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ハピネスチームビルディング ~自チームの成功体験を組織へ広げる~

行動と効果を言葉にする──発言や相談を「やってよかった」に変えるフィードバック

ハピネスチームビルディング ~自チームの成功体験を組織へ広げる~ 第2回

小島 優介(弥生株式会社)[著]

 「問題が起きたら、もっと早く相談してほしい」。そう伝えているのに、報告はいつも問題が大きくなってから届く。そんな状況に悩んだことはないでしょうか。10年以上前、駆け出しのマネージャーだった筆者は、報告が遅れたメンバーへ「言うのが遅い!」と怒っていました。早く報告してほしいから怒っていたのに、怒られたメンバーは、次の報告をさらに後回しにしていました。今回は、この黒歴史を出発点に、望ましい行動と、それによって生まれた効果を本人へ伝えて、報告や発言を「やってよかった」という体験に変える方法を紹介します。

「言うのが遅い!」と怒っていた黒歴史

 前職で筆者が駆け出しのマネージャーだった頃のことです。メンバーからの報告が遅れ、大きな手戻りが発生することが、たびたびありました。

 作業中に状況が変わり、この進め方では無駄になるとわかったのに報告しなかったため無駄な作業がさらに続いたり、障害につながるかもしれない問題に気づいたのに報告しなかったため影響範囲が広がったりしました。そうした問題を見るたびに、「もっと早く相談してくれれば防げたのに」と思いました。

 そして、実際に口にしていたのが、次の言葉です。

言うのが遅い!

 当時の筆者は、正しいことを伝えているつもりでした。早く状況がわかれば、方針を修正したり、知見のあるメンバーへ助けを求めたりできます。手戻りを小さくするために、早い報告が必要なのは確かです。

 だからこそ、報告が遅れる原因はメンバーの意識にあり、注意すれば次から早くなると考えていました。

 しかし、何度「早く報告して」と言っても、状況は思うように変わりませんでした。いま振り返ると当然です。筆者は、報告が遅かった時には強く言う一方で、適切なタイミングで報告してくれた時には何も伝えていませんでした。

 メンバーから見れば、報告して得られる体験は「怒られる」ことばかりです。いつ報告すればよかったのか、早く報告したことで何が良くなったのかは伝えられません。これでは、望ましいタイミングを学ぶ材料がありません。悪い知らせを伝えることには、ただでさえ心理的な負担があります。怒られる可能性があると感じれば、報告を後回しにしたくなるのも無理はありません。

 報告をためらっている間に状況が悪化し、さらに遅れてから報告する。そして、筆者がまた怒る。早い報告を増やしたかったはずの筆者自身が、「報告すると怒られる」という体験を作り、報告を遅らせる悪循環に加わっていたのです。

「なぜ発言しないのか」と言っていた黒歴史

 同じことは、「会議でもっと発言してほしい」にも当てはまります。

 以前の筆者は、会議に参加する以上、何か発言して貢献するのは当然だと考えていました。発言しないメンバーに不満を持ち、先輩にも後輩にも「なぜ発言しないのか」と伝えたことがあります。

 会議で発言しない人が、意見を持っていないとは限りません。意見を持っていても発言しないことがあります。後々にメンバーから聞いた発言しない理由は、次の3つでした。

  • 話す内容を頭の中で組み立て、考えをまとめている間に、議題が変わってしまい、会話へ入るタイミングを逃した。発言に慣れていないと、こうなりやすい。
  • 自分の考えが場の意見と反対だったため、波風を立てたくなかった。反対意見を検討せずに切り捨てる会議を見ていると、こう考えやすい。
  • 経験が浅く、「自分の発言で皆の時間を使ってよいのか」と不安だった。発言した時の成功体験がないと、こう考えやすい。

 これらは、発言しない本人の姿勢だけでは説明できません。考えをまとめる間がないこと、反対意見が検討されないこと、成功体験が得られないことは、日頃のチームのコミュニケーションで起きます。当時の筆者は、マネージャーとして、そのコミュニケーションを作れていませんでした。

行動が生んだ効果を伝える

 そのような黒歴史となる失敗を経て、筆者が行うようになったのが、望ましい行動へのポジティブフィードバックです。「どの行動によって、仕事やチームにどのような効果があったか」を本人へ伝えることです。

 「すごいですね」「さすがです」では、何が良かったのかがわからず、次に同じ行動を再現できません。伝える対象は、観察できた行動です。基本の型は、次の通りです。

「あなたが取った具体的な行動」によって、「仕事やチームに生まれた効果」がありました。ありがとうございます。

 例えば、実装を始める前に相談してくれたときは、次のように伝えます。

実装を始める前に方針を相談してくれたので、認識の違いに今の段階で気づけて手戻りを防げました。ありがとうございます。

 会議で質問してくれたときなら、次のように伝えられます。

優先順位の根拠を質問してくれたことで、前提が変わっていたとわかりました。チーム全体で、より重要なチケットに集中できます。質問してくれてありがとうございます。

 行動と効果のつながりがわかるうちに伝えた方が良いため、その場ですぐに伝えます。実際、筆者はチームの朝会にて、そのようなポジティブフィードバックを毎日しています。

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悪い報告にも、まず感謝する

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この記事の著者

小島 優介(弥生株式会社)(コジマ ユウスケ)

 デンソークリエイトで20年間BtoB向けのツール開発を担当し、現在は弥生株式会社のエンジニアリングマネージャー。 「ハピネスチームビルディング」のテーマでIT系の月刊誌「Software Design」で2022年より3年間連載。デブサミ2020関西ベストスピーカー賞1位。Microsoft Bu...

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