半年でレビュー152件、開発者の「伴走者」としてのドメインエキスパート
長井氏は2026年上期の6カ月間で、BugFix67件・Function85件、合計152件の案件レビューに参加してきた。ただし目標はレビュアーとして参加することそのものではなく、「提案と実行でサポートすること」にある。設計書やリリースノートの作成、お客様からの問い合わせ対応、その逆のヒアリングなど、製品開発者だけでは対応しづらい業務についても、一緒に書く、聞く、回答するという形で実行と代行を徹底している。開発者がなるべく開発に専念できる状態にしたいという思いからの活動だ。開発者にとって「ブロッカー」ではなく「伴走者」として機能することで、開発工数の確保に貢献するねらいだ。
杉田氏は長井氏の取り組みを振り返り、「パッケージ製品として提供することで多くのお客様に価値を提供できる一方で、ご要望を標準機能として提供する難しさもあります。だからこそ、多種多様なご要望の「本質」を見極めていく必要があります。」と語る。
製品が抱える豊富なノウハウに対してすべてを網羅しようとするのではなく、組織的に標準を定義していくことで、正解を提案する側に回れば武器になる。こうして開発者一人ひとりがドメイン知識という武器を持ってスタートラインに立てるようになれば、お客様の本質的な価値追求に集中できる。それこそが、単なる保守運用ではない、心から面白いと思えるものづくりの姿だと杉田氏は語る。
ドメイン知識こそ、エンジニアの独自性になる
杉田氏は最後に、生成AIの進化によってコードを書くスピードや技術的課題の解決スピードが劇的に向上し、誰もが素早く開発できる時代が到来していると指摘した。だからこそ問われるのが、プロダクトの差別化要因とエンジニアの価値はどこにあるかということだ。その答えについて、杉田氏は「テクノロジーの力だけではたどり着けない、蓄積してきた業務ノウハウや、お客様の声の裏にある本質を理解する力、すなわちドメイン知識にほかなりません」と語る。
技術がどれだけ進化しても、「誰のために、何を、なぜ作るのか」を決めるのは開発者自身であるべきだと2人は強調する。お客様の声の先を見つめ、ドメインの力を最大の武器にして期待を超える価値を作っていくという姿勢は、大規模な基幹システムに限らず、あらゆる保守・運用の現場に持ち帰れる視点だろう。
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