膨大な選択肢を「体系化」し、価値提供を加速させる挑戦
「COMPANY」の高い業務網羅性を最大限活かすためには、各社の状況を正確に把握した上でベストマッチな設定を行う必要がある。長井氏は以前、コンサルタントとして複数の企業への製品導入を経験するなかで、自由度が高く、あらゆる業務に対応できる「COMPANY」のポテンシャルをより短期間で実感してもらうための方法はないかと考え続けていた。
そこで長井氏は、お客様の業務をスムーズに製品の設定に落とし込む「標準設計」、お客様の最適な利用形を示す「標準設定」、そして円滑な立ち上げを導く「標準導入手法」という3つの要素を「ベストプラクティスとして体系化する」ことの重要性に行き着く。あらゆる業務パターンをカバーする巨大なプロダクトだからこそ、その広大な機能群から最適解を抽出し、誰でも即座に活用できる形に整理するのは非常にやりがいのある挑戦だった。
長井氏は「自由度が高いからこそ、あえて推奨の型を提示することで、導入のスピード感は格段に上がる」と考える。製品のほぼすべての画面・機能を一から見つめ直した結果、膨大なパラメーターの中にも規則性を整理した結果、パッケージとして推奨したい「推奨の設定」、業務運用に応じて自ずと決まる「業務の設定」、見た目の好みで決めてよい「任意の設定」の3つに分類をした。
分類が明確になったことで、設計と設定の方針をテンプレート化して提供可能になった。こうして生まれたのが、設定ファイルと解説ドキュメントをセットで提供する「設定テンプレート」だ。ファイルを取り込むだけで、画面や制御が完成した状態からスタートできる仕組みを整えたことで、WHIが培ってきたノウハウの言語化と、お客様の導入スピード向上を同時に実現した。
個社からの要望を、全社向けの標準機能に育てるには?
機能の標準化の具体例として長井氏が挙げたのが、個社からの「異動発令の申請」機能への要望だ。「COMPANY」には、従業員の所属を変更すると事業所などの項目が組織図に基づいて自動入力される機能があるが、この自動入力は組織図記載の内容と強制的に連動する仕様だった。だが、あるお客様から「対象者がイレギュラーな場合は、申請者による上書き入力を可能にしてほしい」という要望が寄せられたのだ。
開発者は1社のみから要望を受けた段階で、「個社特有の要望なのか」「自動入力の対象となる事業所(勤務先の拠点)以外の項目にも影響するのか」を判断しかねていた。このまま開発を進めれば、個社向けかつ特定項目の専用機能として作り込んでしまいかねない状況だった。長井氏は「個社か全社か」「業務の汎用性」という2つの軸で要望を整理。他社でも同様の要望を聞いたことがあるという経験、そして原価がプロジェクト単位で発生し組織と一致しないケースがあるという知見から、この要望は個社固有ではなく、全社で想定できるイレギュラーだと判断した。長井氏はこの内容を設計書に起こし、開発者に対して汎用的なドメイン機能になり得ることを示した。
このように、個社の要望の背景にある「業務の本質」を深く分析することで、プロダクト全体の価値向上へとつなげることができる。個社要望からエッセンスを抽出し、パッケージ製品としての正解を作り上げた事例だと長井氏は振り返る。こうした判断を、長井氏は日々どれだけの案件で重ねているのだろうか。

