【Tips4】タスクの優先度調整:チケット前後関係の整理からAI活用へ
設計書を整備し、必要なタスクをチケット化した後も問題は存在した。チケットを上から順に対応していくだけではうまくいかないケースが度々生じたのだ。「並行して進めるのが難しいチケット」「事前確認に時間がかかるチケット」が適切なタイミングで着手されないと、作業のブロッキングが発生する。
そこで、由利氏はチケット同士の前後関係を確認しながら対応順を調整した。具体的には、他チケットのブロッキングになるものを優先度上位に移動したり、コード上で同じ箇所を触るチケットを同じスプリントに入れないようにしたりといった工夫だ。
ただ、リード、つまり由利氏のがんばりで「一定回ってはいた」ものの、プロジェクトの不確実性を減らす他の取り組みと並行してこれを続けることには限界があった。「これってリードがやらなければいけないことなのか」と由利氏は自問し、まず設計書の作成を担ったメンバーにチケットの優先度調整も任せることにした。
だが疑問はさらに続く。「これって人間がやらなければいけないことなのか」。チケットの優先度を決める際に考慮していた要素を分解すると、「不確実性があるか」「他タスクのブロッキングになるか」「タスク間でコードを触る箇所が被らないか」という判断基準が浮かび上がった。
「ここまで分解すると、AIにやらせることもできるんじゃないかと考えました」と由利氏は話す。「Claude Code」を使い、AIがチケットを読み込んで優先順位を提案するスキルを作成し、テスト中だ。「まだテスト段階ではありますが、ある程度任せられそうなことがわかりました」と続ける。このように、プロジェクトを推進する中でAIに代替させられる作業はAIに任せ、リードが不確実性の解消に集中できる体制づくりが進んでいる。
「落ちているボールを拾う」こと、それがコードを書く以外の仕事
4つのTipsを紹介した後、由利氏はリードの仕事の本質を語った。「やらなければならないことを見つけるのがリードの仕事だと思っています。いわば、落ちているボールを拾っていく仕事です」。
チケットとして立てられた明確なタスクが漏れることは少ない。しかし、その前段にある事前調整やプロセスの整備は担当者が決まりにくく、見落とされがちな仕事となっている。そこで、由利氏はやるべきことを見つけるためのポイントを2つ挙げた。
1つ目は、プロジェクトメンバー間の会話だ。「この作業っていつやるんですっけ?」「これって確認してるんですっけ?」という会話が飛び交ったら、抜け漏れが発生している合図だという。すぐにタスク化するか、関係者と調整する行動に移す必要がある。2つ目は、開発の中で感じる困りごとや不安だ。「このまま進めて大丈夫なんだっけ?」という声が上がったら、計画を見直すチャンスだと由利氏は述べる。
ボールを拾ったら、次は適切な人に投げることが大切だ。今回のプロジェクトでは、検証計画の策定にQAエンジニアを巻き込み、画面変更に伴うユーザーコミュニケーションにはプロダクトマネージャーとUXライターを呼んだ。「自分一人で解決する必要はありません。拾った上で適切な人にボールを投げるのも、リードの大事な役割だと思っています」と由利氏は語る。加えて、チームメンバーへの役割移譲やAI活用で「やるべきことを減らし、ボールを拾うことに集中する」ことが重要だという。
AIが設計やコーディングを担う時代に問われる、「コードを書く以外の力」
本セッションの時点で、課金基盤移行プロジェクトはテストが完了し、本番環境での移行が始まったところだという。第1グループの移行がスタートし、計画に沿って進めながらトラブルに備えるフェーズに入っている。
「最近はAIによって設計やコーディングなどさまざまな作業がサポートされるようになってきました」と、由利氏はセッションのまとめとして語る。そうした時代に問われるのは、「タスク化されていないやるべきことを見つける力」だという。
そして、由利氏は最後にこう締めくくった。「私たちの目的は、ユーザーに価値を提供することです。コードを書くことも、コードを書く以外のことも、どちらも等しく大切なことです。これからもプロジェクトを進める上で、できることは何でもやるというマインドが必要なのではないかと思っています」。
