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ProductZine Day 2026

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「Newbee Conference 2026」レポート

「やらないこと」はどう決めるのか──射幸心を煽らない、作り込まない、デザイナーだけでデザインしない【Newbee Conf】

「Newbee Conference 2026」レポート(前編)

斉木 崇(編集部)[著]

1人1プロダクトの組織で、人数より重くなる相性の問題

 3つ目のセッション「組織戦略」には、藤倉成太氏(キャディ VP of Engineering)と山崎聡氏(エムスリー CPO/CAIO)が登壇した。

藤倉成太氏(左)と山崎聡氏(右)
藤倉成太氏(左)と山崎聡氏(右)

 藤倉氏はまず、自分にも答えがない領域を認めた。社会人になって28年。自分が育てられたプロセスと、マネージャーとして若手を育ててきたプロセスは、今の時代には当てはまらない。

 「どんなコンピテンシー(高い成果を出す人に共通する行動特性)があれば、新卒や若手がAIネイティブなプロダクト開発を身につけられるのか。それは僕がやったことのない山の登り方になるはずなので、まだ分かっていません」

 一方で、役割の溶け方はキャディではすでに形になっている。エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーが一体のチームを組み、マネージャーとして機能しているのはエンジニア出身者であるため、エンジニアリングマネージャーがデザイナーやプロダクトマネージャーまで統括する。求められるのは人の管理だけではない。どのプロダクトバックログに何人を充て、AIのコストをどれだけかけ、どんなROIを見込むかまで計算できることだ。

 開発やデザインの作業は「瞬殺」できるようになり、ディスカバリーのPDCAも速く回るようになった。それでも藤倉氏は、回数を増やす方向には走らない。

 「速いからといって、どんどん回数をこなせばいいわけではありません」

 PDCAを2〜3日で何周も回すくらいなら、5日かけて正解のありかを議論する。その結果、エンジニアがプロダクトやビジネスの価値を探しに行き、ユーザーリサーチが得意なデザイナーは「ほとんどプロダクトマネージャーと変わらない」動きをするようになったという。

 山崎氏の現場は、さらに先へ進んでいる。山崎氏は、これからの組織で重みを増すものとして「個の力」と「スピード」の2つを挙げた。まず個の力について、こう言い切る。

 「大人数で作るという話は、もうほぼ絶滅すると思います」

 例えばSIerが100人体制で作るような開発は、本当になくなっていく。代わりに、3〜5人の特殊部隊のようなチームがやりきる。5人でも多すぎるかもしれず、エムスリーでは1人で1プロダクトを担う例がすでに多いという。

 なぜ少人数になるのか。山崎氏はビジネスゴールから説明する。ゴールに最短でたどり着こうとすると、ほとんどの場合、作り込みを削る方向に向かう。1つ目のセッションでの及川氏の話を引きながら、山崎氏はこう続けた。

 「ClaudeのMaxプランがあって人もいると、作っちゃうんですよね。でも、ほとんどいらないんです。利益を出してROIを回収することを考えると、作り込みこそ遠回りです」

 最低限で売れるプロダクトを、短い時間でたくさん作る。そうなると組織は、複数のプロダクトを並行して持つマルチプロダクトの方向へ進む。5人のチームなら、5人で1つを作り込むより、1人1プロダクトで5つを短期間に作りきるほうが有利だ。これまで5年、10年かかっていたプロダクトを1年で作りきる。個の力とスピードの2つが組織のポートフォリオを大きく変え、エムスリーではすでにそうなっている、と山崎氏は言う。

 若手の扱いも変わった。エムスリーの就業型インターンは、2週間かけて実務に取り組む形式だった。今年からは1回5〜6人の2日間に改め、業務で売れるレベルのプロダクトを最後に動かすところまでやりきってもらう。学生のトップ層が出すアウトプットは、従来の2週間分と「同等かそれ以上」だという。

 なお、このセッションではAIのトークンを社員にどう配るかも話題になった。後編で、ほかのセッションの議論とあわせて紹介する。

 質疑では、ログラスの広瀬丈氏が少数精鋭のリスクを尋ねた。Claude Codeを朝から晩まで触り、いつまでも働けてしまうエンジニアがいる。誰が抜けたかがすぐ分かるプロサッカーチームのような組織で、どう持続性を保つのか。

 藤倉氏は、質問に含まれる論点のうち、チームの相性を取り上げた。かつては休職や退職の話にならない限り、相性の問題にはなかなか手を打てなかった。

 「今の時代、人間同士のアライメントが一番時間がかかるじゃないですか」

 AIで人の作業のコストが下がったからこそ、相性の悪さはそのまま生産性の低下に直結する。皮肉なようだが、相性の重要度は相対的に上がっている、と藤倉氏は言う。

 山崎氏の答えは対照的だった。「うちはもっとハードモードです。もうレジリエンスなんていらないんじゃないか、と」。新人のキャッチアップに大きなコストがかかった時代は、既存のメンバーを同じチームに留める必要があった。今は新人が1日あれば追いつき、初日からそれなりに重いプルリクエストを出せる。だから本人の成長のための異動も気にせず行えるという。

 長時間働けてしまう問題については、「エンジニアリングは楽しくなった」と伝えているという。泥臭いコードリーディングやバグ修正はAIが肩代わりしてくれるのだから、みんなで乗り切ろう、と。「パワープレイすぎるかもしれない」と付け加えた山崎氏に、蜂須賀氏が「それが一番レジリエンスに頼っている」と返すと、山崎氏は、作り出すレジリエンスではなく、人がもともと持っている本能的なレジリエンスに頼っているのかもしれない、と応じた。

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デザインハーネスの時代に、デザイナーが引き受ける責任

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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