Datadogは8月27日、年次カンファレンス「DASH 2026」で発表した最新イノベーションに関する記者説明会をオンラインで開催した。AIエージェントの普及が進む中でシステム環境が複雑化していることを背景に、AIオペレーション、コスト最適化、セキュリティ、自律運用の4領域にわたる新機能を紹介した。
日本市場シェア52.3%、2年連続首位を更新
Datadog Japanでリージョナルバイスプレジデント、エンタープライズセールス執行役員を務める高橋祐介氏は、冒頭、同社の国内実績を報告した。株式会社富士キメラ総研のレポート「ソフトウェアビジネス新市場2026年版」(2026年7月発表)において、Datadogは運用管理・オブザーバビリティ市場で2025年度の国内シェア52.3%を獲得し、2年連続で第1位となった。前年度の34.7%からシェアを伸ばした形だ。同レポートによれば、運用管理・オブザーバビリティ市場は2025年度に1,100億円規模と見込まれ、Datadogが属するSaaS/PaaS領域は2025〜2030年度に年平均成長率(CAGR)21.7%で拡大する見通しだという。
AI活用の現状について同氏は、総務省の調査データを引用し、2021年ごろから2026年1月ごろの間に、業種・規模を問わず企業のAI活用が大きく広がっていることを説明。さらにIDC Japanの予測として、日本のAIインフラ支出は2022年から2025年の3年間で約7倍に拡大し、2026年には前年比18%増の8,210億円に達するという見通しも紹介した。
AI活用の拡大で運用環境が複雑化
こうした状況の一方で、高橋氏はAI・クラウド活用がもたらす課題も指摘。従来のアプリケーションやクラウドインフラに加え、AIモデルやAIエージェント、データ基盤まで管理対象が広がることで、システム全体の状況把握が困難になっていると説明した。障害発生時には複数システムを横断した原因特定が必要になるほか、セキュリティ脅威の高度化、IT人材不足といった問題も重なる。高橋氏は「システム障害やセキュリティインシデントが発生すれば、収益への影響や顧客体験の低下、事業運営の中断につながりかねません」と指摘し、「AIやクラウドを導入するだけでなく、複雑化する環境全体を可視化して安全かつ効率的に運用する仕組みが不可欠です」と強調した。
高橋氏は解決の方向性として「Datadogは、アプリケーション、インフラ、AIモデル、AIエージェントを単一のプラットフォーム上で可視化し、システム全体をエンドツーエンドで把握できる環境を提供しています」と述べ、個別のシステムやツールを分断して管理するのではなく、単一のプラットフォームで統合的に管理することの重要性を説明した。同社はこの考え方に基づき、検知から調査、是正措置までの一連の流れを「Operations Loop」と定義し、この高速化を軸に据えた製品戦略を打ち出している。
「Bits Chat」などの新機能でAI運用を加速
続いて、同社 ソリューションズエンジニアリング ディレクターの守屋賢一氏が、DASH 2026で発表された具体的な機能を解説した。守屋氏はまず、Datadogが統合プラットフォームとして提供する価値を「AIオペレーション」「コストの最適化」「セキュリティ」「Bits AIによる自律運用」の4つに整理し、これらを組み合わせることで開発から運用、セキュリティ、コスト管理までを支えると位置づけた。
このうちAIオペレーションについて、守屋氏はDatadogのAI戦略を、AIで開発・運用を高度化する「AI for Datadog」と、AIエージェント自体を可視化・保護する「Datadog for AI」の2軸に分類。前者の目玉機能が、自然言語でシステム状況を把握できるAIアシスタント「Bits Chat」だ。メトリクスやログ、トレースなどのオブザーバビリティデータを横断的に分析でき、現在開いている画面の情報を踏まえて対話が進むため、複雑なプロンプトを書くことなく素早い状況把握や深掘りが可能になる。
後者のDatadog for AIは「Observe AI」と「Secure AI」の2つの機能群からなる。守屋氏は、LLMやAIエージェントが顧客向けサービスに組み込まれる中で「AIが期待通りに動作しているか、適切な品質やパフォーマンスを維持できているかを継続的に把握することが求められています」と説明した。
Observe AIの中核機能「Data Observability」は、AIアプリが参照するデータの品質管理を担う。Snowflakeなどのデータウェアハウス上のテーブルで行数の急減や欠損値の増加といった異常を早期検知し、問題のあるデータがダウンストリームのモデルに到達するのを防止できる。エンドツーエンドのデータリネージ可視化や、Databricksのクラスタ過剰プロビジョニングなどを検知したコスト最適化のレコメンデーションも提供する。
もうひとつの柱であるコスト管理機能「Cloud Cost Management」は、複数のAIプロバイダーやクラウドサービスにまたがる利用状況とコストを一元的に可視化する機能だ。どのチーム・サービス・プロジェクトがどれだけコストを発生させているかを明確にし、過剰なリソース確保や無駄な支出を検知して最適化を推奨する。推奨事項はガードレールの範囲内で自動実行することもでき、継続的なコスト削減につなげる。
セキュリティとBits AIで「自律運用」へ
Secure AIの新機能としては、「AI Guard for Custom Agents」(提供開始)と「AI Guard for Coding Agents」(プレビュー)を発表した。プロンプトインジェクションや不正なツール呼び出し、データ外部流出、ジェイルブレイクといった脅威からAIエージェントをリアルタイムで保護するガードレールとして機能する。また「Runtime Prioritization Engine」は、リアルタイムのオブザーバビリティデータと本番環境の状況を組み合わせてリスクを動的に評価し、対応すべき脆弱性を優先順位付けする機能で、脆弱性アラートのノイズを最大95%削減できるという。
自律運用の軸となるのが「Bits AI」の機能拡張だ。従来インシデント対応を担う「Bits for SRE」に加え、今回は問題がインシデントになる前にインフラ上の課題を自律的に検知・対応する「Bits for Infrastructure」を追加した。具体的な機能のひとつ「Bits Infrastructure Operations」(プレビュー)は、テレメトリーデータやシステム構成、ソースコードなど幅広いコンテキストを組み合わせて分析し、Kubernetes環境でのコンテナクラッシュループ発生時のリソース設定見直しなどを、あらかじめ許可されたガードレールの範囲内で自律実行する。守屋氏は「検知から調査、修復までの運用ループを閉じる『Closing the Ops Loop』のビジョンをさらに一歩進めました」と述べた。
最後に高橋氏は、日本企業がAI活用を安全かつ継続的に拡大するためのポイントとして、統合的な可視性の確保、運用・コスト・セキュリティの一元管理、AIを活用した段階的な自動化という3点を挙げた。そのうえで「これら3つの取り組みは、単にIT運用を効率化するためのものではありません。限られたIT予算や人材を、日常的な運用負荷への対応だけではなく、新たなAIの活用やサービスの高度化といった、より付加価値の高い取り組みに振り向けることが可能になります」と述べ、AI運用基盤の整備が単なるコスト削減にとどまらず、企業の成長投資の原資を生み出すことにつながると強調した。
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