「開発以外は自分の仕事じゃない」というイキり、そして突きつけられた現実
技術書を書いてみたいと思っても、自分を象徴する技術がパッと浮かばない。副業を始めてみようと思い立っても、何を武器としてアピールすればいいのかわからない──エンジニアとして経験を積む中で、そんな「技術の深さや専門性のなさ」に直面し、焦りを感じたことのある人は多いはずだ。現在、カケハシでテックリードとして活躍するもっち氏も、まさにそんな自らの「器用貧乏」さにずっと悩み続けてきた。
もっち氏のエンジニア人生の原点は、学生時代にさかのぼる。オブジェクト指向関連の本をバイブルに、毎日のようにリファクタリングに没頭する日々。正月すらコーディングに費やすほど熱中していたという。その後、新卒で入社した会社では、アプリケーションサーバーやデータベース製品といったミドルウェアの開発を担当した。
その当時を、もっち氏は「少し『イキっていた』時期で、自分ではいいプロダクトが作れていると自負していました。加えて、開発以外は自分の仕事ではないと考えていたんです」と、振り返る。
しかし、開発業務の中でユーザーとの接点ができたことで転機が訪れる。人見知りな性格もあり、最初は顧客との対話にも後ろ向きに取り組んでいたが、それまで積み上げてきた自信が崩れ去るような現実に直面したのである。
開発者側が「エラーメッセージの対処法も動きも、マニュアルやドキュメントを読めば全部書いてあるから問題ない」と丁寧に作った製品は、巨大なシステムのごく一部に過ぎず、ユーザーから「使いにくい」「マニュアルのどこを読めばいいかわからない」と言われてしまったのだ。そして、どれだけ安全なプロダクトを作っても、それだけではユーザーに安心感を持ってもらえるわけではないことも痛感することになった。
「コードを書いてるだけでは、価値は届けられないんだ」。自らの視野の狭さに気づいたもっち氏は、単に「製品を作る」という意識から、どうやって「ユーザーに安心感や価値を届けるか」というエンジニアリングの本来の目的へと、自身の考え方を大きく変えていくことになる。
