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【デブサミ2021】セッションレポート(AD)

アトラシアンが提唱する、チームビルディングのための処方箋「Team Playbook」とは【デブサミ2021】

【18-D-3】チームドクターが行く!チームの健康診断と処方箋

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 優れたプロダクトを作るには優れたチームが必要であるが、チーム作りは難しい。フラットな組織、透明性、心理的安全、信頼関係が重要だとはわかっていても、どう実践していいかわからない。プロジェクト管理ツール「Jira」や、ドキュメントコラボレーションツール「Confluence」、タスク管理ツール「Trello」などを提供しながら、働き方についての研究もしているアトラシアンは、これまでの経験から編み出したチームの健康診断と対処法のためのリソースとして「Team PlayBook」を構築した。セッションでは、その実践方法が紹介された。

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アトラシアン株式会社 ソリューション エンジニア 皆川宜宏氏
アトラシアン株式会社 ソリューション エンジニア 皆川宜宏氏

良い人材とツールを用意しただけでは、強いチームはつくれない

 アトラシアンは、5大陸に5000名ほどの従業員を擁するグローバルなソフトウェア企業。同社では2020年のコロナ禍の影響もあり、現在もリモートワークが主流となっている。登壇したアトラシアン株式会社のソリューション エンジニア 皆川宜宏氏は「アトラシアンでは現在出社禁止が基本になっています。リモートワーク環境でのチームビルディングを実践し、その研究結果をシェアさせていただきたい」と切り出した。

 「偉大な功績の裏側には、必ずチームが存在する」――たとえ頭脳明晰でカリスマ性のあるリーダーが率いた事業があったとしても、それを偉大なものにするにはチームワークの存在が必要と考えるアトラシアン。昨今のプロダクト開発で例えるなら、優秀なエンジニアを雇用し、便利なツールを用意すればよい成果が得られるわけでなく、チームによる適切な実践が必要不可欠である。皆川氏は、チームづくりにおいて注意しなければならない5つの『異常』に注意が必要であると注意を促した。その5つとは以下のとおり。

儀礼主義(Ritualism)

 プロセスやプラクティスだけを重視し、価値や文化を度外視してしまう。

幻覚(Hallucination)

 価値や文化のみで、ツールやプロセスを無視。トップダウンのスローガンだけで終わってしまう。

無駄(Wastage)

 ツールを導入するだけでプロセスや価値に共感しない。やり方が変わらず結局ダメになってしまう。

強迫観念(Obsession)

 価値とプロセスに共感しないままの行動。

疲弊(Exhaustion)

 価値や文化も共感したが、ルールが多すぎるなど実践方法が人に優しくないために疲れてしまう。

5つの「異常」に注意し、さまざまな要素のバランスをとりながらチームビルディングしていかなければならない
5つの「異常」に注意し、さまざまな要素のバランスをとりながらチームビルディングしていかなければならない

サムズアップ・ダウンでチームの健康診断を行う

 チームには、共通の目標を目指して協力するという定義がなされる。ただ最近のチームメンバーは固定ではなく、事業において何かのプロジェクトを達成したらメンバーが去り、次のプロジェクトでまた別のメンバーが集められる……といったように、休むことのない動的な活動となる。そこで、アトラシアンでは、社内のいろいろなチーム、いろいろなリーダーのチームビルディングの秘訣のようなものをドキュメント化した「Team PlayBook」を構築した。この構成要素は、「ヘルスモニター」と呼ばれる、チームの状態をチェックする健康診断と、「プレイ」と呼ばれる、課題への処方箋だ。

 ヘルスモニターには、長期的なビジョンに取り組んでハイレベルな意思決定を行うリーダーシップチーム用、一つのプロジェクトを達成していくプロジェクトチーム用、サービスのリクエストをルーチン的に日々一定数裁いていくサービスチーム用の3種類がある。今回のセッションでは、プロジェクトチーム向けのヘルスモニターについての説明がなされた。

 皆川氏は、ヘルスモニターについて「チームの状態を誰がどうやって判断するのか、というのが大きな問いになります。パフォーマンスを外から測る方法もありますが、チームの中のメンバーがチームをどう思っているかということが非常に重要なポイントとなります。チームのパフォーマンスについて、何が問題でどう改善するかというポイントをメンバーが見つけていくワークショップと思ってください。ポイントは、1カ月に1回など定期的に絶え間なく行っていくことです」と述べた。

 プロジェクトチームをチェックする要素は8つ。チーム内外の折衝を行いプロジェクトの結果に責任を持つ「フルタイムオーナー」、役割と責任が明確になった「バランスのとれたチーム」、チームの状態などの「共通認識」、事業やユーザーに対する「価値と指標」、デモンストレーションやテストによる「概念実証」、プロジェクトの概要をまとめる「ワンページャー」、リスクや複雑さなどの「管理された依存関係」、そして、プロジェクトの過程で「ベロシティ」を達成できているかどうか。

プロジェクトチームをチェックするための8つの指標
プロジェクトチームをチェックするための8つの指標

 これらの指標について、チームメンバー全員がそれぞれの良し悪しを親指の向きの3段階で評価していく。これを月に数回行い、継続していくことで、指標の変化がわかる。

 皆川氏は「皆の評価を集計して結果について話したり、一人ひとりの評価についてディスカッションしたりしていくことが非常に重要です。議論が上手でない傾向のある人たちには、たとえばリアルな場であれば、ぬいぐるみを投げて受け取った人は必ず意見を述べる、というルールで対話をしていきます。ファシリテーターの人のスキルがとても重要になり、オンラインミーティング中心になってさらにその重要性が増しています」と語った。

 チームメンバーとのディスカッションでファシリテーターが注意すべき点もいくつかある。「私ひとり参加しなくてもいいだろう」といった社会的手抜き、単なる好き嫌いなどによる感情的対立、声の大きい人の意見に左右されてしまう、集団圧力や同調行動などだ。もちろんファシリテーターだけでなく参加メンバー全員にこのような注意点は周知しておきたい。

アトラシアンのツール「Confluence」や「Trello」にはこのヘルスモニターのテンプレートが用意されている。(図は「Trello」)
アトラシアンのツール「Confluence」や「Trello」にはこのヘルスモニターのテンプレートが用意されている。(図は「Trello」)

チームの課題には、曖昧な部分を明確化するフレームワークで対処

 ヘルスモニターによってチームの課題を把握できたら、それを解消するための処方箋「プレイ」を実行する。プレイにもいくつかあるが、今回は、「OKR(オーケーアール)」「プロジェクトポスター」「DACI(デイシー)」の3つが紹介された。

 OKRは、Objectives and Key Results(目標と主要な結果)の略で、Googleなども採用している目標の設定・管理方法のひとつ。達成したい目標(O)を、挑戦を促すように定性的な言葉で表し、それに対する成果として、目標への進捗を定量的に測る指標(KR)を設定する。KPIを指標としている組織は多いが、数値目標を明確にしても、そもそもなぜそれを達成しなければならないのかが重要であることがわかり、OKRが使われるようになった。

 皆川氏は、ヘルスモニターで「価値と指標」「共通認識」「ベロシティ」に問題がある組織にはOKRが有効であるとし、「チームの成功が何なのか、なぜこのプロジェクトを進めているのかについてはOを定めることで明らかになりますし、測定できるKRとベロシティは直結すべきだと思います。Oの例としては、顧客満足度の向上や経常収益の増加、システムパフォーマンスの向上、顧客の増加などが挙げられます。また、チームリーダーがOKRをメンバーに伝えて終わりではなく、一緒に考えていくことがチームビルディングの大きなポイントです」と説明した。

チームをやる気にさせる定性的な目標と、定量的な計測・評価から成るOKR
チームをやる気にさせる定性的な目標と、定量的な計測・評価から成るOKR

 プロジェクトポスターは、ヘルスモニターで「共通認識」「ワンページャー」が弱いと評価されたチームに向けた処方箋だ。チームおよび関係者と共有するプロジェクトの最初の概要を1つのページにまとめるもので、プロジェクトをなぜ行っているか、どのように成功を判断するか。どのような解決策があるかを記していく。関係者はこれを見ることで、そのチームが何をしているかを効率的に周知できる。

 DACIは、意思決定の弱いチームに向けたプレイだ。ヘルスモニターでは「バランスのとれたチーム」や「共通認識」など、責任が明確でないことに起因する課題に対処する。DACIのDは、最終決定者(Driver)、Aは承認者(Approver)、Cは貢献する関係者(Contributor)、Iは通知される人(Informed)を指し、それぞれを決定することが重要となる。人数の少ない組織なら、意思決定は比較的容易であるが、組織の人数が多い場合はあちこちからいろいろな意見が出てきて意思決定に支障を来す場合があるため、意思決定に関わる役割を決め、組織のコンセンサスを得て置くことがポイントというわけだ。

メンバーの役割や責任を明確にし、意思決定力を強化する
メンバーの役割や責任を明確にし、意思決定力を強化する

 なお、OKR、プロジェクトポスター、DACIともに、アトラシアンが提供するツールConfluenceやTrelloにテンプレートが用意されている。皆川氏は最後に、これらのツールの利用を促すとともに次のようにコメントした。

 「チーム作りの材料としてTeam PlayBookを紐解いて、自身の組織にあった形に作り変えていただきたいと思います。またアトラシアンでは、どのように働くかということを非常に大事にして研究しています。情報サイトも用意していますのでぜひご覧ください」

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://codezine.jp/article/detail/13689 2021/03/23 12:00

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