データを「行動」に変えるAgentic Data Cloud
続いて登壇した、Google Cloud データ アナリティクス プロダクト マネジメント担当 バイス プレジデントのシリッシュ・チャンドラセカラン氏は「受動的なインテリジェンスの時代は終わりました」と、データ活用における3つのシフトを示した。
人間のスケールからエージェントのスケールへ、受動的なインテリジェンスから能動的なアクションへ、そしてデータからコンテキストへ。この3つの転換が起きていると指摘する。そして「これまで活用できていたデータはごく一部に過ぎません。ダークデータとなっている90%のデータも含め、すべてをエージェントが推論できるようにする必要があります」と述べ、既存のデータプラットフォームではこの要求に応えられないとした。
「Google Agentic Data Cloud」は、「Borderless Lakehouse」「信頼できるコンテキスト」「意図した通りの結果」の3領域で構成される。Borderless Lakehouseでは新たに「Spanner Omni」が投入され、フルマネージドの「Cloud Spanner」が持つ無制限のスケールと強い整合性をGoogle Cloudの外でも利用できるようになった。マルチクラウド対応としては、AWSやMicrosoft Azureからのデータアクセス時のエグレス料金をゼロにする「Cross-Cloud Interconnect」や、重複アクセスのネットワーク転送を回避する「インテリジェントなクロスクラウド キャッシュ機能」がプレビュー中だ。SnowflakeのHorizon Catalog、DatabricksのUnity Catalog、DataplexのData Catalogとのカタログ連携も加わり、データを移動させることなくオープンフォーマットへの即時アクセスが可能になった。
信頼できるコンテキストを担う「Knowledge Catalog」は、オペレーショナルデータ、分析データ、SaaSアプリ(Salesforce・Workday・SAP)のデータを自動集約・整理し、エージェントがリアルタイムに推論するための汎用コンテキストエンジンとして機能する。企業データの90%を占めるドキュメント・画像・ログといった非構造化データはダークデータとして埋もれているが、Google Cloud Storageを「スマートストレージ」に変えることで対処し、GeminiによるプライベートなエンリッチメントでKnowledge Catalogへ自動で取り込まれる。
Agentic Data Cloudが実際の業務でどう機能するかを示したのが、Google Cloud カスタマー エンジニアリング データ アナリティクス スペシャリスト テックリードの山田雄氏のデモだ。
架空の食品企業のマーケターが北米向けキャンペーンのROIを予測するシナリオで、複数のPDFに分散した原材料データとAWSのS3購買データをゼロコピーでBigQueryに統合し、BigQueryグラフとKnowledge Catalogを組み合わせたデータエージェントをGemini Enterpriseに展開した。通常5週間かかる分析を5分に短縮し、ROIの予測から広告用スライドの自動生成まで完了させた。
都民アプリと営業AIが語る、エージェント活用の現在地
東京都と62市区町村のデジタル変革を推進するGovTech東京のCTO 井原正博氏は、「東京都公式アプリ」の次世代版開発について説明した。現在600万ダウンロードを超えるアプリの後継として、1000万人を超える都民全員が行政手続き・防災・子育てへの共通入口となるアプリを目指す。「いかなる状況でも安定して動作すること、データがリアルタイムに整合していること、そして自分たちのチームが主体的にコントロールできる内製開発に適したスタックであること」という3要件を出発点に、データベースにCloud Spannerを選択した。
「1000万人規模のアクセスを扱う上で、書き込みのスケールと強い整合性を同時に確保することは容易ではない」という課題に対し、災害時の一斉アクセス集中時にもデータの状態が矛盾しないまま動き続けることを最低条件として技術選定を行ったと語った。
NTTドコモ 執行役員 グループデータ戦略統括部 部長の鈴木敬氏は「フルAIのマーケティング」への取り組みを紹介した。1億人を超えるdポイントユーザー、2000種類以上のプロファイルパラメーター、月160億通を超えるアプローチを抱えながら、「サービス横断で一人ひとりに最適な体験を提供するために膨大なバリエーションの施策を検討する必要があり、人間業ではなかなか難しい」と現状を語った。
そこで着目したのが、社内の130以上のデータ活用Webアプリだ。5000人以上の社員が日々使うWebアプリのソースコードと利用ログには、施策の目的・評価ロジック・制約条件といった現場知識が詰まっており、それをAIが解釈可能な構造化ナレッジに自動変換することで「現場をよく理解したエージェント」を構築する方針だ。BigQueryで定量・定性データを統合し、Gemini Enterpriseを複数エージェントのガバナンス基盤として活用する計画のもと、「2027年にマーケティングのフルAIオペレーションを実現する」という目標を掲げた。
