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「作りたい!」を形にする個人開発。AIと叶える「あなただけのスタックチャン」開発入門

Web設計思想で動かす「スタックチャン」──生成AIと組み立てるMVPモジュール設計

「作りたい!」を形にする個人開発。AIと叶える「あなただけのスタックチャン」開発入門 第1回

 本連載は、生成AIを相棒にオープンソースロボット「スタックチャン」の個人開発に挑戦する入門講座です。第1回となる本記事では、組み込み開発未経験のWebエンジニアに向け、ChatGPTを活用したアイデア出しから設計までのプロセスを解説します。「日常の小さな困りごと」を出発点にAIとブレストを重ね、子ども向けの「手拍子で踊るロボット」という具体的な機能へ昇華。ハードウェア制御を「入力→状態管理→出力」というWeb設計思想で捉え直し、要求を満たす最小限のプロダクト(MVP)としてのモジュール設計をMermaidの図を交えて整理します。画面の外へ創造性を広げる、AI時代の新しいものづくりを始めましょう!

はじめに

 はじめまして、ししかわです。「スタックチャン」というオープンソースのコミュニケーションロボットを開発しています。

 この連載では、「Web開発者がスタックチャンを入り口に、ハードウェアを伴うものづくりへ踏み出してほしい!」という思いから、筆を執りました。

生成AIと一緒にロボットアプリケーション開発を始めよう

 「ロボット開発」という言葉に、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?

 「難しそう」「研究室や企業が行うもの」といった印象を持つ方も多いはずです。私自身もかつてはハードルが高すぎて、個人では始めづらいと感じていました。しかし近年は、「オープンソースロボット」の普及によってその前提が変わりつつあります。

 オープンソースロボットは、文字通り設計データがオープンソースライセンスで公開されているロボットを指します。その多くは完成品やキットとしても販売されています。つまり、基板や電源、センサー、モーター、ボディを一から選ばなくても、自由に動かせるロボットが手に入るようになりました。

 機能が揃った土台の上に、自分がほしいものをアプリケーションとして実装していく。この開発スタイルは、Webアプリやスマホアプリの開発に近い感覚です。

 さらに、ソフトウェアやハードウェアの仕様が公開されていれば、モーターやセンサーの制御も少しずつ調べながら理解できます。

 それでも、組み込み開発が未経験の人にとっては知らない言葉だらけで戸惑うことでしょう。そこで頼りになるのが生成AIです。

 この1年間における生成AIとコーディングエージェントの進化は凄まじく、コードの書き方やエラーの読み解き、物理的なデバイスの制御まで、あらゆるタスクを任せられるようになってきました。Web開発者が未知のハードウェアに触れるときも、今ならAIが頼もしいガイドになってくれます。

 個人的には、この変化に2008年にiPhoneが日本で発売されて以来の熱気を覚えています。当時の私は「自分のアイデアを世界中の人の手のひらに届けられる!」という空気にわくわくしていました。今はそれに近い感覚で、「自分のアイデアを机の上のロボットで実現できる!」と感じています。

 2026年はハードウェア、ソフトウェアの両面でロボット制作の環境が整いつつあり、今までにないほど個人のロボット開発のハードルが下がっているといえます。自分の書いたコードが、スマホやPCの画面だけでなく机の上のロボットで動き出すのは、Web開発とはまた違う楽しさがあります。

 皆さんもこの機会に、生成AIと一緒にロボットアプリケーション開発を始めましょう!連載第1回となる本記事では、アプリケーションのアイデア出しと設計を取り上げます。

スタックチャン/M5StackChanとは

 スタックチャンは、私が2021年から開発を続けている手のひらサイズのかわいいロボットです。

 外装、基板、ファームウェアはオープンソースとして公開されており、自作はもちろん、外装の変更や機能の追加も自由に行えます。顔の表情や首振りといった基本機能はシンプルですが、ネットワークや拡張モジュールと組み合わせることで、AIとの会話、音声による家電操作、通知の表示など、さまざまな応用が可能です。スタックチャン開発のきっかけやコミュニティの成長については、インタビュー記事をぜひ参照ください。

 個人のプロジェクトとして始まったスタックチャンですが、その後、ユーザーコミュニティ内で改造やキット化、AI連携の実験などの活動が広がりました。そして、2026年4月にはM5Stack社から製品版である「M5StackChan」が発売されました。

 M5StackChanは、M5Stack CoreS3をコアモジュールにしたデスクトップロボットです。CoreS3側には画面、タッチスクリーン、カメラ、デュアルマイク、スピーカー、9軸姿勢センサーなどがまとまっています。さらにロボット本体部には、2基のサーボモーター、12個のRGB LED、上部3ゾーンタッチパネル、NFCなどが搭載されています。

 つまりM5StackChanは、音、タッチ、姿勢、光、画面、動き、通信を扱う部品が「全部入り」でまとまっているロボットです。

 Web開発者がハードウェア開発を始める題材として、多様なセンサー入力とロボットらしい出力を同時に試せる点が最大の魅力です。さらに組み立て不要の完成品であるため、Web開発者でも気軽にアプリケーション開発を始められます。

 なお、以降の記事中では特に区別せず「スタックチャン」と呼びます。

日常の小さな困りごとから考える

 ここからは、最初のアプリケーションのアイデア出しを行っていきます。

 前述の通りスタックチャンは多くの機能を備えているため、逆に何を作るか迷ってしまうかもしれません。そこでおすすめなのが、「日常の小さな困りごとや気付きから出発する」アプローチです。開発するものの具体的なイメージを描きやすくなります。

 例えば、家族の朝の支度や寝る前の声掛け、子どもとのちょっとした遊びや学習の手助けなど、スタックチャンが活躍する場面を先に決めると、必要な機能が自然と絞り込まれていきます。

 この連載の出発点は「家族が見て楽しく、少し役に立つスタックチャン」です。

 実用性だけを追い求めると家電の延長線上のようになり、「スタックチャンでこれを開発する理由」が薄れてしまいます。一方で、楽しさだけを追求すると、一度遊んで終わるおもちゃになりがちです。

 そこで、家族の生活の中で何度も使いたくなるような小さな機能を、ChatGPTと一緒に探ってみましょう。

ChatGPTの環境準備

 この連載では、生成AIのサービスとしてChatGPT/Codexを使用します。本記事における検証環境は以下の通りです。

  1. ChatGPT Proプラン
  2. Codex v0.141.0

 アイデア出しを始める前に、ChatGPT側でスタックチャン制作のためのプロジェクトを作成しておくと便利です。プロジェクトに会話をまとめておくと、後から「最初にどのような候補を出したか」「なぜこの機能に絞り込んだか」といったプロセスを見返しやすくなります。

ChatGPTでプロジェクトを作成する画面
ChatGPTでプロジェクトを作成する画面

 また、利用しているChatGPTの環境で「プロジェクト専用メモリ」の設定を選べる場合は、あらかじめ設定状況を確認しておきましょう。

 通常のChatGPTに蓄積された好みや過去の会話を参照させたくない場合、プロジェクト内のメモリだけを使用する設定にすることで、記事用の会話を管理しやすくなります。なお、UIや提供状況はアカウントやプランによって異なりますので、執筆時点の画面で確認してください。

プロジェクト専用のメモリ設定を選ぶ画面
プロジェクト専用のメモリ設定を選ぶ画面

次のページ
スタックチャンのアイデアをブレストしよう

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この記事の著者

石川 真也/ししかわ(シンヤ イシカワ/シシカワ)

 秋葉原のロボットスタートアップ企業で働くWebエンジニア。個人ではオープンソースのコミュニケーションロボット「スタックチャン」を企画・開発し、ハード・ソフト・デザインを横断した“誰でも作れて改造できるロボット”の世界観を発信している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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https://codezine.jp/article/detail/24694 2026/07/13 08:00

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