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Developers Summit 2026 Summer セッションレポート

「うちの開発、遅くないか?」 その一言が生む重圧の正体

【16-C-1】誤解だらけの開発生産性~DMM.comで見てきた誤解~


「開発生産性」が経営層に伝わらないのは、言語が違うから

 開発生産性の議論がうまくいき始めても、次に石垣氏が直面したのは「開発者だけでなく、事業責任者や経営層にどう説明するか」という重圧だった。

 開発案件のリードタイムを分解すると、実は開発フェーズそのものより、その前の要件定義や後工程のQAに時間がかかっていることは少なくない。エンジニアはFour Keysや1人あたりのスループットを見るが、EMやPMはそれを工数というコストとして見て、事業責任者であるPMがそれを金額に変換する。経営層に至っては、PLやバランスシートといった財務会計の言葉でしか物事を捉えない。

 同じ「開発生産性」という言葉でも、レイヤーごとに測っているものも、使う言語もまったく違う。だからこそ、Four Keysのデータを無理に経営指標へ飛躍させれば机上の空論になる。

 一つひとつ丁寧に翻訳していく地道な作業こそが、開発生産性の議論には欠かせないと石垣氏は強調する。

 DMM.comでは実際、下図のような構成でモニタリングしている。このモニタリングでチームパフォーマンスを可視化する一方、勤怠から得られる工数データや金額、資産価値、減価償却といった管理会計・財務会計のデータをすべてBigQueryに集約し、Lookerやスプレッドシートで接続して見られるようにしている。

 プロジェクトごとの工数と担当者の単価から算出したコスト、チームの等級や雇用形態、採用・育成計画までを一つの「ヘルスチェックレポート」としてつなぎ合わせることで、プロジェクトが遅れている本当の理由(負債の蓄積なのか、チームのスキルなのか、予算や採用の制約なのか)が初めて見えてくるという。

モニタリング基盤の構成図
モニタリング基盤の構成図

 AIのコストについても、単なるツール費ではなく人材管理費として捉え直す視点を石垣氏は示す。月100万円の単価のエンジニアがAIコストを使えば、実質的には200万円の単価を持つ人材として見なすべきだという発想だ。

標準化という重圧に抗い、自分たちで指標をつくるチームへ

 物語の終盤では、うまくいったチームの取り組みを全社標準にできないかという問いが浮上する。しかし石垣氏は、Four Keysの測り方をトップダウンで標準化することには慎重だ。プロダクトの性質もチームの技術レベルも異なる以上、同じ数字を当てはめて比較することにあまり意味はない。1年前に自分たちが嫌っていた「数値だけを追う組織」を、標準化の名のもとに再現しかねないからだ。

 広げるべきは指標そのものではなく、学習速度や適応力だと石垣氏は語る。外部から与えられた指標を監視・管理のために追うのではなく、自分たちがユーザーに価値をより早く届けたいという内発的な動機から逆算して、チーム自身が指標をつくる。

トップダウンの標準化では数値を追う組織になるという指摘
トップダウンの標準化では数値を追う組織になるという指摘

 重圧からの脱却とは、重圧そのものがなくなることではなく、レイヤーごとに異なる言語を翻訳しながら判断できるようになることだ。数字を超えた価値、すなわち負債の返済、育成、説明責任を評価に組み込んでいくこと。

 それこそが、誤解だらけの開発生産性から一歩抜け出す道だと、石垣氏はセッションを締めくくった。

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この記事の著者

井原 淳一(イハラ ジュンイチ)

 雑誌やフリーペーパー(紙媒体)Webなどで、料理、人物(インタビューやポートレート)、商品撮影をしています。

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DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

DeveloperZineは、株式会社翔泳社が運営する、技術と組織の意思決定を支える情報メディアです。技術選定やチームづくりに向き合い、自分の判断を確かなものとしたいエンジニアやエンジニアリングリーダーに向けて、翔泳社主催エンジニアイベント「Developers Summit」とも連動しながら実践知...

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