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Developers Summit 2026 KANSAI セッションレポート

技術記事のネタは減り、読者も離れ、AIスロップが増える。Qiita歴14年の伊藤淳一氏が語る、それでも自分の手で書く理由

【B-4】AI時代のアウトプット、変わったこと、変わらないこと

読み手の体験を考えないAI

 AI登場以前は人間が苦労してコードを書き、APIドキュメントを読み、ググって、デバッグしてようやく動いた。その苦労を備忘録として、あるいは同じ轍を踏む人がいないようにと記事に残していた。これは裏を返せば、自分の手柄をアピールしたいという動機でもある。

 ところがAIがすらすらとコードを書いてくれる今、「なんか動いてる」と眺めながらも、それは自分の手柄ではない。0から自分で書けばもっと時間がかかっただろうと思う一方で、苦労した実感が乏しいため書く動機が生まれず、伊藤氏自身も最近は技術記事のネタを見つけるのがしんどくなってきたという。

AI登場前後で記事を読む行動が変わったことを示すスライド
AI登場前後で記事を読む行動が変わった

 もう一つ、多くの人が実感しやすいものとして伊藤氏が挙げるのが、技術記事を読まなくなったという変化だ。以前なら「困った、わからない」の先にググって誰かの記事へとたどり着いていたが、今はAIに聞けば解決してしまう。

 伊藤氏自身、記事を検索して読む機会は明らかに減った。加えて最近は、記事の分量そのものが増えている。開くと途中まで読んで「まだ1/4か……」とタブを閉じてしまう。自身が過去にAIを使わずに書いた長い記事を例に挙げ、こうした分量の記事は執筆に1〜2日はかかると振り返る。それが昔に比べてあちこちに増えているのを見て、伊藤氏は「たぶんAIを使って書いているんだろうな」と感じるという。

書き手と読み手のコストの逆転

 この変化を、伊藤氏は「人間は自然のリミッターだった」という仮説で説明する。AI登場以前は何を書こうか考え、学んだことを整理し、言語化し、図やサンプルコードを加えて公開前に読み直す。この一連の作業に数時間はかかり、自分の時間というリソースを割く以上、どこかで「ここはもう書かなくていいか」「この説明はこれぐらいにしておこう」と内容は取捨選択されていた。それが結果として読み手にとって優しい分量、密度の濃い文章になっていた。

 ところがAIに書かせれば、その制約がなく、すらすらと文章が生成される。書く側のコストが大きく下がった代わりに、大量のテキストを読む側のコストが相対的にふくらんでしまった。書き手と読み手のコストが逆転したというのが伊藤氏の見立てだ。

書き手と読み手のコストが逆転し、AIスロップが生まれる構造図
書き手と読み手のコストが逆転し、AIスロップが生まれる構造

 その逆転がもっとも悪い形で表れたものの一つが、「AIスロップ」だといえる(ここでは読み手の体験を考えていない記事が大量に出回る現象をいう)。ネタが減り、記事は読まれなくなり、書き手のコストが下がった一方で、読み手のコストは相対的に上がった。

 伊藤氏の認識を共有したところで前半は終わり、後半は「では、僕はどうするのか」という自身の選択へと話は移っていく。記事を書くことをやめるのではなく、今も自分の手で書き続けるという選択だ。

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70〜80点の文章を直すぐらいなら、最初から自分で書く

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この記事の著者

タナカタイゾー(タナカ タイゾー)

 フリーカメラマン。日本写真映像専門学校卒業後、写真スタジオを経て独立。関西を拠点に広告、カタログ、雑誌の分野で活動。最近は子どもも成長し、休日は愛犬と一緒に1人と一匹でキャンプを楽しむ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

畠山 龍次(編集部)(ハタケヤマ リュウジ)

電気書院、マイナビ出版での勤務を経て、2023年に翔泳社に入社。2026年4月よりCodeZine編集部に配属。今一番話してみたい人は静馬レイ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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