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進化し続けるAIの現状と求められるエンジニアとは?

教養とは、トークンを減らす技術である。清水亮氏が語るAI時代のエンジニアの資質

エンジニアとして商売していた人全員が直面する「想像力」

 バイブコーディングの課題は品質や責任分界の話に落ち着きそうに思えるが、清水氏が挙げたのはまったく別の方向だった。

 「課題としては、『やらせることがなくなってきているな』ということです」

 「Photoshopを作って」と言えば、本当にPhotoshopのようなものが出てくる。「Excelを作って」と言えば30分ほどで作ってしまう。しかもClaude CodeやGeminiに限らず、オープンソースのQwenのようなモデルでも実現できる。では、人間が出すアイデアはどうか。清水氏が「そもそも人類が想像し得るアプリケーションはもう全部あるのではないか」と指摘する。これまで釣り合っていた、人間がアイデアを出すスピードと、それを実装するスピードが、バイブコーディングの登場により非対称になった。

 清水氏は1976年生まれで今年50歳になる。1976年は、普通の人が買えるコンピューターが登場した年だ。そこから半世紀のあいだに表計算もPhotoshopも動画編集も出揃い、Photoshop、Word、Excelといった三種の神器的な世界観は1990年代の初めには完成していた。以降はバリエーションが増えただけである。

 だとすれば、衰えているのは実装力ではなく構想力のほうではないか。新しいアプリケーションを作ってそれを仕事にできる人はほとんどおらず、職業としてのプログラミングは「何かと何かを繋ぐ」か、「フレームワークを使って、エンジニアはその差分だけを作る」ものになっている。

 「『今しか作れないような全く新しいパラダイムのアプリケーションを作る』という構想力を持っていないことを、みんなが自覚し始めちゃったような気がします」

 しかもこの欠如は、発注する側にも共通している。「イマジネーションのところは、全員が持っていないのです。クライアントも持っていません」。だから「Amazonみたいなものを作って」とは言えても、Amazonのない時代にそれを説明することはできない。

 清水氏はこの難しさを、「エンジニアだと名乗って商売していた人全員が直面する大きな壁だと思います」と指摘する。

清水亮氏

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AIと人間の主客転倒の先で、「教養」が効いてくる

 では、これから何が変わるのか。清水氏はCPUやGPUの設計も、OSのレイヤーも、いずれAIが担うと見る。そしてその先にあるのが、AIとプログラムの主客転倒だ。

 現在はアルゴリズムが先にあり、その先にAIがある。ChatGPTでもまずWebサイトがあって、ユーザーの入力に対してAIが動く。プログラムが主で、LLMは従である。ところが今、ユーザーインターフェースがコマンドラインのように原始的な形へ戻っていても、プログラムを書く能力が高いという理由で「Claude Codeを使おう」という選択が起きている。

 「今までプログラムがきちんとしているところが良かったのに、ただ単にAIが良ければいいというものになってきています」

 これが進めば、アプリケーションの存在意義そのものが問われる。Photoshopはチラシのデザインや絵・漫画を描くためのものだが、それらは今、画像生成AIに頼めば出てくる。iPadにポンチ絵を描き、ChatGPTに清書させ、それをClaude Codeに渡す。このワークフローに移ると、「Photoshopいらないではないか」「PowerPointもいらないではないか」となる。清水氏自身、「気づいたら最近Photoshopを全然使っていません」と話す。

 一方で、ソフトウェアの側に残る進化もある。清水氏が挙げたのはテストだ。AIは対象を完全に理解していなくてもバグを発見できてしまうため、「ソフトウェアテストなどももっとAI中心に変わっていく可能性は非常に高い」。事故を起こせずシミュレーションに頼るほかない自動運転のような領域では、その価値はさらに大きい。

 「『フィジカルAI』のような、実際に動いているものや現場があるものとのインターフェースが、ソフトウェアの中心的な興味に変化していくことはおそらく不可避だなと思っています」

 こうした変化の先で清水氏が挙げたのは、技術の外側にあるものだった。「エンジニアに求められる資質も変わってくると思います。むしろ誰よりも人間のことを考えなければいけません」

 もうひとつ、AIとの対話では教養が効く。理由は情緒的なものではない。「AIと会話していくためには、教養があった方が絶対に便利です。なぜかと言うと、教養というのはトークンを減らす技術だからです」前提を共有できていれば、説明に費やす言葉は少なくて済む。清水氏はビジネスの基本に立ち返って、こう締めくくった。

 「ビジネスは結局、人の役に立つということが大前提です。AI関係なく、ビジネスの基本はお客様に儲かってもらうことです。そのためには、単純に面白いことをやらなければいけません。面白いこととは何かと言うと、結局『人』に興味を持たなければ駄目なのです。経験を積みたければ成功するしかありません。成功するためには面白いものを作るしかないのです」

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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