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AI時代の「壁」を乗り越えろ。プロダクトマネージャーが直面するカオスと、現場を動かす「仕組み化」のリアル

ProductZine Day 2026

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キーパーソンインタビュー(ProductZine)

「何を作るか」より「何を作らないか」が難しくなった──Notion CTOマックス・ショーニング氏に聞く、プロダクトの「テイスト」の磨き方

人間に最後に残るのは「理解する」仕事

 では、文章を書く仕事はどうか。良い記事かどうかの判断をAIに持たせられるかと尋ねると、ショーニング氏はAIに書かせること自体に賛成しなかった。

 「書くことは考えることです。ほとんどの物事がどう動いているのか、もう誰も理解していない。そんな世界には住みたくありません。AIに書かせるのは、スロットマシンを回すようなものです」

 対照的に、UIの高速化ならAIに任せられる。ブラウザの開発者ツールでフレームレートを見せれば、エージェントは改善を繰り返す。ただしそれは「テイストではなく、単にパフォーマンスの問題」だと同氏は線を引く。

 「だから私は、AIの文章をどう良くするかを考えることに、あまり時間を使いません。それは最後に残る仕事だと思うからです」

 人間が理解し続けることの重要性は、エージェント時代のUXの話にもつながる。AIは人間より速く進歩していくが、人間は制御したいと考える。制御するには、理解が要る。

 「エージェントの中で起きている魔法を、哀れでちっぽけで頭の悪い人間である私に、どう説明するか。それがUXの価値です」

 一方で、人間の理解力はゆっくりとしか進化しない。だから、理解を助ける形が要る。複雑な量の情報を理解するにはスプレッドシートが、思考を理解するには(体系立てられた)文章が優れている。エージェントとのやりとりを、すべてチャットに置き換えればよいわけではないということだ。

 「何もかもがチャットで済むわけではありません」

 ただし、どんどん賢くなっていくものを、人間はどう理解すればよいのか。この問いには、ショーニング氏も答えを持っていない。

 「アリが私たちの行動を理解するすべを持たないのと同じです。だから、分かりません。でもそれは、私たち全員が一緒に進んでいる旅なのだと思います」

プロダクトマネージャーの仕事は、ゴミ出しからコードまで

 では、プロダクトマネージャーに最後に残る仕事は何か。ショーニング氏は「とても難しい質問です。私たちは何万人も採用する必要がない、ある意味ぜいたくな立場にいて、そうでなければ答えは変わると思います」と前置きしたうえで、こう答えた。

 「プロダクトマネージャーは、顧客にとってプロダクトを成功させるために、何でもやらなければなりません。それがゴミ出しでも、コードを書くことでも、顧客との電話でも、指標の分析でも構わないんです」

 そして、成功するプロダクトマネージャーは昔からそうだった、と付け加えた。新しい職務が生まれたのではなく、もともとの仕事の輪郭がはっきりしたということだ。

 そうした主体性の高い人材をどう見つけるのか。同氏が挙げたのは、ジュニア層の採用だ。

 「ジュニアの人を採用することはとても重要です。ナイーブさ(純粋さ、素朴さ)は、ときに主体性にとって良いものだからです。何が不可能かをまだ知らないから、とにかくやってみる。そして成功するんです」

 日本の会社の運営では大きな挑戦になるだろう、とも同氏は添えた。もう一つ見るのは、履歴書の型破りな部分だ。直線的な経歴は退屈だという。面接では、こんな質問をする。

 「聴衆の前で言ったら面倒なことになりそうな、あなたの最も物議を醸す意見は何ですか」

 答えたがらない人は、ルールに従うことを最優先するタイプだと同氏は見る。ルールが大切なのはもちろんだ。そのうえで知りたいのは、ルールを壊さずに曲げられる境界線に、どこまで近づけるかだという。

日本の作り手へ──小さく、管理された失敗を

 ショーニング氏は、日本の顧客について「私たち以上にNotionを使いこなしている」と語る。アニメーションの細部に至るまでフィードバックが寄せられ、Notionをとことん押し広げてくれる。システムの不整合を最初に教えてくれるのも、日本の顧客だという。

 そのうえで、日本のプロダクトマネージャーと開発者へのメッセージを求めると、同氏はこう話した。

 「今回の来日中、何度も言ってきたことですが、日本の職場文化は失敗を抑え込みすぎていると思います。長期的な失敗の話ではありません。ごく小さな失敗の話です」

 「権限のある立場の人が、チームに失敗を本気で奨励しなければなりません。とても管理された形で、失敗させる。イノベーションを起こす方法は、それしかないからです」

 コードがタダになっても、ソフトウェアが良くならないのはなぜか。ショーニング氏の答えをつなげれば、ボトルネックが良いアイデアに移ったからであり、良いアイデアは考えるだけでは手に入らないからだ。悪いアイデアを安く試し、捨てる。何を作らないかを、毎週、顧客の体験に照らして決め続ける。そこで起きる小さな失敗を、権限を持つ人が許す。

 振り返れば、Notionが茶室で考え抜いた作り直しも、資金が尽きて会社をリセットするという失敗から始まっていた。

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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