AI駆動開発プロセス構築の出発点は「AIを使わないリスク」
事業会社のIT部門は、経営層からは生産性向上とコスト削減を求められ、ビジネス部門からはスピードアップを求められる。だが杉谷氏はそれ以上に「ITの現場での必要性」が重要だと切り出す。DXの推進や生成AIの活用でIT関連の業務量は年々増えているにもかかわらず、IT人材の有効求人倍率は他業種を大きく引き離して高止まりしたままだ。杉谷氏はこの状態を「業務と人材のスタグフレーション」と呼ぶ。少子高齢化が進めばこの傾向はさらに顕著になり、手を打たなければ立ち行かなくなる。
もう一つの論点が、AIを使わない場合のリスクだ。ハルシネーションなど「AIを使うリスク」への注目が集まりがちだが、それは自社でコントロールできる。むしろコントロールが難しいのは「AIを使わない場合のリスク」の方だと杉谷氏は指摘する。開発生産性の向上にとどまらず、開発プロセス自体を人とAIの協働型に変革すること。これが、みずほ証券がAI駆動開発プロセスの構築に踏み出した出発点だった。
唯一の正解はない、それでも駆け抜けた「1年半」の軌跡
前提として杉谷氏が強調したのは、AI駆動開発のスタイルに唯一の正解はないということだ。旧来型の大企業とスタートアップでは同じことはできないし、規制の厳しい金融機関とそうでない業種では判断基準が異なる。エンジニアリングの内製化率が高い会社と外部委託への依存度が高い会社でも、社員のスキル特性は変わってくる。だからこそ同社の事例は「一つの取り組み事例」として参考にしてほしいと杉谷氏は前置きした。
みずほ証券がAIを活用した開発に着手したのは2025年1月、GitHub Copilotをスモールチームで使い始めたのが最初だ。転機になったのがDevinとの出会いだった。杉谷氏がDevinのデモを見たのは2025年7月15日。その場で導入を決め、翌日には関係部署に指示を出してPoCを開始した。国内の金融機関としては初のエンタープライズ契約という形で、最速約6カ月で導入している。Devinの自律性の高さに手応えを得る一方で、上流工程を担当する社員がDevinを使いこなせるかという課題に直面したことが、次の展開につながっていく。
