「開発者体験」から「開発組織ブランド」へ、評価軸を刷新した理由
「今年も無事に開催することができ、非常にうれしく思っています」。日本CTO協会代表理事の今村雅幸氏の挨拶で幕を開けた「開発組織ブランドアワード2026」授賞式。同協会は2019年の設立から7年目を迎え、個人会員1,100名、法人会員87社が参加する国内最大級のCTOコミュニティに成長した。今村氏は「Give First」「Grit」「Go Beyond」の3つのバリューを掲げ、経営もできる技術責任者を育てる場として協会を運営していると説明した。
続いて登壇したのは、協会理事でテックブランディングワーキンググループを率いる長沢翼氏(株式会社LIFULL 執行役員CTO 兼 CAIO)だ。長沢氏はまず、本アワードが今年名称を変えた理由を説明した。2022年から4回にわたり「Developer eXperience AWARD」として実施してきた調査だが、実際に測っていたのは各社の開発者体験そのものではなく、テックブログや登壇、採用サイトといった発信を通じてエンジニアの中に形成された「ブランド」だったという。そこで名称を「開発組織ブランドアワード」に改め、目的を「開発組織ブランド発信・採用広報活動の指標・羅針盤をつくる」ことに定め直した。
調査は2026年4月15日から5月8日にかけてWebフォームで実施され、エンジニア転職サービスの登録会員から過去最多となる1,165件の有効回答を集めた。今回新たに「AIによる生産性向上(AI駆動開発・生成AI活用)」「プロダクトへのAI導入(AIエージェント機能)」の2項目を調査に追加したのが最大の変化だ。
上位30社には、1位のGoogle Cloudをはじめ、メルカリ(2位)、LayerX(3位)、LINEヤフー(4位)といった常連組に加え、日本電気(25位)や株式会社日立製作所(20位)のような初のトップ30入りを果たした企業も名を連ねた。初ランクインとなった日立製作所の担当者は「昔ながらのメーカーや家電といった印象を持たれることが多いと思うが、実際にはIT、OT、プロダクトを融合しながら社会インフラをデジタルで変革している」と述べ、発信強化の手応えを語った。株式会社SHIFTの担当者は「テストや品質と言われがちな中、開発組織ブランドという文脈で評価いただけた」と、自社イメージの転換への手応えを語った。
「技術に信念がありそう」という印象は、何によってつくられているのか
調査結果から長沢氏が示したのは、上位企業に共通する傾向の分析だ。社名を挙げた回答者が企業に対して持つ印象では「技術に信念がありそう」が最も多く、「エンジニアとしての成長」が例年通り上位に入った。そして今回新たに、AI活用のイメージが上位3項目に食い込んできたという。
一方、エンジニアが就職先に対して重視する点は「リモートワークなど働き方の柔軟性」が最多で、次いで年収、ワークライフバランスと続く。長沢氏は「就職先として重視すること」と「開発組織ブランドが高いと感じる企業のイメージ」は必ずしも一致しないと指摘した。認知している発信チャネルはテックブログやQiitaなどの技術情報発信が最も高く、次いで主催する技術イベント、Xと続く。そして「認知しているうち好感を持っている」割合で見ると、テックブログとエンジニア登壇イベントが突出し、OSS活動もこの好感度の押し上げに寄与していることが分かった。テックブログの内容別では、従来から強かった開発戦略・技術戦略に加え、新設項目である「AIによる生産性向上」がブランドへの好感に新たに寄与し始めている──これが、今回の調査で最も特徴的な変化だった。
