take4)。

「テスト駆動開発(TDD)をはじめよう」。登場人物を顧客・エンジニア・プロマネに置き換えた小話
技術的に良い方向がすべての関係者に利益をもたらすとは限らない

次のページ
外部に出てくる「綺麗な」技術選定と、現場の乖離

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

川又 眞(カワマタ シン)

インタビュー、ポートレート、商品撮影写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29268 2026/09/01 09:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー