SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine(コードジン) ProductZine

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート(AD)

データ活用で全社的な成果を得ている日本企業はたった8% - AIに任せる前に決めておく「意味設計」とは

【16-B-3】AIとの対話でデータ活用はどう変わるのか KPIの誤読を防ぐ生成AI時代の「意味設計」

 生成AIとの対話でデータを分析する世界が現実になりつつある。しかしAIはデータを処理できても、企業固有のKPIや業務判断の意味までは自動で理解しない。三井物産の100%子会社であるMBKデジタルの尾﨑勇太氏・岩尾一優氏がデータエンジニアの視点から、Google CloudのBigQueryエージェントによる実装デモを交えながら、AIに業務の「意味」をどう教えるかを解説した。鍵となるのは、セマンティックレイヤーだけでは埋まらない「意味設計」だ。

データ活用によって十分な成果を得ている企業はたった「8%」

 Gartner社の調査によれば、日本企業でデータ活用によって全社的に十分な成果を得ている組織の割合はわずか8%にとどまる。MBKデジタルの尾﨑勇太氏は、この格差が2026年になってむしろ拡大していると指摘する。同社は三井物産の100%子会社として2025年4月に設立され、データ・AI活用支援を業種横断で手がけてきた。

株式会社MBKデジタル AI・データ事業本部 エンジニアリングマネージャー/リードデータエンジニア 尾﨑勇太氏
株式会社MBKデジタル AI・データ事業本部 エンジニアリングマネージャー/リードデータエンジニア 尾﨑勇太氏

 2025年から2026年にかけて、生成AIは「聞く」段階から「任せる」段階へと移行しつつある。2025年はまだ過渡期で、チャットで問いかける対話型AIの活用が広がり、成果を出した企業の多くは基盤整備やダッシュボード構築による全社最適化を進めていた。

 だが2026年、新たな分岐点が生まれたと尾﨑氏は指摘する。先行企業はKnowledge Catalogなどを活用して意味設計を全社で統一し、エージェントに正確な前提を与えて成果を最大化している。一方、意味設計が不十分なまま生成AIを導入した停滞企業では、AIエージェントが部署ごとに異なる「売上」「顧客数」といった定義を誤読し、SQLとしては正しくても、誤った業務定義に基づいて判断・アクションしてしまうリスクが高まっている。

 従来のボトルネックは基盤・人材・組織・データ品質だったが、生成AIによって自然言語で問いかけられるようになったことで、新たな壁が顕在化した。自然言語でデータにアクセスできるようになっても、企業ごとに異なるKPIの定義や業務判断の前提まで、AIが自動的に把握できるわけではない。この「意味の未整備」こそが、8%の壁の背後にある新しいボトルネックだと尾﨑氏は説明する。

 その具体例として尾﨑氏が挙げたのが「最近、優良顧客が減っている理由を教えて」という一文だ。一見自然な日本語だが、「最近」がいつを指すのか、「優良顧客」をどう定義するのか、「減っている」のは件数か構成比か、そこには曖昧さが幾重にも重なっている。尾﨑氏は、用語・粒度・時間・状態・確定度・権限・意図という7つの「意味の壁」を例として示した。問いが自然であっても、意味は一意には決まらない。

さまざまな意味の壁――用語・粒度・時間・状態・確定度・権限・意図の7つのレイヤーが業務用語の裏に隠れている
業務用語の裏には、用語・粒度・時間・状態・確定度・権限・意図の7つのレイヤーが隠れている

 BI時代の問題は、ダッシュボードAとBで数字が食い違うといった、目に見える「数字の不一致」だった。これに対しAI時代の問題は「意味の誤読」だと尾﨑氏は語る。自然言語の問いを受けたAIは、曖昧な業務用語を自分なりに意味補完し、データを選んでもっともらしい回答を返す。だが補完の時点で解釈がずれていれば、正しいSQLを実行しても間違った問いに答えることになる。

 尾﨑氏が強調するのは、AIが知らないこと自体は問題ではないという点だ。問題は、AIが知らない部分を暗黙のうちに補完してしまうことにある。だからこそ対策は、AIが意味を補完してしまう前に、判断の前提を明示しておくことに尽きる。言い換えれば、AIが「この問いは定義済みのルールで答えられるか」を判断できる状態を、事前に作っておく必要がある。

意味の壁は前段階で起きている――自然言語の問いから暗黙の補完を経て、誤答が生まれるまでの5段階
自然言語の問いから暗黙の補完を経て、誤答が生まれるまでの5段階

 まず尾﨑氏が挙げたのが、セマンティックレイヤーだ。しかし、セマンティックレイヤーは指標の定義を揃えることはできても、「どの文脈でどの指標を使うべきか」までは決めてくれない。尾﨑氏はセマンティックレイヤーの歴史から、その理由を解説した。

次のページ
データと意味のずれを「誰が・どう補完するか」という、繰り返されてきた課題

関連リンク

この記事は参考になりましたか?

Developers Summit 2026 Summer セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

川又 眞(カワマタ シン)

インタビュー、ポートレート、商品撮影写真をWeb雑誌中心に活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

DeveloperZineは、株式会社翔泳社が運営する、技術と組織の意思決定を支える情報メディアです。技術選定やチームづくりに向き合い、自分の判断を確かなものとしたいエンジニアやエンジニアリングリーダーに向けて、翔泳社主催エンジニアイベント「Developers Summit」とも連動しながら実践知...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社MBKデジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/29036 2026/09/11 11:00

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー