プロジェクト全体にAIが伴走する「コラボワークAI」
昨年の取り組みの反省を踏まえ、今期からはAI活用のROIを上げるための活動を始めている。それが、受託開発のプロジェクト全体に伴走する「コラボワークAI」である。
これは、受託開発案件の提案・見積もりのフェーズから、設計・開発、そしてリリース後の保守運用に至るまで、プロジェクトの一連のプロセスにおいてAIを伴走させる仕組みだ。
例えば、提案フェーズにおいて主に3つの大きな課題が存在する。1つ目は品質のばらつきを生む「属人化」、2つ目は情報収集や資料作成・レビューにかかる「長時間化」、そして3つ目が「リスクの見落とし」である。
この課題を解決するために、コラボワークAIでは各ステップをAIで自動化・効率化する仕組みを構築。Boxなどのストレージ内に散在している多数の案件やフォルダの中から、過去の類似案件の情報をAIが自動的に収集・抽出し、標準のフォーマットに則ってAIが提案書のドラフトを自動生成してくれる。また、現在Excelを使って手作業で行っている見積書の作成も自動化できるため、作業の属人化・長時間化を防ぐことができる。

提案直前にはプロジェクト審議会による「提案レビュー」を行っているが、ここにもAIを伴走させることでリスク発見の精度を高めることができる。
「当社は品質管理のために、案件ごとに専門部隊による『プロジェクト審議会』という提案前レビューを3、4回ほど繰り返しています。ここでの過去の事例や審議会の指摘といった資源を事前にAIに読み込ませることで、提案フェーズ全体を効率化できると考えました」と河原氏は語る。
使い方としては、提案書のスライドをコラボワークAIに渡すと、同社独自の「77のチェック項目」に照らし合わせて評価が付けられる。例えば、RFPとの整合性はA判定、リスクに関しては洗い出しが不十分のためC判定、といった形で項目ごとにレビューしてくれる。
河原氏は、注目の機能として「デビルズ・アイ」(悪魔のレビューア)を紹介した。これはAIが意図的に批判的な意見を言う役割として振る舞い、人が見落としがちな計画の甘さを指摘する仕組みだ。しかも、批判だけで終わらせずに即時実行可能な処方箋を同時に提供する点が大きな特徴となっている。
河原氏は実際の提案書を本機能にレビューさせたリアルな指摘例をいくつか紹介した。

体制面に関して「有識者が不在です。この技術スタックにおいて高度スキルの保有者が体制にいません」と厳しい指摘が表示されている。それに対する処方箋として「シニアアーキテクトの〇〇氏を、設計レビュー工程において週10時間で良いので技術顧問として追加してください」と、社内の実在する人物を挙げた具体的な解決案が提示された。
また、見積もりやスケジュールに関して「バッファが完全にゼロかつ、データ移行のリハーサルなしで組まれた絵に描いた餅のスケジュールです」と手厳しく批判される例も紹介。これには「本番移行の2週間前に移行判定会議を強制セットしてください」と処方箋が提示されている。
河原氏自身も「私が言われたら結構へこむ」と苦笑するほど、あえて厳しい指摘をAIに提示させる仕組みだ。
その他にも、一般的なレビューの機能でも、表記ゆれや初歩的なミスが適切に指摘される。「顧客の呼称が、貴社(9箇所)とお客様(2箇所)で混在」「頂き(漢字)といただき(かな)が混在」といったミスや、カッコの半角全角の統一など、人間が見落としがちなポイントを網羅的に指摘するという。
セゾンテクノロジーは、なぜ自社でこのようなAIシステムを構築しようと考えたのか。最大の理由は、図らずとも発生してしまうAI活用の「個人依存」を排除するためだという。
「よくあるのが、個人がプロンプトを打ち込んでソースデータを渡すという属人的な使い方です。そうではなく、誰が使っても、我々が何年もかけて積み上げたレビューの実績データをAIに『強制的』に活用させる。そのためにこのような仕組みを作りました」と河原氏は強調する。

