「好奇心の3軸」で基礎を育て、W型人材を目指す
次はその木をどうやって大きく育てていくか。「必要なことは3つある」と曽根原氏。それが好奇心の3軸、「強さ×広さ×深さ」である。「自分がどれだけそのドメインに興味があるか。強い興味があるからこそ、自分の得意領域を深く知ろうとする努力をし、その得意領域の周辺を知ろうとするので知識の広さにつながるからです」(曽根原氏)
この3軸を念頭に置いた上で、次にどのようにスキルを育てて行くか。日本では人材のタイプを○型人材という言葉で表現する。例えばI型人材は特定の領域を深掘りしていく人材タイプである。次にT型人材は自分の専門領域の周辺領域を横に広げて、専門領域に生かしていく人材タイプ。π(パイ)型人材は2つの専門領域を持つ人材タイプ。だが曽根原氏は「プロダクトマネージャーはこの3つの先にある『W』型の人材タイプを目指すことがふさわしい」と言う。

さまざまなドメインを知ることによる視野の広さ、隣接エリアも含めた適度な深掘りが求められるからだ。「深掘りといっても『適度』が重要になる」と曽根原氏は続ける。ある程度の幅広さと深さによって、さまざまな知識がかけ合わさり、新たな洞察が生まれるという。「洞察を生むような知識・経験の身に付け方をすることが、プロダクトマネージャーにとって非常に重要なこと」と曽根原氏は言い切る。
ではどこまで深さを追求すべきなのか。プロダクトマネージャーは特定分野の研究者ではなく、ユーザー問題の専門家である。自分が得意とする領域のマーケットユーザーに関しては「誰よりも知っている」と言えることが大事なのだ。
「なぜユーザーはその問題を抱えているのか。その背景にはどんなビジネス、文化、社会的背景があるのか。どんな解決策がふさわしそうなのか。その解決策はどのくらいのビジネスとして成り立つのか。このようなユーザーの問題をあらゆる角度で考えられるレベルで、ドメインのナレッジを勉強していく必要があります」(曽根原氏)
例えばエンジニアやデザイナー、リーガルチーム、セールスなどのさまざまなドメインプロフェッショナルな人たちが話していることが理解できるだけではなく、質問できるようになることだ。そして質問や議論から得られた情報をもとに当たらたな気づきを得られるようになれば、「適度な深さ」を実現できていると言える。
「プロダクトマネージャーとしてのスキルの木の育て方の第一歩は、自分が強い興味を持てるドメインを選ぶこと。そして好奇心の3軸でスキルを育て、まずは特定の分野で1番を目指し、その後広さと深さを追加し、最終的にはW型人材を目指していくことです」と語り、曽根原氏はセッションを締めくくった。
PMの日常的な仕事は? ユーザーを把握するには? Q&Aコーナー
セッション後のQ&Aコーナーでは、参加者から多くの質問が寄せられた。
「営業でも優秀なプロダクトマネージャーになれますか」という問いに対して「すべての職種から目指すことができますが、比較的移行しやすいのは、ビジネス系、デザイナー系、技術系の3種のいずれかの軸をしっかり築いている人です」と及川氏が回答。続けてコンサルタント職の方からの「プロダクトマネージャーを目指すにはどうすれば良いか」という質問に対しては、「主体性を持ってお客さまの支援していくようにすること」と回答。そうすることで物事の本質を考えて課題を追求し、そのための価値をどう提供すればよいか考える思考法が育っていくからだ。
「転身のタイミングや年齢」に関する質問についても、「タイミングや年齢は特にありません。ある分野で経験を積み、自分がプロダクトマネージャーとしてやっていける自信が得られたときが転身のタイミングだと思います」と及川氏。ただ米国や日本の一部企業では大学を出て、新卒者のためのオンボーディングを用意することで、そのままプロダクトマネージャーになるというキャリアも確立されているので、最初からプロダクトマネージャーを目指すのも良いとのこと。
「プロダクトマネージャーとは何をしている人のことか。日常的な仕事内容について教えてほしい」という質問には、「CEOがある日突然、あなたのところにやってきて『10億円あげるから、何か会社がもうかることをやって』と言われるのが、プロダクトマネージャーです」と曽根原氏。ここでいう10億円とは単なるお金ではなく、エンジニア、デザイナー、データサイエンティストなどで構成されたプロジェクトチームを任されるということ。このチームで何をつくるのか考え、ビジネスとして結果を出すのがプロダクトマネージャーの仕事であると曽根原氏は言うのである。「プロダクトが生まれるところから世の中に届け、それが広がっていくのかどうかまでを見届ける。それがプロダクトマネージャーの日常の仕事です」と回答した。
「プロダクトマネージャー、プロダクトオーナー、プロジェクトマネージャーといった職種があるが、プロダクトマネージャーがすべてを包括しているイメージでしょうか」という質問には、「プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの違いについては、連載で記述している(第3回)ので読んでください。『プロダクトオーナー』については、組織によって定義が異なります。スクラムにおけるプロダクトオーナーの役割の場合はプロダクトマネージャーと同等の役割、最終責任者という意味でのプロダクトオーナーはプロダクトマネージャーのキャリアの先にあるものとして捉えています」と及川氏は回答(小城氏による補足は後述)。
「営業から『○○万円で受注できるので、この機能の開発をお願いします』と言われることがよくあります。その際にやる、やらないの判断をどうするか。また開発項目の管理方法、優先付けの方法について教えてください」という質問には、「プロダクトマネージャーですべての判断をしないことです。営業さんから、『受注できるので開発してください』と言われても、そこで止めて、営業チーム内の収益性や顧客との関係性などから優先度を決めてもらうのです。プロダクトマネージャーは、営業で優先順位付けされたリストを見て、検討していきましょう」と曽根原氏が回答。
「ユーザーの問題を把握するために、具体的に取り組んでいること、注意していることについて」という質問に対しては、曽根原氏が次のように回答。「ユーザーの問題を把握するために一番大事なことは、先入観を排除して、ピュアな気持ちで自分がユーザーになってプロダクトに触れることです。そこから感じることを大切にすることが、問題を把握するための感性を育てることにつながります」(曽根原氏)
一方、小城氏は「私は真逆の方法をとることがあります。どうすればユーザーが使わなくなるのか、何がどうなったらこの人は使わなくなるのか、そこを疑いながら、ユーザーが便利と思っていることを深く追求していきます」と別の手法も提示した。
