AIは「経験の価値」をどう変えたか
トレンド解説を担当したのは、テックブランディングワーキンググループの吉田武志氏(株式会社識学)だ。3年連続でこの場に登壇しているという吉田氏は、雇用主としての企業イメージを指す「エンプロイヤーブランディング」の観点から、今回の調査結果を読み解いた。
まず目についたのは、企業の情報発信の中で好感を持った接点として、AI関連の項目が急速に食い込んできていること。そしてもう一つ、2023年から2026年にかけて回答者のうち40歳以上の割合が増加傾向にあることだ。吉田氏はこの二つの変化を重ね合わせ、AI活用が組織にどう影響しているかを掘り下げた。
引用したのはAnthropicの研究結果だ。業界知識があり中堅以上の人材の方が、AIが暴走しがちな部分を制御しやすい。一方で経験が浅く素直な人材ほど成長スピードが速く、中堅の水準に早く追いつく傾向がある。吉田氏はここから「何が正しいか、どこで終わるか、どう直すか」を判断する経験の価値は失われるどころか、個人の判断にとどまらず、チームの検証基準や学習資産として蓄積されていく点にこそ、今のブランディングの焦点があると位置づけた。
過去3年の回答企業の属性を見ると、当初はWebアプリケーション・Webサービス系企業からの回答が多かったが、年を追うごとに多様な事業領域の企業からの回答が増えている。職種別でもPdMやサポート系のスキルを持つ回答者が増加しており、吉田氏は「コンピュータープログラマー」という職種は今後減少が予測される一方、その他のソフトウェア職やQA・テスターは増加が見込まれるという外部予測と、今回のアンケート結果が一致していると説明した。
エンジニアに「AIでこう成長できる」をどう語るか
こうした変化を踏まえ、吉田氏は企業への提言として、理解・判断・検証という「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の中で人間が担う部分を、具体的なストーリーとして候補者に伝えることを勧めた。「うちの会社ならAIを使ってこんな成長ができる」と語れるかどうかが、今後のブランディングの分かれ目になるという。
そのうえで吉田氏は、CTO協会が提供する「DX Criteria」と本アワードの位置づけを対比させた。DX Criteriaが組織の内側からDXの進捗を可視化するツールだとすれば、開発組織ブランドアワードは外側からどう見られているかを映す鏡だ。「自分たちはこう見られたいのに、実際にはこう見られている」というギャップを埋めるために、内と外、両方の視点を組み合わせて使ってほしいと吉田氏は締めくくった。
