New Relicは7月30日、ソフトウェア開発における生成AIの活用動向と課題をまとめた調査レポート「The 2026 State of AI Coding Report 日本語版」を発表した。同時に、AIコーディング環境における利用状況の可視化とガバナンス強化を実現する新機能「New Relic Preflight」を公開した。
同日に開催されたオンライン記者発表会では、New Relic 技術統括 コンサルティング部 兼 製品技術部 部長の齊藤恒太氏が登壇し、各企業でAIエージェントの活用が進み開発速度が向上する一方で、現場では「コード品質の低下」や「ツールコスト・運用負荷の肥大化」という深刻なリスクが顕在化していると指摘した。同発表会では、調査結果を軸に開発現場の実態が提示されるとともに、システムの稼働データをコンテキスト(背景情報)としてAIに提供するアプローチや、自律的な運用支援によって課題を克服する具体策が語られた。
発表会の冒頭、齊藤氏は大規模言語モデル(LLM)を活用したAIコーディングの現状について触れ、「GitHub Copilot」「Gemini」「Claude Code」といったツールの浸透に伴い、ソフトウェア開発の現場が大きく変化していることを説明した。調査レポートによると、ソフトウェア開発に生成AIを取り入れている企業において、アプリケーションを構成するコードの半数以上をAIが生成していると回答した割合は82%に上り、95%の企業がAI生成コードの本番環境への適用を認めている。
一方で、AIコーディング採用後に本番環境での障害が増加したと回答した企業は78%に達しており、システムダウンなどを引き起こす深刻な不具合の発生率は導入前の1.7倍に拡大している実態が明かされた。齊藤氏はこの品質低下の理由について、AIが静的な仕様や文法に沿ったコードを書くことはできても、高負荷時の挙動や並列処理時の競合、エッジケースやコーナーケースといった動的な実行環境のコンテキストを欠いているためだと解説した。さらに、94%のマネージャーがAI生成コードを高く評価している反面、品質に対する過信やコード生成量の急増によってシニアエンジニアのレビュー負荷が増加し、結果として62%の企業でレビューを経ないまま本番適用されるケースが発生していると付け加えた。
また、もうひとつのリスクであるコスト肥大化に関しても懸念が示された。ガートナーの予測によれば、トークン消費量の急増によって2028年までにAIコーディングツールのコストが開発者の平均年収を上回る可能性があるとされている。モニタリング不足による高性能・高単価モデルの乱用や非効率なプロンプトの繰り返し、さらに生成されたコードのブラックボックス化に伴う不具合調査の長期化が、開発下流での人件費や運用費を圧迫している構造が指摘された。
こうしたトレードオフに対し、New Relicは「Observability for AI」と「AI for Observability」という2つのアプローチを通じて解決策を提示した。オープンソースとして公開されたNew Relic Preflightは、エンジニアによるAIコーディングエージェントの利用状況やトークン消費量をリアルタイムで追跡・可視化し、予期せぬ高額請求を防ぐツールだ。進捗のない指示の繰り返しといったアンチパターンを自動検知して修正案を提示するほか、投入コストに対する成果を「AI効率スコア」として定量評価することで継続的なROI(投資対効果)向上を支援する。
また、品質向上に向けては共通規格Model Context Protocol(MCP)に対応した「Ground Truth(MCP Server)」が紹介され、検証環境や本番環境で収集されたテレメトリーデータをMCP経由でAIに提供することで、稼働状況を踏まえた高品質なコード生成を可能にするとした。さらに、自律運用を実現する「Autopilot」や「Workflow Automation」により、問題の原因分析から復旧対応までを自動化し、エンジニアが本質的な開発業務に集中できる環境を整えるアプローチが示された。
導入事例として紹介されたADWAYS DEEEでは、機能要件のプログラム化に加え、New RelicのGround Truthを用いて検証環境での挙動データをAIにフィードバックする仕組みを導入。人間は全体設計や主要箇所のレビューに集中し、非機能面の劣化をAIが即座に検知・修正することで、開発速度と品質担保の両立を達成している。
齊藤氏はまとめとして、AIコーディングの普及に伴う品質低下とコスト肥大化という2つのリスクに対し、開発段階から質の高い稼働情報をコンテキストとして組み込むことで早期にリスクを排除してROIを最大化できる点、そして運用の自律化によってリリース速度とコスト適正化を両立できる点を挙げた。「AIコーディングによって開発スピードの向上とコストの適正化を両立しながら、システム開発を回していくことができるようになる」と述べ、発表会を締めくくった。
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