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ProductZine Day 2026

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「Newbee Conference 2026」レポート

「やらないこと」はどう決めるのか──射幸心を煽らない、作り込まない、デザイナーだけでデザインしない【Newbee Conf】

「Newbee Conference 2026」レポート(前編)

斉木 崇(編集部)[著]

デザインハーネスの時代に、デザイナーが引き受ける責任

 4つ目のセッション「体験設計」の冒頭で、蜂須賀氏はそれまでの議論をこうまとめた。ここまでの3セッションでも、デザイナーとプロダクトマネージャーの役割が溶けていく話や、AIで作りすぎてしまう話が出ていた、と。

宇野雄氏(左)と坪田朋氏(右)
宇野雄氏(左)と坪田朋氏(右)

 登壇したのは宇野雄氏と坪田朋氏(クラシル 上級執行役員 CPO)。宇野氏はイベントの開催告知時点ではnoteのCDOだったが、当日の自己紹介で、2か月ほど前に退任し、自身の会社Fluid Designでデザイン支援をしていると明かした。

 役割が溶けることについて、宇野氏の見方は明快だった。

 「僕の中では、元から溶かすべきものだったんです。技術がようやく追いついてきた」

 デザインをほかの職種の人が担うには、専用のツールを使わなければならなかった。「ツールが仕切りになっていて、逆に言うと、そのツールのおかげで僕たちは食べられていた」と宇野氏は振り返る。

 蜂須賀氏は、あえて意地の悪い問いを向けた。能力の高い人ならそう言うだろう。しかし、これまで組織から「この職種に特化してください」と言われて専門を磨いてきた人にとっては、急に手のひらを返された話ではないか。宇野氏は「正直、生存者バイアスにかかりまくりです」と率直に認めた。

 坪田氏はこう答えた。

 「誰が悪いのかと問われたら、もう犯人はいないと思うんです」

 だからこそ早めに受け入れ、前の世界から切り替えること。そのうえで、スキルの問題とマインドセットの問題を分けて考えることが重要だという。

 坪田氏が率いるクラシルの現場は、すでに切り替わっている。半年ほど前までは、デザインツールで作ったUIをエンジニアが実装する流れだった。今はClaude CodeやCodexから呼び出せるデザインシステムを用意し、「デザインハーネス」としてパッケージ化している。デザインハーネスとは、色や部品のルールをまとめたデザインシステムに、AIが必ず守る部分と判断してよい部分を定めた仕組み(ハーネス)を組み合わせたもの。誰が触っても一定の水準を超える画面ができるようにする狙いがある。

 プロダクトマネージャーがモックアップ用のリポジトリで試作し、エンジニアがそれを本番に取り込む。エラーのバリデーションや退会ページのような細部は、エンジニアが自らデザインして実装している。

 ただし、ハーネスは誰にでも作れるものではない。宇野氏は、作ってみて「思ったより難しい」と感じたという。

 「意思決定できる人でないと、その仕組みは作れません。AIに任せると、AIは盛りがちなので、すごく盛った料理を作ってしまうんです」

 全員がデザインできるデザインシステムを配った結果は、「いきなりジュニアデザイナーが50人増えた」感覚だった。

 では、デザイナーという職種はどうなるのか。宇野氏は、CDOが1人いてデザイナーが0人という組織も十分にありうると見る。

 「CDOは、デザイン的なアウトプットの責任を取る人であって、デザインをする人ではありません」

 ブランドの観点など、人が判断すべき部分は残る。仕組みを使ってもらい、そこから出たアウトプットの責任はすべて自分が取る。そういう人が1人いれば回る会社は確かにある、と宇野氏は言う。

 質疑では、専門特化してきた若手デザイナーの意識をどう変えればよいかという質問が出た。2人の答えは、どちらも「宣言」だった。坪田氏は、3か月以内にClaude Codeでデザインが完結する仕組みを作るから、みんなでそれに移ろうと社内に宣言した。期限までに、全員がターミナルでClaude CodeとGitを使えるようトレーニングを重ねたという。宇野氏はnoteでの最後の仕事として、Claude Codeだけでプロダクトを作ってみせた。できることとまだできないことを示したうえで、標準ツールの見直しに踏み切ったという。

 評価軸を問われた坪田氏は、当面はハーネスを調整し、自分のデザインの知識をAIで再現する仕組みを作る仕事が評価されると答えた。その先では、デザインは職種として少しずつ薄まり、誰もが事業を作る仕事に吸収されていくのではないか。坪田氏はその時期を「1年後ぐらい」と見ている。

手段を比べる前に、何を作りたいかを決める

 3つのセッションは、同じ変化について、それぞれの立場から語っていた。

 及川氏は、手段の比較から入らず、作りたい世界から「やらないこと」を導けと説いた。藤倉氏と山崎氏は、人数の単位を変え、作り込みを削り、そのぶん人と人の相性に手を打つ。宇野氏と坪田氏は、ツールごとに分かれていた役割を見直し、アウトプットの責任を引き受ける人を残した。

 作業が速く安くなるほど、何を作らないかを決める重さは増していく。その判断を誰がどんな言葉で引き受けるのか。3つの対談は、その具体的な姿を示していた。

 後編では、事業と経営をテーマにした2つのセッションを紹介する。「SaaSは終わる」と言われた1年を経て、経営者たちは何をコストと見て、何に賭けているのか。

 各セッションのアーカイブ動画は、10月29日から5週連続でNewbeeの公式YouTubeチャンネルで公開される予定だ。また、「Newbee Conference」の第2回は、来年2027年9月9日の開催が予定されているという。こちらもぜひ予定を空けて、追加情報を待っていただきたい。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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