社内ベンチャー制度でリッチラボを設立し、見えてきたものとは
鈴木氏は2005年に新卒でヤフーに入社。当時、IT企業への就職はメジャーな選択肢ではなかった。
リッチラボは、ヤフーの社内ベンチャー制度からエンジニアとデザイナーが中心となって発足した。米国ヤフーが2006年から開催した「Hack Day」を、日本でも2007年から開催するようになった。24時間で開発を行い、90秒で発表するというイベントだが、エンジニアやデザイナーにはすごく人気がある。2013年より、ヤフー社員以外も参加可能な「Open Hack Day」も開催されている。
Hack Dayイベントは、エンジニア・デザイナーの得意分野を可視化することに大きく貢献している。得意分野が分かることで横の繋がりの役に立つし、社員同士のコミュニケーションが活発化している。ただし、事業化という点では、大きな成果は出ていなかった。
2012年に社長が宮坂学氏に替わり、「才能と情熱を解き放つ」ために挑戦する機会の提供を目的に、2013年から「スター育成プログラム」という社内ベンチャー制度がスタートした。選ばれると、通常の業務から離れて、スタートアップ企業への投資・育成を手がける「MOVIDA JAPAN」の支援のもと、半年後に事業化か子会社化を狙う。そこからリッチラボが生まれることができた。プログラム参加メンバーは、鈴木氏とエンジニア(現CTO 小林大介氏)+デザイナー(高田健介氏)の3名だ。現在(2016年4月)では、当時スター育成プログラムに別チームで参加していたメンバーも合流し、17名で運営している。
鈴木氏たちは、とても多くの人に応援してもらえたという。ヤフーに限らず大企業には「このままだといけない」という雰囲気があるものだ。鈴木氏自身も入社した2005年当時から、ずっと言われ続けてきた。だからスター育成プログラムのような、会社を変える可能性を秘めたプロジェクトができたのは、非常に良かったと考えている。
鈴木氏はインターネットが好きで、学生時代から色々な勉強会、懇親会などに参加していたのだが、それらの経験は、正直なところ事業化に関わるまでは役に立ったと思ったことがなかったという。「しかし事業を立ち上げることになって初めて、それまでに会った方々に支援してもらい、あの時の経験が役に立った」と鈴木氏は振り返る。
鈴木氏は現在リッチラボの社長をしている。大企業に在籍していて感じた課題や、それらを子会社の経営によってどのように解決していきたいかについて、いくつか展望が述べられた。
鈴木氏は、10年間エンジニアをしていて、「会社の掲げる営業目標に大きく貢献した」という実感が少ないときがあったという。頑張ってプロダクトを作り、それが多少売れたとしても、それは本当に自分のおかげなのかと疑問を持ってしまう。それが子会社を経営することにより、自分の作った広告が社会で喜んでもらえ、明確な成果を出すことができた。こうした経験を「大企業にいて、貢献できている実感のない人にも伝えていきたい」と考えているとのことだ。
さらに大企業ではお金を稼ぐ部門と使う部門が分かれてしまう。マーケティングで外に出す部分とモノを作る部分、どちらも同じぐらい大切で、お金を有効に使わないと会社は成長していかない。しかし大きなお金を使うというのは、本当に勇気が要る。新しいことへの投資や、人を雇うこともそうだ。それを一般社員が大企業で経験するのは難しい。そこで子会社で、どんどん経験させたい。
起業時も現在も、鈴木氏が一番聞かれる質問は「エンジニアが子会社作って、その後、何するの?」というものだ。その明確な答えはまだ見つかっていないが、自分たちが失敗すると、続く人は色々な経験ができない。リッチラボをしっかりと軌道に乗せて、エンジニア・デザイナー主導でやることに価値があるのだということを証明したいと思っている。
鈴木氏は最後に「スマホを使っていて拍手したくなるような広告に出会ったら『リッチラボが作ったのかな?』と思い出してほしい」と述べ、セッションを終了した。
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