はじめに
Visual Studio Team SystemのメジャーバージョンアップとなるVisual Studio Team System 2008がリリースされ、以前の機能を踏襲しながらも、さまざまな部分において安定性の向上や機能の追加・向上が図られました。今回はその中でもアプリケーションのデザイン・配置などのモデリング用に用意されているVisual Studio Team System 2008 Architecture Edition(以下、VSTS-AEと表記)を利用した、アプリケーションモデリングについて紹介します。
なお、本稿に付属しているサンプルファイルは、解説内容を一通り行った後のソリューションをzipファイルにまとめたものです。本ファイルを解凍して、フォルダ内にあるCodezine-VSTS-AE01.slnを開くことで実際に作業を行った後の結果を確認することができます。ただし、ソリューションを開くためには、「必要な環境と準備」で説明している内容に基づく環境が必要となりますのでご注意ください。
対象読者
- .NET Frameworkを利用した開発プロジェクトに携わっている人
- Visual Studio Team System 2008に興味がある人
必要な環境と準備
本稿で解説している内容を実際に試す場合には、以下のいずれかの環境が必要となります。
- Visual Studio Team System 2008 Architecture Edition
- Visual Studio Team System 2008 Team Suite
お手元に製品メディアがない場合は、評価版を利用しても構いません。VSTS-AEの評価版は用意されていないので、代わりに「Visual Studio Team System 2008 Team Suite(90日間評価版)」をダウンロードしてインストールしてください。
なお、本稿で解説している内容は、Visual Studio Team System 2008 Team Suite + Service Pack 1を利用している環境に基づいています。そのため、VSTS-AEを利用しているか、Service Pack 1が当たっていない場合は、スクリーンショットの一部に差異がある可能性があります。本稿で解説している内容を実践する場合は、できる限りService Pack 1を適用した状態で行うようにしてください。
Visual Studio Team System 2008 Architecture Editionとは
今回は、VSTS-AEについて扱う初めての内容になりますので、最初に少し全体像を見ておきたいと思います。
Visual Studio 2005のころ、Team Systemの中には、Visual Studio 2005 Team Edition for Software Architects(一般にVSTAと呼ばれることが多かったかもしれません)というアーキテクト向け製品が用意されていました。この製品には、「分散デザイナ」と総称される「アプリケーションデザイナ」「システムデザイナ」「論理データセンターデザイナ」「配置デザイナ」の4つのデザイナ機能が用意されていました。この4つのデザイナは[図1]に示すように緊密に連携することができ、アプリケーションモデリングの担当者はこれらの機能を駆使して、これから開発するシステムの全体像と配置先のサーバー構成を簡易的なモデルで示すことができました。
本連載では、この4つのデザイナを「アプリケーションデザイナ」「システムデザイナ」「論理データセンターデザイナ」「配置デザイナ」の順に解説していきます。分散デザイナを使う場合は、この順番に使うのが王道だからです。
例えば、アプリケーションデザイナで、必要なアプリケーションの数と接続を定義し、アプリケーションの数が増えてきたら複数のアプリケーションを1つにまとめて考えるためにシステムデザイナを利用します。一方で、アプリケーションの配置先のネットワーク構成やサーバー構成を論理データセンターデザイナで描いておきます。アプリケーションが要求する条件とデータセンターが要求する条件に矛盾がないかを配置デザイナを使って検証することができます。
なお、4つのデザイナの概要については、VSTAの記事ですが『Visual Studio 2005 Team Edition for Software Architectsの4つの分散デザイナ』を参照してください。VSTAから名前こそ多少の変更があったものの、4つのデザイナからなる分散デザイナは、VSTS-AEでも健在です。むしろ、大きなインパクトを与えるような変更点はあまりないかもしれません。
このため、今までVSTAで本格的にモデリングを行っていた読者には少々退屈な内容になるかもしれませんが、本稿では、VSTS-AEのアプリケーションデザイナ機能を利用して、アプリケーションのモデリングを行う方法について解説していきます。