SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート

技術記事のネタは減り、読者も離れ、AIスロップが増える。Qiita歴14年の伊藤淳一氏が語る、それでも自分の手で書く理由

【B-4】AI時代のアウトプット、変わったこと、変わらないこと

 AIに任せれば技術記事は苦労せずに書ける。技術記事のネタも読者も減りつつある現状をどう捉えているか。株式会社ソニックガーデンの伊藤淳一氏は、ブログ歴16年・Qiita歴14年の経験を踏まえて語った。書き手と読み手のコストが逆転し、読み手の体験を考えない「AIスロップ」が量産される今、伊藤氏があえて自分の手で記事を書くことにこだわる理由とは。

コードに個性はいらないが、文章は違う

 伊藤淳一氏は、12年ぶりとなるデブサミ関西の壇上で話し始めた。前回登壇した2014年は3人で12〜13分ずつ話す小さなセッションだったが、今回は立ち見が出るほどの会場になったといい、会場の変化に驚いていた。ブログ歴16年、Qiita歴14年。ランキング上位やはてなブックマークのホットエントリー入りも多く経験している。

 商業誌の執筆経験も豊富で、『プロを目指す人のためのRuby入門』(通称チェリー本)や、今年発売した『技術記事を書く技術』、9月には海外書籍を監訳した『世界で闘う エンジニア・アウトプット力を鍛える本』も発売した。

伊藤氏が執筆・監訳した書籍3冊
伊藤氏が執筆・監訳した書籍

 「AIが登場して開発が変わったか」と問われれば、答えは「YES」だと伊藤氏は即座に言う。キーボードを叩いて0からコードを打つ機会は減り、Claude Codeにコードを書かせ、動作確認してよければそのままコミットするという進め方が増えた。ならば同じ理屈で、技術記事の執筆もAIに任せてしまえばいいのではないか。そう考える人も増えているだろうし、実際にそういう流れも見えている。だが伊藤氏自身は、AIに執筆を委ねていない。

 その理由は、コードと文章の違いにある。「書くもの」という意味ではどちらも同じだが、ユーザーがコードを直接読むことはない。コードの目的はまずコンピュータを動かすことであり、可読性は大事でも個性は不要だ。「これは明らかに伊藤さんの書いた癖の強いコードだな」と言われるようなコードは嫌がられるはずで、コーディング規約やリンタは、いわば個性を消す方向に働く仕組みだと伊藤氏は言う。

 一方、文章は書かれたものを人間がそのまま読む。書き手と読者をつなぐインターフェースであり、読み心地は読者に直接影響する。個性のない技術記事はどこか味気なく、誰が書いても同じような文章ばかりになれば、それはそれで寂しい。ここに、コードでは許されない書き手固有の色を文章では大事にしたいという伊藤氏の立場がある。

株式会社ソニックガーデン Railsプログラマ 伊藤潤一氏
株式会社ソニックガーデン 伊藤淳一氏

AIで書くのが楽になって起きたこと

 生産性の観点でも、コードと文章は同列には語れないと伊藤氏は続ける。仕事でコードや文章を書くなら生産性は重要だが、Qiitaやはてなブログに並ぶような技術記事の多くは、そもそも仕事として書かれているわけではない。

 伊藤氏自身、記事はプライベートの時間を使って書いている。仕事でない以上、生産性を必ずしも優先する必要はなく、多少は生産性が下がってでも大事にしたいものがあっていいはずだ、というのが伊藤氏の考えである。

技術記事の執筆は仕事ではないと指摘するスライド
技術記事の執筆は仕事ではない

 そう前置きしたうえで伊藤氏が向き合うのは、AIの登場によって技術記事を書く側・読む側それぞれに起きている変化だ。書く動機も、読む習慣も、これまでとは異なる理由で変化している。

次のページ
読み手の体験を考えないAI

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

タナカタイゾー(タナカ タイゾー)

 フリーカメラマン。日本写真映像専門学校卒業後、写真スタジオを経て独立。関西を拠点に広告、カタログ、雑誌の分野で活動。最近は子どもも成長し、休日は愛犬と一緒に1人と一匹でキャンプを楽しむ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

畠山 龍次(編集部)(ハタケヤマ リュウジ)

電気書院、マイナビ出版での勤務を経て、2023年に翔泳社に入社。2026年4月よりCodeZine編集部に配属。今一番話してみたい人は静馬レイ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29652 2026/09/24 08:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー