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Developers Summit 2024 セッションレポート

10年の歩みから学んだエンジニアの「職位の壁」と影響力──庄司嘉織氏が語る「人生の主人公」であり続けるための挑戦

【16-A-1】Flight of a Decade:10年間の旅路と再会

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成功確率の高い仕事は「挑戦」ではない

 さらに、庄司氏は「挑戦」の重要さについても述べた。庄司氏によれば、「挑戦」の定義は「成功率が少なくとも50%以下であること」。そのうえで、「『ここ何年も失敗していない』人は、確実性の高い仕事ばかりに取り組んでいる可能性がある。きちんと挑戦を続けられているか、自問したほうがいい」と厳しい言葉を向ける。

 「シンプルな確率論として、成功率50%の仕事が4回連続で成功する確率は6.25%にすぎない。何年も失敗していないということは、少なくとも4年間は挑戦していないことになる」。

失敗のリスクを背負ってこそ成長できる
失敗のリスクを背負ってこそ成長できる

 庄司氏は「挑戦」の具体例として、GitHubが行っているRailsアップグレードを挙げた。Railsではメインブランチの最新コミットを毎週アウトプットしており、GitHubのソースコードと合わせてテストを行いデプロイしているという。

 これは過去のバージョンアップに苦労したという背景から生み出された施策とのことだが、庄司氏は「自分ならDependabotを入れて、最新のバージョンに追従させるぐらいにしてしまう」としたうえで、「思いついたとしても、失敗を恐れていたらこの決断はできない。軌道に乗せるまで続けたのは大きな挑戦だ」と評価する。成長のための経験値は、挑戦しなければ貯まらないのだ。

 こうした他社の事例から、庄司氏は部下に仕事を振る際に、確実性を求めるのか挑戦を求めるのかをなるべく伝えるようにしていると語る。確実性の高い仕事もこなしつつ、最近失敗しているかを意識しながら挑戦の余地を常に探り、成長の機会を伺うというスタイルが庄司氏の働き方だ。

リスクの高い決断は「人生の主人公でい続ける」ため

 講演は庄司氏のプライベートへと移る。「ここからは余談だが」と前置きしたうえで、「10年間で僕の物語がどう変化したのか、簡単に振り返りたい」とトークが始まった。

 10年前の講演で、「自分の子供に対して『お父さんはお前たちを育てるために、やりたくない仕事をやってるんだ』と言えますか」と問いかけた庄司氏。そこから10年、子どもの誕生や愛車であるロードスターの売却など、さまざまなライフイベントの発生やそれに伴う決断を経験した。

 ときには弱気になったこともあるといい、「物語の主人公でい続けることは結構大変だった」と総括する庄司氏だが、コロナ禍の非常事態宣言も明けきらない2020年5月にそれまで勤めたクックパッドを退職し、Launchable社へ転職する。

 子どもが生まれて約半年後に、東証スタンダード上場企業からシリコンバレーのスタートアップへ移るという大胆な決断。決め手になったのは、「企業のシードラウンドから参加することは、またとない貴重なチャンスだと感じた」ことだった。

子どもの存在も大きな理由となった
子どもの存在も大きな理由となった

 創業者の川口氏の存在も大きな理由だ。Jenkinsの開発者である川口氏は、データとAIを使って「ソフトウェア開発を職人の勘によらない、データに基づいた合理的なものにする」ことを掲げ、Jenkins上のデータを使って取り組みを進めている。「このロックスターと一緒に働けるっていうのはすごいデカいなと思った」という点も、Launchableに惹かれたポイントだったという。

 「45になって英語を1から勉強した」と語る庄司氏。それでも挑戦を決断したもう1つの理由として、「僕が人生を楽しんでいるところを、ちゃんと子供に見せたい」と、10年前の自分へのアンサーとして挙げる。転職の際に背中を押してくれたという家族に感謝しつつ、「この物語の主人公は僕だ」と人生を楽しむ姿勢を見せて講演を締めた。

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この記事の著者

中島 佑馬(ナカシマ ユウマ)

 立命館大学卒業後、日刊工業新聞社にて経済記者として勤務。その後テクニカルライターを経て、2021年にフリーランスライターとして独立。Webメディアを中心に活動しており、広くビジネス領域での取材記事やニュース記事、SEO記事の作成などを行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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