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アイディアを生み出す道しるべに 「ONE UNIVERSAL HUMAN TRUTH」をとらえた事例を紹介

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2020/11/24 08:00

面白いアイディアがあるのになかなか実現まで至らない。斬新な企画を世の中に打ち出したいけれど何から始めたらいいかわからない。そんな風に考えるクリエイター、マーケターの方に向け、本連載では「面白いアイディア」を実現するためのヒントをお伝えしていきます。第10回は、人類共通のひとつの真実「ONE UNIVERSAL HUMAN TRUTH」をテーマにお届けします。

目次

属性のバリアを越えて共感可能な「人類共通のひとつの真実」とは

 面白いアイディアの生み出し方をテーマに、「課題と制約の裏返しがアイディアとなる」という話を前回の記事でしました。普段は当たり前だと思っているようなマーケティングの基本的な課題や制約に対して掘り下げて考えるクセをつけることで、「解決策としてのアイディア」が生まれやすくなるというものです。

 ここでもうひとつ重要な視点として、狙いたいターゲットや反響を得たいと思っている人々に対し、「どうすれば感情を動かすアイディアを生み出すことができるのか」というものがあります。

 私自身の属性としては、「長いこと東京に暮らして広告クリエイティブを作り出す場所に身を置く男性」ですので、自分と近しいバックグラウンドや嗜好を持っていそうな人たちに対しては、どのようなメッセージや表現を届けると琴線に触れて喜んでもらえるか、ある程度明確なイメージを持つことができます。

 その反面、「九州に暮らす受験を控えた女子高校生」や「すでに仕事をリタイアされた年配の方」など、自分自身の目に見える範囲のリアリティからやや遠い属性や嗜好を持った人たちが何に対して感情が動くのか、いまいちクリアにイメージすることはできません。

 さらに言うと、「中国で暮らす自分と同じ年代のビジネスパーソン」や「欧州の若い世代に向けたコミュニケーション発信」などになってくると、日本で暮らすリアリティのさらにその先のバリアがあり、あまり解像度も高くないぼんやりとした想像力しか働きません。

 もちろん大前提として、こういった生活者のマインドや洞察について、定性・定量調査などからしっかりと理解を深める努力をするのですが、さまざまな違いを抱えた人々の最大公約数の感情を動かすためのアイディアを生み出す行為は、自分の想像力の限界をはるかに超えた、ものすごく困難なことにも思えてきます。

 そんな厳しい条件の中で、アイディアを生み出す際に道しるべとなる考えかたがあります。それは、人類に共通するひとつの真実という意味の「ONE UNIVERSAL HUMAN TRUTH」という言葉です。

 たとえば、お腹が空くと不機嫌になったり集中力が散漫になるのは、東京在住の40代男性でも、北海道に暮らす小学生の女の子でも、フィンランドの若者でも大差はないはずです。ほかにも、子育てをしながら毎日家族の料理を作ることの大変さは、その人のバックグラウンドや年齢、嗜好、あるいは国籍や文化をも超越して共有できるものであるはずです。

 このような、属性のバリアを飛び越えて共感可能な強い感情のことを、「ONE UNIVERSAL HUMAN TRUTH」(人類共通のひとつの真実)」と呼んでいます。この概念は、ある海外のクリエイターが登壇した場で耳にしたものです。私なりに身近な言葉に噛み砕くと、「人生あるある」と言い換えられるのではないかと思っています。

 人間が持つ、普遍的で生理的で、かつ本質的な感情を想起して訴えかけることで、自分自身が持つリアリティの限界にとらわれない、ユニバーサルなアイディアを生み出すことができるようになるのです。

 ではこの概念を私が実際に手掛けた事例から紹介していきます。これは東京オリンピックに向けて、あらゆる世代にスポーツが持つ素晴らしさを伝えることを目的とした映像作品です。こちらをご覧ください。

 

 まずは「オリンピックとはなにか?」という命題を掘り下げて考えるところから始めました。オリンピックは4年に1度のスポーツの祭典として、世界のトップアスリートたちが人間の限界に挑みしのぎを削る姿に、私たちは熱狂し、手に汗を握って見守ります。

 かたやスポーツそのものが持つもうひとつの価値として「自分自身の限界を超える努力を続ける」というものがあります。これは、ごく一部の選ばれしトップアスリートだけではなく、スポーツを始めたばかりの子どもであっても同じです。そこで、「スポーツの魅力とは、今の自分を乗り越える努力を続けること」を人類共通のひとつの真実(=人類あるある)としてコンセプトに掲げました。

 それを映像表現として実証するために、記録が伸び悩んでいる小学生、60歳を超えるシニア、ハンディキャップを抱えている青年、そして引退したオリンピックのメダリストなど多様なバックグラウンドを持つ人を集め、ひとつ共通のルールを設定しました。

 それは、1ヶ月間トレーニングをして、現在の自己ベスト記録を乗り越えることに挑むというものです。本番当日は、記録の遅い順番にスタートをして、全員が自己ベストを出すと同じタイミングでゴールするよう設計しました。つまり、その中で自己ベストを更新する人がいると、その人が最初にゴールすることになります。

 これは筋書きのないドキュメンタリーとして撮影をしたものなので、本番当日まで私たち制作者側もどのような結末になるのかまったくわからない状態でした。「自分自身の限界を超えることに挑む姿」というのは、「人類共通のひとつの真実」として人の心の感動を与えるものになるのだと実感しました。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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