3.各自の状況を公開し、日中も助言しやすくする
以前のチームでは、朝会の後にメンバーが技術的な課題へ遭遇し、何時間も1人で悩んでいたことを、翌日の朝会で初めて知ることがありました。状況が早くわかれば、知見を持つメンバーが助言しやすくなります。良い進め方が見えれば、その行動を具体的に称賛することもできます。
そこで必要になるのが、各自の状況を他のメンバーに公開し、仕事の途中でフィードバックを受けられる状態です。私たちのチームでは、その具体的な方法として分報を使いました。
分報とは、Slackなどにメンバーごとの専用チャンネルを作り、自分の状況や考えを任意のタイミングで投稿するプラクティスです。「分報」という名前でも、1分ごとに書くわけではありません。具体的には、次のように運用しました。
- チャンネル名を「#times_メンバー名」とする
- 「今やっていること」「困っていること」に加えて、調査結果や対応方針も随時書く
- ほかのメンバーの分報を読むかどうかは自由とする
- 投稿に対して、助言したり、ポジティブなリアクションを返したりする
図4では、不具合を修正しているメンバーが、再読み込み処理を実行している場所を探していると投稿しています。それを見た別のメンバーが該当クラスを伝え、数分で手がかりが見つかりました。
このように状況を公開すると、知見を持つメンバーが途中で助言できるため、1人で調べ続けるよりも早く課題を解消できることがあります。調査結果や対応方針を文章にすることで、投稿した本人も問題を整理できます。
また、新人にとって、チーム全体のチャンネルで質問することには「きちんとした文章を書かなければ」という心理的な負担がありました。自分のチャンネルで困りごとをつぶやき、気づいた先輩が声をかける形なら、相談を始めやすくなります。
分報を作るだけでは、投稿が続かないことがあります。書いて終わりにせず、投稿に助言が届き、ポジティブなリアクションが返る状態が必要です。「書いたら問題の解決が早まった」「考え方を認めてもらえた」と感じられると、状況の公開は続きやすくなります。
分報は、この状態を作る1つの方法です。共有チャンネルに各自が随時状況を投稿するなど、チームに合う別の方法でも実現できます。
チームで観察できた変化
導入後は、仕事の途中で相談や助言が起きる場面が増え、良い行動も互いに認識しやすくなりました。途中で方針を確認できるようになったことで、手戻りも減りました。これらを含む複数の改善を進めた結果、チケットを完了させるペースは約1.5倍になり、遅れを挽回してリリースに間に合わせることができました。
まとめ──明日から試せる最初の一歩
助言や称賛などのフィードバックは、途中経過が見えていると返しやすくなり、その頻度も上がります。本稿で扱ったのは、その材料を見えるようにする3つの方法です。
- 朝会では作業名ではなく「今日どこまで進めるか」を宣言し、帰宅前にその目標に対して「どこまで進んだか」を共有する
- 新しいチケットへ着手するときは、担当者とレビュアーが進め方と途中確認のポイントを決め、チケットへ残す
- 日中は各自の状況を公開し、メンバー同士で助言や称賛ができる状態にする。分報はそのための1つの方法
まずは自分の仕事から透明化を始めてください。チーム全体で一斉に揃えなくても構いません。次のチケットで、いま何をしているか、どこで止まっているかを書いてみてください。途中経過が見えるだけで、周囲は助言しやすくなります。
次回は、フィードバックのやり方について扱います。10年以上前の筆者の、残念なフィードバックの黒歴史を紹介しながら、望ましい行動を「やってよかった」という成功体験に変える方法を説明します。
