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アイスリーデザインがAitriaに社名変更、AI駆動開発で「人月」ではなく「成果」を売る会社へ

森山 咲(編集部)[著]

 Aitria(旧社名:アイスリーデザイン)は11月4日、新社名・2027年事業戦略説明会を開催した。同日付で社名を変更し、Design、AI、Engineeringを融合した「AI駆動のデジタルエンジニアリング企業」を目指すことを掲げた。同社 代表取締役社長 CEOの芝陽一郎氏は、AIで開発に必要な人数が大幅に減るなか、「人月」ではなく「成果」を売る会社への転換を表明した。

Aitria株式会社 代表取締役社長 CEO 芝陽一郎氏
Aitria株式会社 代表取締役社長 CEO 芝陽一郎氏

分社化を前提にしたIT業界の構造が揺らぐ

 新社名の「Aitria(アイトリア)」は、「AI」と、ギリシア語で「3」を意味する「tria」を組み合わせたものだ。旧社名の「アイスリー」の「3」を引き継ぎ、同社の核となるDesign、AI、Engineeringの3つの力を一体化するという意味を込めた。同社の取引は、金融や情報通信業を中心とする国内のエンタープライズ企業との直接契約が9割以上を占める。

 社名変更の背景として芝氏が挙げたのが、AIによるIT業界の構造変化だ。日本のIT業界は1960〜70年代以降、大企業が情報システム子会社を分社化する形で形作られてきたが、米国や欧州の多くではシステムは内製化されている。芝氏は、AIの登場で分社化を前提とした構造が成り立たなくなり、垂直統合に向けた構造変革が進んでいると指摘した。

 同社自身の姿勢については、「お客様に言われたものをそのまま形にするのは、仕事としてあまり意味がないと考えています。ちゃんと世の中で使われるものでなければ意味がありません」と語る。価値あるサービスを考えて形にするという考え方は変えず、その実現方法をAIで進化させる。中核となるのが、LLMやAIエージェントを企画・設計、実装、テストなどの開発工程に取り入れ、人とAIの協働を前提に開発プロセスそのものを再設計する「AI駆動開発」だ。

人月の見積もりが通用しなくなる

 芝氏によれば、AIネイティブなシステム開発ではすでに、開発に必要な人数の大幅な減少が起きている。従来であればエンジニアを30人ほど割り当て、10カ月から1年半かけていたような案件でも、4〜5人で同等、場合によってはそれ以上の生産性を出せるようになっているという。

 そこで壁になるのが、人数×期間で値段が決まる人月という売り方だ。30人で10カ月なら300人月、5人で10カ月なら50人月になるが、料金をそのまま5分の1にすれば単なるダンピングになってしまう。同社は値付けを試行錯誤しており、なかでも重視するのが価値ベースの考え方だ。開発期間を大幅に短縮できるなら、そのスピードの価値を顧客にどう理解してもらうかが問われるという。

 その先に起きることとして芝氏が示したのが、頼まれるのはシステムではなく成果になるという見通しだ。顧客の要望は「作ってほしい」から「売上を上げたい」「解約を減らしたい」へと移り、人月で見積もるよりも、成果に応じて対価を受け取るアウトカムベースの取引が広がると見る。

AIネイティブなシステム開発会社とは(いま起きていること・これから起きること)
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差がつくのはAIの性能ではなく会社の知恵

 一方で芝氏は、AIツールを使えば誰でも同じことができるわけではなく、使ううえでの環境整備やノウハウ・経験の蓄積が欠かせないと強調する。

 同社では営業現場のすべての商談情報をデジタル化し、顧客の反応や成約・失注の結果をAIで解析して提案書の作成に生かしている。開発現場でも同様だ。かつてのナレッジマネジメントについて芝氏は「箱に知識を入れても、それを使わない人が多いです」と振り返り、背景知識を実際のプロジェクトで使う仕組みをAIで整えた会社ほど、その武器が磨かれていくと述べた。

 社内では、複数のAIエージェントが立ち上がり、エージェント同士で作業を進める形も動いている。少人数の人間と多数のAIエージェントによる組織で、1人の生産性が5人分に近づいているという。

 同社が実施した「AI活用実態調査2026」でも、組織の変化の遅れが浮かび上がった。AIの普及で求められる能力が変化したという回答は79.1%に上った一方、組織・社員の役割を変更済みという回答は42.9%にとどまる。芝氏は、AIの機能がどれだけ早く進化しても人間の習慣はなかなか変わらないと指摘し、この認識と実行の差を埋める組織・人材のあり方が2027年に向けた論点になるとした。

コーディングより要件定義でAIを

 同じ調査では、開発にAIを活用中または試験導入中の回答者32人のうち、84.4%がコーディングで、68.8%が要件定義でAIを利用していた。芝氏は、コーディングでAIを使う割合は8〜9割と高いものの、仕事で使いこなせているかは別の話だとしたうえで、要件定義での活用に注目する。日本では事業部門の要望をシステム子会社が要件に落とし込む分業が続いてきたが、AIによって発注者側がより解像度の高い要件を示せるようになるからだ。

 「AIをコーディングだけに使うよりも、要件定義に使ったほうが何倍も成果を出しやすいです。いくら製造工程が速くなっても、上の要件がコロコロ変わってしまうと、何度も作り直すことになります」

開発でAIを活用・検証する層が利用している工程
開発でAIを活用・検証する層が利用している工程

 同社はFY2030に売上100億円の達成を目標に掲げる。芝氏は同日のプレスリリースで、「私たちが目指すのは、単にAIを使って開発を効率化することではありません。AIを前提に、サービスのつくり方、ソフトウェア開発のあり方、さらには企業の価値創出そのものを進化させていくことです」とコメントしている。

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森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

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