AIエージェントの入口はMCPかCLIかAPIか? 迷う前に押さえたいプロダクトの4層
AX(Agent Experience)入門:AIエージェントに使われるプロダクトの条件 第1回
AIエージェントの行動モデルから読み解く「エージェントはなぜ迷うのか?」
なぜ、エージェントは迷うのでしょうか。何が人間と違うのでしょうか。それを理解するには、エージェントの行動モデルに目を向ける必要があります。
多くのAIエージェントは、ReAct(Reasoning and Acting)と呼ばれるパターンに基づいて動きます[4]。考える(Thought)、動く(Action)、結果を観察する(Observation)という3つの段階を交互に繰り返す仕組みです。
たとえば「この顧客の未払い請求を確認して」と指示された場合、エージェントは次のように進みます。
- Thought(考える):顧客情報を引くAPIが必要そうだ
- Action(動く):顧客検索APIを呼ぶ
- Observation(観察する):顧客IDが得られた
- Thought(考える):次はこのIDで請求一覧を取得すればよい
- Action(動く):請求APIを呼ぶ
ここで重要なのは、このThoughtの中身です。エージェントは、あらかじめ手順を知っているわけではありません。与えられた情報(コンテキスト)を頼りに、次に何をすべきかをその場で判断します。使えるAPIの一覧、各APIの説明、直前の呼び出しが返した結果。これらがコンテキストとして渡され、そこから次の一手を導き出します。
人間は曖昧な仕様や不統一な表現を、経験や状況から柔軟に補って読み解けます。しかしエージェントにはそれが苦手です。エージェントはコンテキストを基に推論を行い、確率的に次のアクションを決定するため、判断の仕組みそのものが人間と異なります。暗黙知や例外運用、担当者依存のルールといった、人間同士なら通用してきたやり方は、エージェントには通用しません。適切なコンテキストが与えられなければ、エージェントは迷うのです。
[4] Shunyu Yao et al.「ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language Models」(ICLR 2023)
「MCPかCLIかAPIか」という問いは本質ではない
AXを考え始めると、現場ではしばしば次の議論になります。
「MCPかAPIかCLIか、どちらを採用すべきか」
この問いに、決まった正解はありません。コンテキストを押さえたいならCLI、柔軟なツール選択を優先するならMCP、というように、前提条件が変われば最適な答えも入れ替わります。MCP、API、CLIは、いずれもエージェントがプロダクトの能力を利用するための「接点」です。どれが適しているかは目的や実行環境によって決まるため、1つに固定するものではなく、状況に応じて選び直していくものだと言えるでしょう。
もちろん、エージェントにとって使いやすい接点を選ぶことは、重要です。しかしプロダクトとして本当に問うべきは、そこではありません。どの接点を選んでも同じ品質の体験を返せるかどうかです。入口ごとに挙動や用語、エラー処理がズレていれば、そのプロダクトは信頼できないものになります。AXを支えるのは接点の選定ではなく、いかなる接点でもエージェントが迷わず能力を使えるよう、プロダクト全体を設計することなのです。
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川崎 庸市(Postman株式会社)(カワサキ ヨウイチ)
Postman株式会社 テクノロジーエバンジェリスト。外資系クラウドベンダー、国内EC事業会社などを経て、現職。現在は、同社製品の導入支援や登壇・執筆活動を通じ、同社製品の教育・普及に取り組む。また、SaaSスタートアップの技術顧問も務める。共著書に「APIファースト Postmanで学ぶ効率的かつ柔軟な開発アプローチ」(翔泳社)、「プログラマーのためのVisual Studio Codeの教科書」(マイナビ出...
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