前回はプロダクトにはライフサイクルがあることを解説した。プロダクトの進化が線形ではないことがおわかりいただけたと思うが、これは同時にプロダクトマネージャーの関わり方もプロダクトの進化とともに形を変えることを意味する。PMに求められることが多様なのも、プロダクトがこのライフサイクルのうねりの中で、またマーケットの状況に応じて、多様に進化の方向を変更していかなければならないからだ。PMの役割はライフサイクルの中で大きく3つに分けることができる。本稿ではこのそれぞれの役割についてスポットライトを当ててみよう。
前回記事
ライフサイクルの重要な分岐点:Product Market Fit(PMF)
「プロダクトマネジメントをする上で何が一番大事か」と100人のプロダクトマネージャーに聞けば100通りの答えが返ってくるかもしれない。それほどプロダクト作りには多様な観点がまざりあい、方程式のような決まった方法はない。
しかし企業としてプロダクトマネジメントを行う以上避けて通れないのがProduct Market Fit(PMF)という考え方だ。PMFとはWealthfront社のCEO・Co-founderかつ、Benchmark CapitalというVCのCo-founder(執筆時時点)でもあるAndy Rachleff氏によって提唱されたものだ。氏はPMFを以下のように定義する。
“A value hypothesis is an attempt to articulate the key assumption that underlies why a customer is likely to use your product. Identifying a compelling value hypothesis is what I call finding product/market fit. ”
PMFとは強力な価値仮説を見つけること。価値仮説とは、なぜユーザーや顧客があなたのプロダクトを使うのかを説明しうる重要な仮説のこと。
つまり、ユーザーがそのプロダクトを「使いたい」と思う理由は、プロダクトに「価値」を感じているからであり、ユーザーと価値が結びついたときProduct Market Fitが成立する仮説が導けたと言える。プロダクトやビジネスモデルによるが、この価値を対価として収益をあげること、つまり価値に対して想定している価格でユーザーが購入してくれて初めて、ビジネスとして成立することが証明できるわけだ。
このProduct Market Fitの考え方はスタートアップのみならず、大企業などで新規事業を立ち上げるときにも非常に重要な考え方である。PMFを乗り越えて初めてライフサイクルが本格的に始まると言っても良い。そこでまずはこのPMFについて掘り下げてみよう。
PMFが成立するためには3つの観点が必要である。それはマーケット・革新的な製品・人だ。

まずはマーケット。どんなプロダクトでもそれを求めるユーザーが存在しなければ全く意味がない。無論、ユーザーは最初から欲しいものを知っているわけでもないので、仮に新機軸プロダクトの場合はどの既存マーケットに隣接しているのか、現在のユーザーはどんなプロダクトやサービスを代わりに使っているのかを考えることから始まる。ユーザーがいなければ、それは新しいマーケットを見つけたのではなく、単にマーケットが存在しなかったというだけのことだ。
大企業等の中で新規事業を考える場合は、メインストリームとなっているプロダクトの後継となるものを作る必要があるかもしれない。この場合はマーケットというよりも、次のポイントとなる「革新的な製品」の部分に焦点を当てることだ。
例えば、初期のFacebookに投資し大成功を収めたことでも有名なベンチャーキャピタリストであるPeter Thiel氏が記した名著「Zero to One」。ここには、革新的な製品であるためには既存のプロダクトやソリューションよりも10倍良いものを目指すべしというくだりがある。今ユーザーが手にしているものよりも、その価値の輪郭がはっきりしていないと革新的な製品とは言えず、ユーザーを引きつけることができない。スタートアップに限らず、大企業等での事業開発も含め、これまでの「当たり前」の部分に対して疑問を持ち、現状維持で良いという慣性に流されず、抗っていかないと、10倍良いと言えるようなプロダクトにはたどり着かない。
最後に人・チームだ。マーケットがあり、革新的な製品のアイデアもある。となると、あとはそれを形にして実行していく人(立ち上げチーム)が必要だ。ファウンダーや事業立ち上げメンバーに行動力がなく、それを形にするエンジニアに技術力がなければ絵に描いた餅で終わってしまう。
さて、PMFの概要について理解していただけたところで、本書ではこのPMFの達成をする前と後、達成後の大きく成長するステージの3つに分けてプロダクトマネージャーの役割を説明していく。
- 修正履歴
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- 2020/06/24 12:09 記事タイトルに誤りがありました。「プロジェクトマネージャー」としていいましたが正しくは「プロダクトマネージャー」でした。訂正してお詫び申し上げます。
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及川 卓也(オイカワ タクヤ)
早稲田大学理工学部を卒業後、外資系コンピューターメーカーに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、その後、別の外資系企業にてOSの開発に携わる。その後、3社目となる外資系企業にてプロダクトマネージャーとエンジニアリングマネージャーとして勤務後、スタートアップを経て、独立。2019年...
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曽根原 春樹(ソネハラ ハルキ)
Fortune500系外資企業に入社後、SE、カスタマーサポート、マーケティングなど様々な役職を日米で従事。その後シリコンバレーでプロダクトマネージャーに転身。B2B、B2C領域で米系大企業・スタートアップの双方でプロダクトの世界展開に携わる。現在はSmartNews社米国法人にて日本のスタートア...
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小城 久美子(コシロ クミコ)
toC向けサービスを提供するWeb系企業に入社し、その後いくつかの企業で新規事業の立ち上げなどにエンジニア、スクラムマスターとして携わる。どう作るかより何を作るかに興味関心が移り、プロダクトオーナー/プロダクトマネージャーに転身。プロダクトマネジメントについてより深めるために、2019年よりTab...
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