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Developers Summit 2026 Summer セッションレポート(AD)

「あの人に聞かないと分からない」をなくす──DMMがSlackに置いたAIエージェントが変えた、SREと開発者の会話

【17-C-4】AI Agentと『伴走』する開発プロセスがもたらした、SREと開発チームのソフトウェア開発ライフサイクルの変化

想定を超えて広がったユースケース──アラートの一次調査から、運営チームの仕様確認まで

 当初想定していた使い方は、アラートの一次調査だった。アラートが飛んでくるとエージェントが自動で調べ、原因・影響範囲・推奨対応をSlackに投稿する。紹介されたのは、深夜にCloudFrontの5xxエラー率アラートが上がったケースだ。エージェントは「APIの応答遅延でPHP-FPMのワーカープロセスが枯渇していますよ。ただ7分で自動復旧しています」と返し、タイムラインや影響範囲までまとめた。

 面白いのはその先だ。CPU使用率のアラートが4週間で15回繰り返されたとき、エージェントは毎回同じ根本原因を指摘し続けた。その積み重ねが「恒久対策が必要だ」という判断材料になる。逆にステージング環境の13件のアラートは、ほぼすべてが誤検知と判定され、アラート疲れの軽減につながった。朝会向けレポートも、いまは毎朝自動で投稿される。

 だが周氏が「個人的に一番面白かった変化」と語ったのは、開発者が自分で一次調査を完結させるようになったことだ。SlackにトレースIDを貼って「このリクエストがなぜ500エラーになったのか」と聞けば答えが返る。「PRをマージしたら近い時間に障害が起きたが、本当にこのPRが原因か」と聞けば、リリース前後のメトリクスから因果関係を検証する。従来なら「SREさん、ちょっとサポートお願いできますか」と連絡が飛び、30分から1時間待っていたものだ。

 用途はさらに広がった。「このAPI、他のリポジトリで使われていますか。削除しても影響ないですか」と聞けば、組織全体のコード検索と実際のアクセス履歴を踏まえた可否が返る。1人で作業していてもレビューパートナーになるわけだ。設計段階で「APIコールを6件追加したいが、キャパシティは問題ないか」と聞けばシミュレーションが返る。そして想定外だったのが、エンジニア以外の利用である。運営チームが「このクーポンにはどういった設定条件が可能か」と聞くと、エージェントがコードと設定ファイルを読んで答える。

人と人の間にエージェントが入る──3つの変化と、運用して見えた勘所

図4 設計への組み込み、会話の質の向上、広い視点による気づき。チームに起きた3つの変化(周氏の講演資料より)
図4 設計への組み込み、会話の質の向上、広い視点による気づき。チームに起きた3つの変化(周氏の講演資料より)

 周氏は、チームに3つの変化が起きたと総括する。

 1つ目は、設計・実装・検証のサイクルに、エージェントとの会話が自然に組み込まれたこと。「Agentが『困ったときのヘルプデスク』ではなく、一緒に開発を進めるパートナーという風に考えています」(周氏)

 2つ目は、人と人の間にエージェントが入るようになったこと。開発者からSREへの問い合わせに根拠が伴うようになり、会話の質が上がっているという。ただし人と人のコミュニケーションが不要になったとは考えていないと周氏は釘を刺す。「エージェントで解決できるものはエージェントに任せて、人はより人にしかできないことに集中するという形です」

 3つ目は、LLMの広い視点が新しい気づきを生んだこと。人が調べるにはコストがかかるため、軽微な変動は後回しになりがちだ。エージェントは頼まれていない範囲まで見て、「DBのCPUスパイクが定期的に出ていますよ」といった指摘を返してくる。見逃されていた予兆に光が当たるようになった。

 効果は数字でも確かめられている。利用部署へのヒアリングでは、1回の利用で調査業務なら30分〜1時間、レポーティングなら1〜2時間程度が短縮できた。一方で、ビジネス判断や組織間の調整、「そもそもこの領域はオブザーバビリティが足りていない」という見極めは人が担うという線引きも明確になった。

 コストは1回あたりの調査で1ドル未満。その調整過程の知見が示唆に富む。トークン数を減らしすぎると逆効果になるのだ。ツールのレスポンスを削りすぎると、エージェントが「情報が足りない」と判断して追加でツールを実行し、かえってコストが上がる。もう一つの勘所が、取得元ごとにばらつくフォーマットやタイムスタンプの統一だ。特にJSTとUTCの混在は、無関係な時刻の変動を拾う勘違いを招く。

 「AI Agentと伴走する開発プロセスは、AIに判断を任せることではなく、人がより良い判断をするための材料を、AIと一緒に揃えていくプロセス」。周氏はそう述べてセッションを締めくくった。

 最後に、New Relic カスタマーサクセス部 テクニカルアカウントマネージャの小林良太郎氏が自社の取り組みを補足した。「お話しいただいた周さんがおっしゃっていたように、New Relicも人間に伴走するということを今コンセプトとして考えています」と小林氏。障害の予兆検知・対応・分析をAIが拡張し、自律的に調査していく方向を打ち出す。

New Relic カスタマーサクセス部 テクニカルアカウントマネージャ 小林良太郎氏
New Relic カスタマーサクセス部 テクニカルアカウントマネージャ 小林良太郎氏

 MCPはプレビュー中ながら公開されており、ClaudeやCursorから接続して「今どんな障害が起きているか」と尋ねられる。SREエージェントをアラートの送信先に設定すれば、一次切り分けを経てSlackへ投稿する流れも組める。GitHubのMCPと接続すれば、設計ドキュメントのような監視データに収まらないコンテキストも踏まえた助言が可能になる。「パフォーマンスリスクインボックス」はN+1やスロークエリを検出して画面上に整理する。

 「皆さんが見やすいということは、AIも見やすいんです」と小林氏。EC2の再起動やPagerDuty連携を自動化するワークフローオートメーションも紹介された。

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この記事の著者

井原 淳一(イハラ ジュンイチ)

 雑誌やフリーペーパー(紙媒体)Webなどで、料理、人物(インタビューやポートレート)、商品撮影をしています。

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DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

DeveloperZineは、株式会社翔泳社が運営する、技術と組織の意思決定を支える情報メディアです。技術選定やチームづくりに向き合い、自分の判断を確かなものとしたいエンジニアやエンジニアリングリーダーに向けて、翔泳社主催エンジニアイベント「Developers Summit」とも連動しながら実践知...

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