Claude CodeもCopilotもある今、IBM Bobは何が違うのか。TechXchange 2026で見えた「捨てられないコード」と「選ばせないモデル」
「IBM TechXchange 2026」レポート
AIコーディングツールは、Claude Code、GitHub Copilot、Cursorなどと選択肢が出そろい、個人でもチームでも使うのが当たり前になった。そのなかで、IBMが企業向けのAI開発パートナーとして売り込む「IBM Bob」は何が違うのか。米アトランタで開かれた開発者・技術者向けカンファレンス「IBM TechXchange 2026」の2日目、基調講演の前半はBobに充てられ、オンプレミス版や利用状況を可視化する機能が紹介された。基調講演と開発責任者への取材、日本のIBM Championの声から、Bobが得意とする仕事と、向いている現場を整理する。
補足
IBM TechXchange 2026の全体セッション(General Session)の講演は、日本IBMのサイトでオンデマンドで視聴することができます(2026年11月4日現在)。
「2時間しかない」が「2時間もある」に
Day 2の基調講演で最初に披露されたデモは、コードを書く場面ではなかった。Bobチームのプロダクトマネージャー(PM)であるVictoria Wu(ビクトリア・ウー)氏が演じたのは、営業部門の担当者だ。上司から、最近の受注が好調な理由と改善の余地を、提言つきで分析してほしいと頼まれる。会議は2時間後。勝敗分析(win-loss analysis)は、普段なら何日もかかる仕事だ。
ウー氏はデスクトップアプリ「Bob Desktop」に、アンケート結果が入ったmonday.com(業務管理プラットフォーム)のボードのリンクと、顧客インタビューの結果・CRMの案件データのExcelファイル2本を渡し、勝因と敗因を分析して経営向けのスライドにまとめるよう頼んだ。
Bobはやることリスト(ボードの取得、Excelの分析、Web検索、要約の作成、スライドの作成)を用意して作業を進め、「30件中18件を受注、受注率60%」といった集計と勝因・敗因の分析、営業・製品・経営層それぞれへの提言を含む5枚のスライドを返した。データはデモ用のサンプルだ。
monday.comとの接続には、前日に発表されたプラグインのマーケットプレイス「Bob Bazaar」を使っている。社員の画面に並ぶのは、管理者が承認して設定したプラグインだけだ。
デモを受けて、IBM Softwareでオートメーション(自動化)とAIを統括するゼネラルマネージャーのNeel Sundaresan(ニール・スンダレサン)氏は、Bobが「ちょうど1年前には開発者向けに作られていたツール」だったと振り返った。
「最初は『(会議まで)2時間しかない、短すぎる』と言っていたのが、今では『2時間もある。戻って検証もできるし、コーヒーブレイクも取れる』となったわけです」
IBM社内でBobを使う17万人超のうち、3分の2はビジネスユーザーだという。開発者とはまったく異なる体験が要るため、Bob Desktopを作ったと同氏は説明する。
デモを演じたウー氏自身も、長年の開発経験を積んだエンジニアではない。半年前までインターンで、この半年チームのPMを務めている新卒だ。
スンダレサン氏は「大学生でAIに仕事を奪われるのではと心配している方は、ビクトリアが見せた能力を見てください」と会場に呼びかけた。講演後のメディア向けQ&Aでも、Bobを大学に持ち込んでカリキュラムを作り、四半期ごとの社内調査で、新卒が以前よりはるかに多くの仕事をこなせていると確かめていると語っている。
では、職種や経験を問わず誰もがAIで仕事を進められるようになったとき、人は何を担うのか。スンダレサン氏は講演の冒頭で、この日のテーマを「ヒューマン・イン・ザ・ループ」(AIの処理の途中に人の確認を挟む考え方)ではなく、「人間がAIの能力を管理すること」だと位置づけた。
AIが能力を持ち込み、人は専門知識と責任を担う。企業がエージェントを作るときに人が下す判断として同氏が挙げたのは、どう作って既存のシステムにつなぐか、どう守るか、どこで動かすか、の3つだ。
「何かがうまくいかなかったとき、AIのせいにはできません。責任を負うのは皆さんです」
ではClaude CodeやCopilotと何が違うのか
とはいえ、Claude CodeやGitHub Copilotを使っている開発者から見れば、ファイルを読ませて分析させ、スライドやコードを作らせること自体は、もう珍しくない。
講演後のメディア向けQ&Aで、筆者はClaude CodeやCopilotとの違いをスンダレサン氏に尋ねた。同氏はまず「競合製品とは考えていない」と前置きしたうえで、違いを3つ挙げた。1つ目は、特定のモデル提供元に縛られず、複数社のフロンティアモデルを比べて評価していること。2つ目は、Bob独自のクレジット「Bobcoin」で課金し、モデルごとに異なる料金を1つの単位に換算していること。そして3つ目が、仕事の中身だ。
同氏の説明では、Bobで扱う仕事(ワークロード)の6割を移行とモダナイゼーションが占める。
「生産性の大部分は、今あるものを捨てないことから生まれます。多くのお客さまは、今あるものを捨ててPythonで作り直すことはできないのです」
Bobとほかのツールとの違いは、モデルの賢さではなかった。新しいアプリケーションを速く作ることより、何十年も動いてきたシステムを、止めずに前へ進めることに重心がある。
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斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)
株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...
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