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【製造業IT最前線】ハード×ソフトでリアルを動かす!

なぜ村田製作所は社内で「FDE的な活動」を進めるのか──異業種出身のエンジニアが伴走する価値

「1つの機能を100%刺しにいける」やりがい

 情報システム部門と事業部門。大企業の組織構造上発生する縦割りにどう向き合ったのか。具体的な取り組みとして、栃川氏、林氏は週に何日か事業部の執務スペースに一部の席を借りて働いているという。

 「事業部側の担当者と直で話をして、業務に関係ない話なども交えながら信頼関係を構築して、まさにそこでしか聞けないような、業務における『ここが面倒くさい』といったヒアリングをしています」(林氏)

 打ち合わせの場ではなかなか出てこない意見が、その場では出る。聞いたその場で「じゃあ今作っている仕組みはこうしようか」と話せる。「物理的な距離の近さがプロダクトにもきちんと反映するようになっています」。そして事業部からは「使いやすくなりました」という声が返る。林氏は「すごく良いループが出来上がっています」と手ごたえを表現した。

 この距離の近さは、ドメイン理解の面でも効いている。栃川氏、林氏は、バックボーンに製造業を持たない。設計開発のプロセスを実際に経験したことはなく、その中で当然の前提として飛び交う話も初めて聞くものばかりだ。「『電子部品業界あるある』を聞いても意味が分からず、会話についていけない時はよくありました」

 栃川氏はさらに厳しい条件を挙げる。「村田製作所は歴史も事業規模も大きな企業なので、『弊社ならではのやり方』というのがあります。そういったものが調べても出てこないというのは、最初はやはり苦しかったです。」それを埋めたのが、隣に座るという選択だった。業務とは関係のない補足情報を「ここはこうなのです」と聞けることで、ドメインの理解に少しずつ近づいていった。

 距離の近さは、仕事の手応えも変えた。栃川氏は前職で、プロダクトマネージャー(PdM)の要望を受けてエンジニア視点でものを作っていた。今は事業部と直接やり取りしながら、「PdMでもありエンジニアでもあり、広く動くことが増えた」という。

 「1つの機能が100%刺さるという意味ではすごいやりがいがあります」と栃川氏は言う。前職のSaaSでは、機能をリリースしても実際には使われないケースや、想定とは違う使われ方をすることがあった。「狙って打ちに行っても100%当たりづらい」。それに対して社内アプリケーションには明確なニーズがあるぶん、そこに当てにいける。使う人が限定されているため、外せば率直な意見が飛んでくる。栃川氏はそれを「声の届きやすさ」と表現した。

まずは事業部で価値を出し、そこで得られた知見を全社の共通機能として還元する

 2人が作っているのは、ECMプラットフォームと呼ばれる基盤の機能の1つだ。エンジニアリングチェーンを一連で見ると、製品の設計情報の管理、BOM(部品表)のデータ管理、試作業務の管理など、業務の切り口ごとに機能が定義されている。その1つ1つを構築し、各事業部に展開する。必要な機能を組み合わせて商品開発プロセスを迅速に立ち上げられる共通基盤にする、という構想だ。栃川氏と林氏が担当しているのは、このうち製品・設計情報管理である。

ECMプラットフォームが提供する機能のカタログと、企画構想から量産移管までのプロセス
ゴールは「商品開発プロセスを迅速に立ち上げられる共通基盤」の構築

 なぜカタログにするのか。林氏が挙げたのは「業務のやり方を一定の型として固める」ことだ。製品によって求められるものは変わるが、企画して設計で開発し、試作して量産するという大枠の流れ自体は決まっている。栃川氏は今後の拡張性について、「もちろん製品ごとに異なる部分はありますが、基本的にポイントは似ているはずという仮説の下で、1つの成功例は10、100に拡大していこうと取り組んでいます」と話す。ECMプラットフォームが目指す先は、あくまで個別の仕組みを構築することではなく、全社に通用する共通機能・データモデルとしてのカタログ化/プロダクト化だ。

 では、二人が担当する製品・設計情報管理では具体的にどのような取り組みがあるのだろうか。林氏は現状の課題から説明を始めた。商品開発の頭から量産までの流れの中で、製品のパラメーターやサイズなど取り扱いたいデータがある。ところがそれらは構造化されてデータベースで管理されておらず、ファイルや各種システムの中に散らばっていた。

 結果として、設計のフェーズで「どれがその製品の最新の情報なのか」を知ろうとすると、いろいろな仕組みを覗きに行き、設計開発者が手元で持っているExcelのファイルの情報をかき集めなければならない。それを一元管理できるようにデータベースを作る、というのが今の取り組みだ。

 業務ヒアリングで管理したい情報と現場の業務課題を整理し、データモデリングで情報の関係・粒度・履歴をデータ構造に設計し、Webアプリ開発で画面・API・DBを実装する。2人はここまでを一貫して担う。栃川氏が「一番主たるところ」と呼んだのはデータ連携だ。たとえば採番という業務では、品番を決める人と製品情報を入力する人が別だったりする。それをどうつなぐのか、事業部の担当者に1つずつヒアリングしながら決めていく。

 現在担っている業務の中で、どこが特に難しいのか。栃川氏は、「絶対的にデータモデリングです。」と即答した。果たして、どのような難しさに直面しているのだろうか。

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同じ物質でも「固形」と「液体」で入れるべきテーブルが異なる

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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