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【デブサミ2016】セッションレポート(AD)

【デブサミ2016】18-A-7レポート
大企業からエンジニア主導で起業してみた ~ 「スマホ広告をポジティブに変えたい」リッチラボの挑戦

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 スマートフォン向けのブランディング広告を開発しているリッチラボは、ヤフーの社内ベンチャー制度によってできた。エンジニアが主導となり、多くの人が経験している“ユーザーの行動を妨げるネット広告”に工夫を加え、ユーザー、広告主の双方に喜ばれる世界を創っていくのが目標だ。大企業にエンジニア、デザイナーとして10年間所属し、子会社の社長という立場に変わると、自分の仕事の価値や、大企業ならではの課題などが改めて見えてくる。本セッションでは、リッチラボ 代表取締役社長 鈴木辰顕氏が、起業にいたった経緯や現在の取り組み、子会社経営に寄せる思いなどを語った。

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リッチラボ 代表取締役社長 鈴木辰顕氏
リッチラボ 代表取締役社長 鈴木辰顕氏

スマホ広告を、ユーザーと広告主の双方に喜ばれるものにしたい

 インターネット広告への出稿額は、媒体別ではテレビに次ぐ2位の規模だ。デフレの時代に唯一、成長を続けてきた分野ともいえる。しかし、ヤフーの社内ベンチャー制度で起業し、スマートフォン向けのブランディング広告を開発しているリッチラボの鈴木氏は「広告を邪魔だと思っている人が多いのでは」と語る。

 確かにキーワードを検索して検索結果に飛ぶと、一番目立つ場所に広告が表示されることが多い。スマートフォンの場合、画面の半分以上が広告ということもある。広告をスキップする操作をしないと、目的のページが表示されないこともある。「その背景には、ネット広告ならではの“特性”がある」と鈴木氏は言う。

 一昔前のインターネット広告の料金設定は、テレビなどと同じで「1回表示されたらいくら」というものだった。ただWebはテレビや紙媒体とは違い、広告を見たユーザーの行動を細かく把握することができる。たとえばバナー広告をクリックした回数や、そこからアプリが何回インストールされたかが分かる。そこでクリックやインストールの回数に応じて広告料を支払う方式が主流になってきた。特にスマートフォンの世界では、そうした広告が増えている。

 広告を提供している側は、ユーザーに察知されないと意味が無い。そのため、ユーザーの行動を妨げる、クリックのみを目的とした広告も増えているのである。この状況を受けて鈴木氏は「私たちは、エンジニアの力、デザイナーの力を使い、少しでもネガティブなものをポジティブに変えたい。広告主、ユーザー、どちらからもいい評価を得られる市場を作っていきたいと考えている」と自らの目標を語る。

 とはいえ、スマートフォンの広告には、様々な課題点があるのは確かだ。たとえばネットワークスピードの考慮がある。またJavaScriptの解釈もデバイスによって異なり、同じ広告体験を提供するのが難しい。さらに、画面が小さいため、認知度が高い目立つ広告にするのも困難だ。

 ここで鈴木氏は、その課題を解決しているリッチラボの事例を紹介した。

 2014年度グッドデザイン賞を受賞している「プライムウィンドウ」という広告だ。同賞をWeb広告が受賞することはまだ珍しい。プライムウィンドウは、通常のバナーと同じような領域で、多くの表現ができるよう工夫した広告だ。ブラウザのページ背景に広告画像を掲載し、コンテンツのバナー程度のすき間スペースから背面の広告を覗かせる。ユーザーが画面をスクロールする際、背景の広告は固定されているので、その内容を経過にしたがって見ることができる。ユーザーは「下に何かある」と気になって広告を見てしまう、という仕掛けだ。ユーザーの行動を妨げずに商品をアピールするような広告になっている。

リッチラボの広告例
リッチラボの広告例

 鈴木氏が、こうした事業をやりたいと思った理由は「楽しいところだけ作る」というものだ。新しい技術で何かを作り始めると楽しい。しかし製品化を考えると、様々な課題を想像してテンションが下がる。その後、「何とかできそうだ」「これは大変だ」などによってテンションが上下する。ゴール直前、達成感からぐっと上がり、リリース直前になるとやることの多さに大きく下がる。最終的に「リリースできて良かった」と思って上がる。

 鈴木氏は、最初の“楽しい”だけをできるような仕事をたくさん作っていきたいと考えている。脳が楽しい状態で、アイデアや提案を広告主や導入してくれるネットワークに持っていく。楽しければ、あとは結果が出るところはがんばることができる。

 鈴木氏は、大好きだというスポーツを引き合いにし、スポーツ選手とITエンジニアの働き方を比較してみせた。「スポーツ選手を見てうらやましいと思うのが、肉体的な疲労と精神的な疲労のピークから同時に解放されることだ」と鈴木氏は言う。サッカーであれば、終了間際にゴールを決めれば、最大の喜びと様々なプレッシャーからの解放が同時に得られる。

 一方、Webサービスを開発しているエンジニアは、開発終了のゴールが新たなスタートになる。その結果、成功しなかったら価値がないと見なされる。「ITエンジニアでも、肉体的・精神的な疲れのピークと解放が同時の仕事を作りたい」と鈴木氏は語る。

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社内ベンチャー制度でリッチラボを設立し、見えてきたものとは

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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