SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

イベントレポート

35年動く巨大システムをどう変える? 三菱UFJ銀行が挑む「VS Code×生成AI」によるメインフレーム開発革命

 2025年、多くの企業がメインフレームの扱いに頭を悩ませる中、三菱UFJ銀行は35年間稼働し続ける勘定系システムに対し、開発スタイルそのものを根底から覆すモダナイゼーションを敢行している。レガシーシステムへの対応として同社が出した答えは、VS CodeやGit、そして生成AIをメインフレーム開発に導入することだった。IBM TechXchange Summit Japan 2025に登壇した三菱UFJインフォメーションテクノロジーの鈴木重統氏は、巨大な既存システムを「ハイブリッドアーキテクチャ」へと進化させ、若手エンジニアが活躍できる環境を構築するプロセスを詳らかにした。

35年の歴史を持つ巨大システムはいかにして生まれ変わるのか

 三菱UFJフィナンシャル・グループのIT戦略を担う三菱UFJインフォメーションテクノロジーにとって、35年にわたり稼働を続ける勘定系システムは、極めて堅牢であると同時に、長年の改修によって複雑化・肥大化が進んだ巨大な構造物となっていた。同社ではこのシステムをモダナイズするにあたり、過去15年間のアプリケーション改修内容を徹底的に分析したという。その結果、頻繁に改修が行われている機能は全体の約30%に過ぎず、残りの70%は安定稼働しており手を加える必要性が低いという事実が浮き彫りになった。

三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 ホストプラットフォーム部 部長 鈴木重統氏
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 ホストプラットフォーム部 部長 鈴木重統氏

 すべてを作り直す「ビッグバン」はコストやリスクの観点から現実的ではない。そこで同社が選択したのが、改修頻度の高いチャネル専用プログラムなどをメインフレームから切り出し、柔軟性の高い分散・コンテナ基盤上で再構築(リビルド・リアーキテクト)する一方で、堅牢性が求められる勘定系データベースやコア機能はメインフレームに残す「ハイブリッドアーキテクチャ」であった。これにより、メインフレームが持つ圧倒的な信頼性と、オープン系システムの拡張性を適材適所で組み合わせる戦略を描いたのである。

勘定系システムのモダナイゼーション Architecture
勘定系システムのモダナイゼーション Architecture

「VS Code」「GitLab」モダンなツールを採用した理由とは

 アーキテクチャの刷新と同時に、鈴木氏らが直面したのが開発現場における深刻な課題であった。プログラムのブラックボックス化やプラットフォームの継続性といった問題に加え、最も切実だったのが「レガシー言語と人材の枯渇」である。COBOLやPL/Iといった言語そのものの習得は難しくないとしても、黒い画面にコマンドを打ち込むTSO(Time Sharing Option)などの古いインターフェースや、メインフレーム特有の閉じたツール群が、現代のエンジニアにとって高い参入障壁となっていたからだ。

 この「ツールの断絶」を解消し、オープン系人材がスムーズにメインフレーム開発に参加できるようにするため、同社は開発ツールとプロセスの共通化に踏み切った。具体的には、エディタをTSOからGUIベースの「VS Code」へ、ソース管理を従来のデータセット方式から「GitLab」へと移行させる。これにより、JavaやPythonを扱うエンジニアと同じ「標準語」で開発ができる環境を整え、さらに生成AIなどの最新技術を適用するための土台を構築したのである。

「メインフレーム」の主要3課題と、解消アプローチ
「メインフレーム」の主要3課題と、解消アプローチ

次のページ
VS CodeとAIエージェント「Cline」が変える開発風景

この記事は参考になりましたか?

イベントレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)

株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/22719 2025/12/18 11:00

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング