「AIは物語を書かない。あなたが書く」AI slopに向き合うGitHubが示した、メンテナーを守る機能と人間の役割【GitHub Universe 2026】
GitHub Universe 2026 Day2 Closing Keynoteレポート
ずっと作りたかったアプリを、時間やスキルがなくても作れるようになった。その速さは、メンテナーを埋める質の低いPR(slop)も生んでいる。2026年10月29日(現地時間)、米サンフランシスコで開かれたGitHub Universe 2026のクロージング基調講演で、GitHubのMartin Woodward氏が速さの先に残る人間の仕事として挙げたのは、「何を良しとするか」の判断だった。人とエージェントが同じ計画を一緒に書き、誰がいつ決めたかを残すGitHub Nextの新プロジェクト「Chopin」も披露された。
速すぎる変化についていくために「やってみながら学ぶ」
「1週おきに新しいコーディングモデルが出るようで、いつも自分が古くなった気がします」。GitHubでデベロッパーリレーションズ担当VPを務めるMartin Woodward氏は、速すぎる変化についていけない感覚をそう打ち明けた。そのなかで自分が選ぶ学び方が、やってみることだという。
題材にしたのは、GitHub Universeの参加者が首から下げているバッジである。日々の仕事とは別に、実験し、遊び、何かを作るための場所として設計されたもので、Woodward氏の趣味のプロジェクトから始まった。今年は320×240ピクセルの画面を備え、RP2350(Dual ARM Cortex-M33、200MHz)を載せた小さなコンピューターになっている。

Woodward氏は壇上で、Copilotアプリにプロンプトを1つ入力し、バッジ向けのブロック崩しゲームを一度で作ってみせた。コツは、キャンバス上で動かして調べ、デバッグできる検証のループをプロセスに組み込むこと。「そうすれば、エージェントは驚くほどすごいことができます」。
本題はそのあとである。AIの話をする立場でありながら、Woodward氏は機械学習の基礎にまったく触れたことがなかったという。そこで歩数計を作ることにした。Bluetoothで加速度センサーをつなぎ、バッジの動きをライブのテレメトリで見ながら、「歩く」「じっとする」のデータを集める。ブラウザ上で単純な決定木のモデルを学習させてバッジに載せると、歩いている最中も止まったときも、バッジが見分けるようになった。わずかなAIクレジットで、知らなかった領域を自分の手で学べたと振り返った。
PRの40%超が「エージェント発」、増えたのは成果物だけではなかった
エージェントが最初の下書きを作ったプルリクエストは40%を超え、3月の17%から増えた。スライドには、2026年9月だけでエージェントが開始したPRが1億1,000万件、6カ月でエージェント生成のPRが6倍になったという数字も並んだ。数カ月かかっていたアイデアを数分で出荷でき、10%ほど進めてみて追う価値を見極めるプロトタイプづくりにも使える。

ただし、とWoodward氏は続ける。「すべてのPRがダイヤモンドではありません。かつてなく作りやすいからといって、手元にあるものがコミットできる状態だとは限らないのです」。ただの悪い考えもあれば、アイデアとさえ呼べないものもある。それがslop(質の低いもの)で、多くは善意から出てくる。それでも、オープンソースのメンテナーが選り分けるには時間がかかる。
オープンソースは、これまで「使う人は多く、貢献する人はごく一部」というバランスで成り立ってきた。貢献するにはコードの書き方もコミュニティの作法も学ぶ必要があり、その手間が自然な関門になっていたからだ。GitHubはその関門を下げ、貢献する人を増やしてきた。ところが、週末にプロジェクトを作れるほどの手軽さは、プロジェクトの文化や、何に価値があるのかを知らないまま貢献する人も生む。なかでもセキュリティの脆弱性に見える貢献は、メンテナーの自由な時間を大きく奪い、意味のある貢献を見つけにくくする。
この記事は参考になりましたか?
- GitHub Universe 2026 レポート連載記事一覧
-
- 「AIは物語を書かない。あなたが書く」AI slopに向き合うGitHubが示した、メンテ...
- 月間70億件超のコミットを、GitHubは新しいGitアーキテクチャで支える──Copil...
- この記事の著者
-
近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)
株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
