AIエージェントは定義済みのルールに基づいて回答する
実際のデモでは、「INC-2048で、いますぐ優先連絡すべき法人顧客は?理由と担当CSMも教えて」という問いに対し、エージェントは契約更新まで21日のC社を最優先、45日のA社を次点として提示した。回答には対象顧客だけでなく、担当CSMの氏名、影響を受けたサービス、依存関係のホップ数、確認された代表経路といった根拠までが添えられる。
判断ロジックを検証済みクエリに固定してあるため、同じ質問を何度実行しても再現性の高い答えが返ってくる。適用したルールのバージョンや判定基準日、証拠選択のポリシーも回答に残るため、担当者は「このルールに基づいて実行された」と簡単に確認できる。
岩尾氏は、AIに求めるモデルの性能についても言及した。固定するのは正式用語・判定の根拠・検証済みクエリであり、AIに任せるのは質問の言い換えの吸収、入力の取り出し、回答文の組み立てといった部分にとどまる。AIに任せる範囲を限定することで、モデルの推論性能への依存を相対的に下げられるという。
ただし岩尾氏は、検証済みクエリであらゆるパターンを網羅するのは現実的ではないと釘を刺す。
実務では8割程度をカバーすることを目指し、加えて、運用面では3つの観点を設計しておく必要がある。1つ目は「想定外の問い」への対応で、対応するクエリがない質問には勝手に補完して答えず、確認質問を返すか「未定義」であることを明示する。2つ目は「定義の変化」で、業務ルールは変わり続けるため、ルールにバージョンを持たせ、用語やクエリにオーナーを置き、変更はレビューを通す。3つ目は「カバレッジの拡大」で、最初からすべてを作り込むのではなく、質問ログから頻出のパターンを見つけては検証済みクエリに昇格させていく。1つの業務質問から始め、エージェントを運用の中で育てていくという姿勢が重要になる。
尾﨑氏と岩尾氏が示した明日からのアクションは、AIに答えさせたい業務質問を1つ決め、その質問で使う正式用語を決め、必要なデータのつながりを整理し、対象条件と優先順位をクエリに固定し、エージェントからそのクエリを呼び出せるようにし、根拠と再現方法を回答に残す、という6つの手順に集約される。AIにデータを使わせる前に、まず業務の意味を設計する。生成AI時代のデータ活用における出発点は、ここにある。
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