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イベントレポート

SnowflakeのAIエージェントが体現する「エージェンティック・エンタープライズ」

「Snowflake World Tour 2026」DAY1 KEYNOTE レポート

AIを自社専用にする仕組みとガードレール

 田中氏によるデモが終わり、再び登壇したクライナマン氏は、エージェンティック・エンタープライズを構成する4要素について、デモで見た機能を交えながら改めて詳しく解説した。中でも力を入れたのが、データとコンテキストの核心として新たに導入した「Horizon Context」だ。さまざまなシステムからメタデータへのアクセスを提供し、AIが汎用的なチャットボットではなく「まさにその会社のために作られたかのように」機能することを目的とする。セマンティックビューやオントロジーをAIが参照できる形に整える仕組みで、CoCoやCoWorkのほかClaude Codeなどの外部ツールからも呼び出せる。

 ガバナンス基盤となる「Snowflake Horizon Catalog」はApache PolarisのIceberg REST catalog APIを実装しており、SparkやTrinoなど他のコンピュートエンジンとの相互運用にも対応する。また、この日のWorld Tourで発表された「Cortex AI Gateway」は、すべてのAIモデル呼び出しを単一の集約点に通すことでリクエスト内容に応じた最適モデルへの自動ルーティングを実現する。100を超える標準MCPコネクターが付属し、SalesforceやSharePoint・Slackなどと即座に統合できる。

Snowflake Horizon Catalog
Snowflake Horizon Catalog

 セキュリティ面では「エージェント・アイデンティティ」の導入により、エージェントに対して「Snowflakeのセキュリティ境界の外にデータを移動できない」というポリシーを設定できるようになったほか、機微な変更には「2つのエンティティ、あるいは2人の人間がその変更を承認する必要がある」というマルチパーソン認可の設定も可能になった。コスト管理の観点では、ユーザーごと・ワークロードごとのリソース使用量の可視化と予算設定機能を強化し、本当に減らすべきは「価値を生んでいないAIへの支出」だとした。

日産・富士フイルムに学ぶ設計の勘所

Snowflake合同会社 ソリューションエンジニアリング統括本部長 井口和弘氏
Snowflake合同会社 ソリューションエンジニアリング統括本部長 井口和弘氏

 ここでクライナマン氏はいったん話を区切り、日本のユーザーを招いたセッションに移った。日産自動車 執行職 CDIOの平川静氏は、Snowflake ソリューションエンジニアリング統括本部長の井口和弘氏を聞き手に、2019年以前からのSnowflake活用を率直に振り返った。グローバルIS部門約1,150名が約2,650のシステムと12万人のユーザーを支える環境でも、事業部門がデータを抱え込んでサイロ化し、部署ごとに解釈がバラバラな「訳語」が社内に積み重なっていたことが最大の課題だったという。「どんなに優れたAIを投入しても、何が正しく何が重要な情報なのか分からず、社内に訳語が山ほどある状態ではガベージイン・ガベージアウトになってしまいます」と語り、まず「箱(基盤)を作る段階」からデータを資産として扱う段階への移行に要した苦労を明かした。

日産自動車株式会社 執行職 チーフデジタルインフォメーションオフィサー(CDIO)平川静氏
日産自動車株式会社 執行職 チーフデジタルインフォメーションオフィサー(CDIO)平川静氏

 現在は「Nissan.DATA」プラットフォームとして、構造化データ・非構造化データ・コネクテッドカーのIoTデータを含む約5,000のデータセット・30ペタバイト超をSnowflakeに集約し、500を超えるユースケースが稼働する。AI活用で生じた最も大きな変化として平川氏が挙げたのは技術的な成果よりも組織的な変化だ。データをわかっていなかった人たちが、民主化によって「あんなことをしたい、こんなことをしたい」と言えるようになり、その結果「このデータの取り方や保存の仕方がおかしいのではないか」と事業部門自らが気づき始めた、という副次効果が、データ品質そのものの向上につながっているという。

富士フイルム株式会社 フェロー 杉本征剛氏
富士フイルム株式会社 フェロー 杉本征剛氏

 続いて登壇したのが、データ基盤「ONE Data」でSnowflakeを活用する富士フイルム フェローの杉本征剛氏だ。ここでは機能紹介ではなく、社内展開の考え方やガバナンスに焦点が当てられた。杉本氏は「諸刃の剣の攻略」というフレームで、グローバルAI展開の設計思想を語った。「私が申し上げているトラストとは、自分自身に対する信頼、環境に対する信頼、そして他社から見た信頼、この3つが揃って初めて、生成AIを安全に利用できる環境が整います」と述べた。そのうえで、このトラストによる統制は「決してAI活用にブレーキをかけるためのものであってはなりません」とし、「全従業員がAI活用のアクセルを最大限に踏み込むための統制のガードレール」であるべきだと位置づけた。グローバル展開においては、ゼロトラストネットワークなどインフラの生命線となる下位レイヤーを100%標準化した上で、その上にある可変部分はセルフサービス型で各事業・地域会社が自律的に試せる環境を整えるというレイヤー構造を採用している。

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「AIについて本当に恐れるべきは、使わないこと」

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この記事の著者

森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

CodeZine編集部所属。

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