「Headless 360 platform」でSalesforce・Slackのデータ接続が容易に
今年4月に開催された開発者向けイベント「TDX 2026」にて、Salesforceは「Salesforce Headless 360 platform」という構想を発表した。SalesforceにログインしてWebブラウザを操作することなく、APIやMCP、CLI経由ですべての機能・データにアクセスできる仕組みである。
これにより、AIエージェントがSalesforceを直接操作して開発に必要なデータを取得したり、アクションを実行したりすることが可能になった。
「プレーンな生成AIを単体で利用する場合、背景情報が不足しているために、ほしい回答が得られないことも少なくありません。しかし、MCPを介してSalesforceのデータに接続できれば、必要な情報を参照した上で回答を生成できるため、より求めていた結果を得やすくなります」(おだしょー氏)
プラットフォーム型MCPサーバー
おだしょー氏は、1つ目のデモとして、ChatGPTとSalesforceを連携し、ChatGPTからSalesforceのレコードを参照する方法を紹介した。
まず開発環境「Salesforce Developer Edition」を開き、外部クライアントアプリとMCPサーバーの設定を行う。Salesforce Developer Editionは、Salesforceが提供する開発環境で、クレジットカードの登録もなく完全無償で利用できる。
左カラムの検索から、「外部クライアントアプリケーションマネージャー」を選択し、必要事項を入力する。アプリケーション名やメールアドレスといった基本情報のほか、コールバックURLなどOAuthに関する設定をここで行う。ChatGPTとの連携に必要なコンシューマー鍵もここで取得できる。
次に、同じく左カラムから「MCPサーバー」を検索し、MCPサーバーを設定していく。今回のデモでは「sobject-all」を選択した。
外部クライアントアプリとMCPサーバーの設定が完了すると、ChatGPTのWeb版からプラグインを設定していく。新規プラグインの設定から、サーバーURLや先ほど取得したコンシューマー鍵などの必要事項を入力する。
以上の設定が完了すると、インストール済みのサーバー一覧にSalesforceが表示される。この状態でChatGPTのチャット画面から「Salesforceで取引先の情報を5件表示して」などの指示を投げるだけで、裏側でクエリが走り、レコードの情報が表示されるようになる。
また、MCPサーバー経由でどこまでの操作が可能なのかも、チャットで質問するだけで説明が返ってくる。このように、従来の「Salesforceにログインし、UIを操作してデータを見る」といった作業が一切不要になる。
任意のコーディングエージェントで、Salesforce上でビルドする
続いて、コーディングエージェントを使ってSalesforceをビルドする方法がデモを通して紹介された。
使うのは「Agentforce Labs」という実験的開発環境。自然言語でAIエージェントの開発を可能にするプラットフォームのひとつだ。具体的には、Agentforce Labsにプロンプトを入力し、AIエージェントを構築する。続いてCLIからSalesforceにログインして、選択した任意のコーディングエージェントがSalesforce自体の構築をする流れ。デモでは、イベント案内エージェントを構築する例を紹介した。
Agentforce Labsで「Start building」をクリックすると、自然言語でエージェント作成を指示できるチャット欄が展開される。そこにイベント案内エージェントの概要をプロンプトとして入力すれば、設計方針とあわせて、エージェントの実装に必要な「Agent Script」のコードが構築基盤である「Agentforce Builder」に出力され、同時にAIエージェントが構築される。
設計方針はSalesforce CLIのインストール方法やコマンドから丁寧に説明されているため、上から順番になぞっていけば初心者でも構築できるようになっている。SalesforceにCLIからログインして、コピーしたコマンドでAgent Skilsをインストールする。
その後、Claude Codeを立ち上げ、Agentforce Labsに提示された20行ほどのコードをコピーし貼り付け、実行する。この操作だけで、Claude CodeによってSalesforce側の設定・開発も完了した。
完成したイベント案内エージェントに「生成AIに関するセッションを教えてください」と尋ねると、生成AIがテーマのセッションがピックアップされて表示された。この時、右側にエージェントの推論のプロセスも表示されているほか、より詳細を確認したい場合は画面下部の「トレース」から一つひとつの動きを追跡できるようになっている。「こういったエンタープライズ向けの細かい制御が可能な点が特徴」だとおだしょー氏。
今回のデモではAgentforce Builderでの構築を紹介したが、Headless 360 platformはさまざまなところで活用できる。おだしょー氏は「『Slack』や『Tableau』などさまざまなプラットフォームを通じて活用できるので、ぜひ試してください」と推奨した。
AIエージェント×Slackの可能性
続いて、稲葉氏が「AIエージェント×Slack」でどんなことが実現できるのか解説した。具体的には、AIエージェントから「Slackアプリ」を構築するプロセスについてデモを行った。
Slackアプリとは、Slackのメンバーにアプリを追加し、チャットで呼び出して特定の処理を指示できる仕組みだ。エージェントの先駆け的な仕組みと言える。
現在、AIエージェントからSlackアプリを作成できるようになっていて、LLMの進化によって構築のフローが容易になっているという。「昔はさまざまな手順が必要だったSlackアプリの作成が『プロンプト一発でここまでできるようになった』点に注目いただければ」と稲葉氏。
Slackアプリの基本構成は次の通りだ。ユーザーは「アプリの定義」を作成し、利用するワークスペースにインストールして使う。処理を行うアプリ本体は、Slackの外側の環境上で動作させる必要がある。
これをAIエージェントを使って構築する。まず、「Sandbox」という仮想環境を入手するところからスタートする。
「従来はSlackのフリープランで開発を試してから、普段利用している商業プランにインストールして試すといった方法をとる場合が多かったのですが、今は開発に特化したSandboxを使うことで安全に試すことができます」(稲葉氏)
Sandboxの取得は、公式ページから登録を行うだけで完了する。手順に従って「Sandboxをプロビジョニングする」に進むと、新しいSandboxを作成できる。
続いて、Slackアプリの作成・開発・デプロイをコマンドラインから行える公式ツール「Slack CLI」をインストール。こちらもWebの公式ページにあるインストール方法に従ってダウンロードすればよい。
「Slack MCP and Skills」のプラグインも、公式で用意されているのでインストールする。Claude Codeであればスラッシュコマンドで入手できる。これによってClaude CodeやCruserでMCPサーバーやスキルの設定が可能になる。
これらをすべてセットしたら、MCPでSlackに接続して投稿を参照したり、Slackアプリを作成したりすることが可能になる。デモでは、メンションされたら「こんにちは、○○さん」と返すSlackアプリを作成した。
まず、VS Code上でClaude Codeを起動し、作成したいSlackアプリの概要をプロンプトに入力。その際、Slackアプリ開発フレームワークである「Bolt for Python」を使用するよう指示を出した。
するとプラグインを介してSlackのSkillが起動し、自動的に構築が進む。Slackワークスペースへの認証や、テンプレートには含まれない独自機能の追加なども自動で行われる。
従来はapi.slack.comの管理画面で手動で行う必要があったアプリ定義やインストール作業についても、「定義・インストールまで含め、すべて自動化できるようになりました」と稲葉氏は説明する。ほとんどの工程を自動で完結できるが、手動のコマンド操作が必要なタイミングではClaude Codeがその旨を教えてくれる。
現在では、メンションに反応を返すSlackアプリだけでなく、エージェント型のアプリも構築可能だ。さらに、テーブルやグラフなどのリッチな表現もSlackのネイティブな機能として利用できるようになっている。
Slackでは「Slackbot」というアプリを標準のエージェントとして提供しているが、こうした独自のAIエージェントを作ることで、チームに合った使い分けができる。将来的には、内部的なA2Aのような形で、Slack botから独自のAIエージェントを読み出すといった使い方も想定されているという。
最後に稲葉氏は、Slackの目指す世界観を共有し、セッションを締めくくった。
「本日ご覧いただいた通り、Slackアプリ開発でもコーディングエージェント対応を推進しています。また、Slackは人間だけでなくAIエージェントたちとも対話する場所になっていく。そういう世界観をお届けしたいと思っているので、皆さんまずはぜひ試してみてください」(稲葉氏)
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