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ProductZine Day&オンラインセミナーは、プロダクト開発にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「ProductZine(プロダクトジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々のプロダクト開発のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

AI時代の「壁」を乗り越えろ。プロダクトマネージャーが直面するカオスと、現場を動かす「仕組み化」のリアル

ProductZine Day 2026

ProductZine Day 2026

「ProductZine Day 2026」レポート(AD)

AIが出す「それっぽいもの」を見抜く審美眼は、どこで育つのか──議事録をAIに任せた先の「育つ機会」を考える

【S-7】AIで出来ることを人間がやるのは本当に「無駄」なのか? ―― 無駄の中にあった「育つ機会」からAI時代の育成を考える

 会議の議事録をAIが要約する。録音ボタンを押して「要約して」と伝えれば終わる作業に、かつては「まとめる」「分からないところを先輩に聞く」「共有する」という手順があった。そこで人が育っていたのだとしたら、それはAIに任せてよかったのか。8月25日に開催されたProductZine Day 2026のセッション「AIでできることを人間がやるのは本当に『無駄』なのか?」は、この問いに答えを出さないと冒頭で宣言して始まった。Wellnizeの木下寛大氏とログラスの広瀬丈氏が掲げたゴールは、ノウハウでもベストプラクティスでもなく「問いが1つ増えること」だけ。そして20分のあいだに、会場からは123件の投稿が寄せられた。答えたのは登壇者ではなく会場で、その声は賛否に割れていた。

議事録から消えたのは「まとめる時間」ではなく「聞き返す相手」だった

 問いの入り口として木下氏が置いたのは、議事録だった。

 かつて議事録には手順があった。会議中にメモを取る。終わった後に要点をまとめる。分からないところを先輩に確認する。そのうえで共有する。それが今は、録音ボタンを押して「要約して」と伝えれば終わる。

 「めちゃくちゃ効率がいいし、なんなら人間がやるよりも網羅的だし、構造化されていてクオリティも高い」

 得たものははっきりしている。速さと、人間が作るより高い品質。では失ったものは何か。木下氏が挙げたのは2つで、「まとめる」という過程で生まれていた思考と、「確認」や「共有」のときに生まれていたコミュニケーションだった。新人にとっては、確認することも考えること自体も、そのままトレーニングになっていた側面がある。

図1 議事録をAIに任せて得たものと、失ったもの(木下氏の説明をもとに編集部作成)
図1 議事録をAIに任せて得たものと、失ったもの(木下氏の説明をもとに編集部作成/クリック・タップで拡大表示、以降同様)

 同じ構造は議事録に限らない、と木下氏は対象を広げた。コードを書く。チケットを書く。テストケースを書く。デザインのワイヤーを引く。どれも、AIに任せたほうが速い。

 「AIに本当にすべて任せてしまったら、育成の機会とか学びの機会というのはどうなっていくのだろう」

 この問いを持ち込んだのは、本セッションを提供したWellnizeの木下寛大氏(代表取締役 兼 執行役CEO)である。楽天でデータ分析基盤の開発・運用や電子書籍事業のプロダクト開発マネージャーを経験し、2017年にCo-Liftを設立。2024年に、同社と株式会社明治、株式会社ゲキジョウの3社の共同出資によりWellnizeを立ち上げた。

 自分がジュニアだったころ、やれば誰にでもできるような仕事を任され、そのプロセスの中で学んできた。この問いは、その実感から出ている。裏を返せば、手元にあるのは自分の経験だけで、誰にでも当てはまる答えを持っているわけではない。だから木下氏は冒頭で、この20分では答えを出さないと宣言した。ノウハウもベストプラクティスも話さない、とも。

 「今日このセッションが終わって『これってどうなんだろう』という問いが一つでも増えていたら、この企画的には成功かなと思っています」

株式会社Wellnize 代表取締役 兼 執行役CEO 木下寛大(きのした・かんた)氏
株式会社Wellnize 代表取締役 兼 執行役CEO 木下寛大(きのした・かんた)氏

「お客様がいる仕事の議事録に、育成を混ぜるな」

 この問いを受けたのが、ログラスでプロダクト全体のChief of Staffを務める広瀬丈氏である。組織・人・採用を担当する立場だが、この日は意図的に極端な側に立った。

 「もう、めっちゃスタンスを取って話すんですけど、AIがやったほうが早いことをわざわざ人間がするって、結構センスがないというか、もう別にやらなくていいのではないか、ぐらいに思っているんですよね」

 学びと経験が失われることは、そのとおりだと広瀬氏も認める。構造化能力も会社のコンテキストの理解も議事録が担ってきた。そのうえで会場に3つの質問を投げている。

 新入社員のころ議事録を書いていた人は、と聞くと、多くの手が挙がった。続けて「それは振り返ってよかったと思うか」。ここでもほぼ同じだけ挙がる。ところが3問目、「これがなくなるのは新人がかわいそうだから、その機会は残してあげたいと思うか」で、挙手の数は目に見えて減った。

 自分が書いてよかったと思う人は多い。それでも、後輩に同じことをさせたいとは思わない。この落差の上に、この日の議論は乗っていた。

 「確かに構造化とかコンテキストってめちゃくちゃ大事だと僕も思うんです。でも別に、それって他でも学ぼうと思ったら学べるじゃないですか」

 そして広瀬氏は、この日いちばん踏み込んだ言い方をした。

 「お客様がいる仕事の議事録に、育成を混ぜるな、みたいな話もあるわけじゃないですか」

 顧客からすれば、2時間かかる作業に時間を使うより、バリューやアウトカムを出してほしい。昔は許されたが、AIがある以上そうはいかない。だったら向き合うべきはそこではない、という理屈だった。

 木下氏はここで逆張りを宣言し、切り返す。構造化は他でも学べる、というのなら、どこでどう学ぶのか。

 「構造化能力でAIに自分が勝てるポイントってもう一つもないから、全部AIにやらせるしかなくなる。自分で構造化するという仕事、なくなりませんか」

 広瀬氏の返しは、その前提ごと引き取るものだった。構造化がAIのほうが得意なら、それはもう「いらない仕事」に変わっている。人間がしなければならない仕事は、議事録には残っていない。ストーリーテリングやナラティブ、人を惹きつけること。そちらに集中したほうがいい。

 「せっかくAIがあるのに、要は自動車があるのに足が速くなったほうがいい、みたいな話になっていませんか」

 木下氏はもう一段返した。ストーリーやナラティブも、何かの構造に肉付けするものではないか。その構造が正しいのか、今のコンテキストに合っているのか。それを自分で判断できなければ、肉付けの良しあしも分からない。

株式会社ログラス Chief of Staff/HRBP(プロダクト領域) 広瀬丈(ひろせ・じょう)氏
株式会社ログラス Chief of Staff/HRBP(プロダクト領域) 広瀬丈(ひろせ・じょう)氏

反論、実感の告白、代替案──20分で集まった123件の中身

 このセッションには、もう一人の話者がいた。会場の聴衆だ。

 冒頭で木下氏がQ&Aプラットフォームの「Slido」のQRコードを示すと、広瀬氏がこう付け加えていた。

 「Slidoに入っていただかないと、もうこのセッションの8割9割ぐらいは意味がなくなってしまうぐらい、Slidoを使いたいなと思っているので」

 呼びかけは効いた。議論が5分も進まないうちに投稿が流れ始め、2人は途中で何度も「コメントに追いつけていない」と漏らしている。20分が終わったとき、投稿は123件に達していた。1分あたり6件を超える計算になる。

 しかも中身が違った。Xに流れたのが感想中心だったのに対し、Slidoに集まったのは議論そのものだった。反論があり、実感の告白があり、代替案があり、別の問いがあった。

 このうち、あいさつや感想だけの短い投稿を除くと、およそ90件が議論にあたる。編集部でそれを読み分けたところ、論点は大きく4つに分かれた。

図2 20分のセッションに寄せられたSlido投稿123件と、そこから見えた4つの論点(編集部による整理)
図2 20分のセッションに寄せられたSlido投稿123件と、そこから見えた4つの論点(編集部による整理)

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「思考力が落ちている」は、すでに現場の実感だった

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この記事の著者

ProductZine編集部(プロダクトジンヘンシュウブ)

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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提供:株式会社Wellnize

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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