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Developers Online イベントレポート

生成AIの最新トレンド「ハーネス」「仕様駆動」「ループ」とキャリアの越境 ──御田稔(みのるん)氏らが明かす現場最前線の開発プラクティス

AIエージェントの最新動向とこれからのキャリア【Developers Online】~KAG みのるんさんと一緒にAIの最新動向を学び、これからのキャリアを考えよう!~

自作エージェントの構築と最新エコシステム

 セッションの後半では、既存のツールを利用するだけでなく、自社のビジネスや個人の用途に合わせて「AIエージェントを自作・構築する」実践アプローチへとテーマが移った。

 御田氏は、自身の書籍執筆プロセスにおけるAIエージェント活用の実例を紹介した。思考や執筆のような核心的作業以外は、すべてエージェントに自動化させているという。

 具体的には、編集者との打ち合わせ音声を録音して自動文字起こしを行い、Codexに投げて議論の整理と次アクションを抽出。さらに、編集者からGitHub Issueに届いた原稿レビューに対し、Claude Codeが修正前後の差分を1問1答形式で著者にスマホ経由で確認を求め、OKを出すだけで自動修正・コミットが完了する仕組みを構築している。最終段階である印刷用のゲラの修正に関しても、原稿の差分から自動でPDFライブラリを叩き、修正指示コメントを自動挿入させているという。

 また、実演デモとして御田氏が開発した「パワポ作るマン」が披露された。チャット欄に「デブサミのオンラインイベントについて調べて資料にして」と指示を入力するだけで、裏側でAIがWeb検索を実行し、OSSのスライド作成ツール「Marp」を介してスライドを自動生成する。さらに、テキストが画面からはみ出していないかをPythonスクリプトで自律検知し、レイアウトを自動修正するエージェントループが組み込まれている。

御田氏の開発したサイト「パワポ作るマン」
御田氏の開発したサイト「パワポ作るマン」

 上田氏は、元漫画家という異色の経歴を活かして開発したWebサービス「キミガタリ」のデモを行った。テンプレートから物語の骨子を選択すると、AIエージェントが自律的にエピソードをストリーミング生成する。最大の特徴は登場人物ごとに独立したメモリ(AWS S3 Vectorsを活用したベクトル検索基盤)を保持させている点だ。キャラクターが自分の知っている情報(ローカルコンテキスト)だけで発言・行動するよう制御されているため、設定の辻褄が破綻しない整合性のあるマンガ・物語が自動生成される。

上田氏の開発したWebサービス「キミガタリ」
上田氏の開発したWebサービス「キミガタリ」

 一見高度に見えるこうした自作エージェントだが、構築の難易度は劇的に低下している。

 大坪氏と御田氏は、TypeScriptファーストで型安全にエージェントを記述できるオープンソースフレームワーク「Mastra」や「LangChain」を推奨した。Mastraを使用すれば、数行のTSコードで「モデル」「使用ツール」「プロンプト」を定義してインスタンス化するだけで、自律エージェントの基本構造が完成する。特にフロントエンド開発で一般的なNext.jsとの親和性が抜群に高く、Webエンジニアが既存の知識のままエージェント開発へ参入できる環境が整っているという。

 さらに、作成したエージェントを運用・デプロイするためのインフラエコシステムも完備されつつある。

 AWSの「Amazon Bedrock Agent Core」、Azureの「Foundry Hosted Agent」、Google Cloudの「Agent Runtime(旧Agent Engine)」など、主要パブリッククラウドがエージェント専用のサーバレス実行環境を標準提供している。単にコードを動かすだけでなく、エージェントに必要なアイデンティティ管理、ツールの安全なゲートウェイ、長期メモリ、オブザーバビリティ(監視・追跡性)といったハーネス機能がマネージドサービスとして統合されており、定額かつ安全に商用デプロイできる環境が確立されている。

エンジニアの価値は「越境」と「責任」にある

 ディスカッションの終盤、テーマは「AIエージェント時代にエンジニアはどう生き残るか、どうキャリアを形成すべきか」という最も切実な問いへと移行した。

AIエージェント時代のキャリア形成について
AIエージェント時代のキャリア形成について

 御田氏は、「自分はバックエンドの実装だけできます」「インフラの設定だけできます」といった単一の作業領域に閉じこもるエンジニアの価値は、AIの普及によって相対的に急落していくと強い警鐘を鳴らした。

 今後求められるのは、職種やスキルの境界線を越えて自発的に行動する「越境」の姿勢である。海外ではFDE(Forward Deployed Engineer:顧客の現場に深く入り込み課題解決を行うエンジニア)と呼ばれる職種が注目を集めているが、エンジニア自身がビジネスサイドやクライアントの泥臭い領域に足を踏み入れ、対話の中から「真に解決すべき課題」を発見してエージェント技術で解決策を提示できる人材こそが強固な価値を発揮する。

 受託開発の現場においても、言われた仕様通りのプログラムを書くだけの作業型受託は厳しくなり、顧客と共に本質的な要件を定義しプロトタイピングから併走できる企業・個人のみが生き残ると指摘された。

 上田氏は、ベンダー側からクラウド用ツールキットやMCPプロトコルが提供され、技術的なベストプラクティスすらも自動化されていく現状に触れた上で、人間だけにしか残されない決定的な価値を提示した。

 AIは非常に優秀な部下として機能するが、AIが上司になることはない。なぜなら、AIは自らのアウトプットに対して「責任」を負えないからだ。最終的にシステムが正しく動くことを保証する説明責任、ビジネス上の意思決定を行うオーナーシップこそが、最後まで人類に残された本質的な価値である。AIの出力に流されるのではなく、責任を持って仕事を完遂する姿勢が不可欠だと上田氏は断言した。

 また、大坪氏は若手エンジニアの育成と学習プロセスにおける注意点を提言した。

 AIに聞けばコードが一瞬で生成される時代だからこそ、単に「動いたからOK」と処理をブラックボックス化させてはならない。AIが生成したコードの意味や構造を自分自身で完全に理解し、他者やチームに対して自分の口で説明できるレベルまで落とし込むこと。この「理解とアウトプットの癖付け」を愚直に行うことこそが、AI時代においても確固たる成長を遂げる唯一の道筋であると示された。

 本セッションで示されたように、AIエージェント技術は「ハーネス」による環境整備、「仕様駆動開発(SDD)」によるコンテキストの最適化、そして「ループエンジニアリング」による完全自律化へと、目覚ましいスピードで進化を深めている。

 フレームワークやクラウドインフラが完備され、開発の参入障壁が劇的に下がった現代において、エンジニアに求められているのは技術への恐れを捨てて無邪気に使い倒す好奇心と、ビジネス課題への積極的な越境、そして生み出す成果物に対する確かな責任(オーナーシップ)である。AIという最強のパートナーを相棒として乗りこなし、自らの領域を広げ続けるエンジニアこそが、これからの激動の時代を大きく切り拓いていくに違いない。

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この記事の著者

小玉 莉子(編集部)(コダマ リコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部、Developers Summit FUKUOKA/Developers Boostオーガナイザー。公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科情報デザインコース卒。2022年に新卒で翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。好きなものは、車と動物とポーカー。愛車は200系Crown。 Twitter:@rico01_CZ Facebook

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