AIが防御の全サイクルを自律的に担う時代へ
ここで再び渕野氏が登壇。「AIが自律的に脆弱性を見つけ出す能力が顕在化し、業界では大きな不安が広がっています。新たな脆弱性が発見されてから悪用されるまでの時間は1.6日にまで短縮されます」と述べたうえで、「決してパニックには陥っていません。AIの進化を予測し、既に防御の備えをしてきたからです」と続けた。Googleは2023年から「Project Naptime」としてAIによる脆弱性発見研究を始め、DeepMindとの共同プロジェクト「Big Sleep」では世界初となるAI単独によるオープンソースのゼロデイ脆弱性発見を達成している。この研究成果を防御側に展開したのが自動コード修復エージェント「CodeMender」で、先日パブリックプレビューに移行した。
統合フレームワークとしてGoogleが提供するのが「AI Threat Defense」で、Googleが社内で実践している4つのステップで構成される。まず外部から攻撃可能なアタックサーフェスを可視化し、不要な公開資産や過剰な権限を整理して守るべき領域を絞り込む。次にクラウドセキュリティ製品「Wiz」を使ったAIによるディープスキャンで、発見された多くの脆弱性のうち実際に外部から到達・攻撃が可能かをリスクベースで優先順位付けする。第3ステップでAIエージェントが最も危険な脆弱性を自律的に修正しテストまで完了させ、最後にAIによる継続的なレッドチーミングと脅威インテリジェンスを活用した監視でフィードバックループを回し続ける。「単にAI搭載のセキュリティツールを1つ導入すれば解決するような問題ではありません。防御のライフサイクル全体をAIで連携させる必要があります」と渕野氏は強調した。
Wiz×CodeMenderが示した自律防御の現実
Wiz Cloud Japan 第1ソリューションエンジニアリング部 シニアマネージャの大井雄介氏と、Google Cloud カスタマー エンジニアリング技術部門 セキュリティ スペシャリストの髙橋悟史氏は、連携デモを行った。大井氏のデモでは、Wizによるマルチクラウド・エージェントレスなスキャンによってAIエージェント・モデル・MCPサーバーのインベントリを可視化し、ガードレール設定ミスやランタイム上でのプロンプトインジェクション攻撃を検知する様子が示された。
「Red Agent」は機密データへのアクセス権を持ちインターネットに公開されたチャットボットに対して認証バイパス攻撃を試み、クレジットカード番号などの機密データ取得に成功することで「最優先で対応すべきリスク」を特定。「Green Agent」は暫定対応としてファイアウォール設定変更を提案し、実際の環境にそのまま適用できる手順とスクリプトを出力した。
髙橋氏のCodeMenderデモでは、3ファイルにまたがるC言語コードのバッファオーバーフロー脆弱性を題材に3つのCLIコマンドが実行された。まず検出コマンドでモデルがコードを読み解いて脆弱性を推測し、「verify」コマンドでサンドボックス上に実際の攻撃コードを走らせ確度を100%に高め、「fix」コマンドで副作用が起きないことを確認しながらdiff形式のパッチを自動生成した。パターンマッチングではなく熟練したソフトウェアセキュリティエンジニアと同じ考え方で未知の脆弱性を発見し、サンドボックスでの実行によって誤検知を排除するアプローチを示した。
このデモを踏まえて、渕野氏は「Wizによる正確なリスクの特定、そしてCodeMenderによる自律的なコード修正。準備から監視までの4つのステップを統合し、防御のライフサイクル全体を人間のスピードからマシンスピードへと引き上げる必要があります」と述べ、基調講演を締めくくった。
