「AI任せ」ではデータの乱立は解決しない
冒頭に登壇したSnowflake 社長執行役員の浮田竜路氏は、経営層から財務・人事・営業・マーケティングまで、さまざまな立場の人がAIを介して簡単にデータにアクセスできるようになった今、「AIから最適な解を得るため、またより正確なアウトプットを出すために、データ整備に注力する企業が非常に増えていると感じています」と述べた。そのうえで、自社データをフル活用して他社と差別化すること、セキュリティ・ガバナンスを効かせながらAI活用を広げること、コスト管理をどう行うかが顧客にとって大きな課題になっていると指摘した。
続けて登壇したクライナマン氏は、この課題意識をさらに踏み込んだ形で提示した。「AIを導入しさえすれば、AIがデータの問題を解決し、データの状況は自然と整っていく」──クライナマン氏はこの考え方を「神話」と呼んだ。多くの組織のデータ環境は、複数のシステムやサイロ、ストリーミングシステム、品質の低いシステム、データのコピーが乱立した状態にある。そうした乱雑なデータの世界は、AIで実現できることを制限し、むしろ足かせになってしまうというのがSnowflakeの立場だ。
そのうえでクライナマン氏が語ったのが、すべての組織が目指すべき「エージェンティック・エンタープライズ」という姿だ。あらゆる中核的な事業運営やビジネスプロセスにAIを活用し、多くのルーティン業務がエージェントによって処理される組織形態を指す。そのような組織では、人材がエージェントへの指針を示し、方向性を定めることに時間を使えるようになる、とクライナマン氏は語った。
このビジョンを実現するために必要な要素として、クライナマン氏は4つを挙げた。第1にAIモデル、第2にAIが組織を理解するためのデータとコンテキスト、第3にメールやメッセージング・ドキュメントシステムなど企業インフラとの統合能力、そして第4にこれら3つを組み合わせてAIの動作を制御する「コントロールプレーン」だ。
クライナマン氏が重視したのは、成果そのものよりも実現の前提条件だ。最も機密性の高いプロセスでAIを活用するには、データが引き続き保護されているという安心感が欠かせないとし、ガバナンスとセキュリティが先行することの重要性に触れた。
CoCoとCoWorkの連携例をデモで紹介
続いて、Snowflake Lead Developer Advocateの田中翔氏が約15分のライブデモを行った。架空のスポーツ興行会社「SnowLeague」を舞台に、データエンジニアのダン(「Snowflake CoCo」のデモ担当)と営業担当のヴィクトリア(「Snowflake CoWork」デモ担当)という2人の主人公を演じ分けながら、エージェントが業務に組み込まれた様子を見せた。通常のチケットにアップグレード機能を加えた「VIPアップグレード」というサービスの収益が予測を15%上回ったことを受け、CEOからはさらに目標を引き上げる提案を求められ、CFOからはコスト面・利益率の改善を優先してほしいという相反する要求を同時に受けた状態からデモは始まる。
ダンが使うSnowflake CoCoはデータエンジニア向けのコーディングエージェントだ。SalesforceやSAP・WorkdayとのゼロコピーコネクターでSnowflakeにデータを集約した後、「誰にどのデータを見せてよいか」というスキルをCoCoに定義すると、個人情報のマスキングポリシーやアクセスタグ、全社共通のセマンティックビュー(指標定義)の設定を自律的に実行していく。
一方、営業担当のヴィクトリアが使うSnowflake CoWorkは、自然言語で「どの都市が最も収益性が高いか」を尋ねると、該当する都市をグラフ付きで提示する。分析結果をワンボタンでSlackに共有する場面も披露され、モバイルアプリ版でも同じダッシュボードを閲覧できることが示された。
