はじめに
PHPは、この11月にバージョン8.5となりました。前バージョンである8.4からほぼ1年ぶりのリリースになります。PHPは、導入のしやすさと使い勝手の良さでリリース当時から人気があり、バージョンアップのたびに洗練と使い勝手の向上を目指した機能が多数実装され、改良されています。本連載ではPHPの最新バージョンにフォーカスし、その強化・変更ポイントを紹介していきます。PHP 8.5の新機能の一覧については、第7回を参照してください。
対象読者
- PHPの最新バージョンの機能を把握したい方
- PHPの経験者で、PHPに改めて入門したい方
- プログラミング言語の最新パラダイムに関心のある方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
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macOS Sequoia
- PHP(8.5.0)
- Visual Studio Code 1.106.3(PHP Intelephense 1.16.3)
[NOTE]サンプルの実行
掲載サンプルは、それぞれの.phpファイルに記述されています。動作確認は、PHP 8.5.0をHomebrewでインストールしたmacOS上で、拡張機能「PHP Intelephense」をインストールしたVSCode(Visual Studio Code)のデバッグコンソールに出力させることで行っています。
関数(1)
今回は、新設の関数や、既存の関数の拡張について紹介します。
array_first関数とarray_last関数
PHP 8.5では、配列の最初と最後の値を取得できるarray_first関数とarray_last関数が利用できるようになりました。
$array = [1, 3, 5, 7, 9]; print(array_first($array) . PHP_EOL); // 1 print(array_last($array) . PHP_EOL); // 9
これらの関数が登場するまでは、以下のようにarray_key_first関数、array_key_last関数を用いて先頭および末尾要素のキーを取得する必要がありました。
echo $array[array_key_first($array)] . PHP_EOL; // 1 echo $array[array_key_last($array)] . PHP_EOL; // 9
配列に2回触る必要があるので、1個の関数呼び出しで済むarray_first関数とarray_last関数を使う方が効率が優れています。
grapheme_levenshtein関数
PHP 8.5では、書記素クラスタにおけるレーベンシュタイン距離を計算できるgrapheme_levenshtein関数を使えるようになりました(書記素クラスタについては第6回を参照)。
レーベンシュタイン距離とは編集距離とも言い、2つの文字列を同じにするために必要な「挿入」「削除」「置換」の最小操作回数を示す指標で、距離が小さいほど文字列は似ているとされます。
grapheme_levenshtein関数は、1バイト文字を対象としたlevenshtein関数、そのマルチバイト版であるmb_levenshtein関数の書記素クラスタ対応版です。共通するのは、2つの文字列のレーベンシュタイン距離を計算することで、文字列の類似度を調べるのに用いられます。戻り値が小さいほど類似度は高く、一致と見なせば0となります。
grapheme_levenshtein関数は書記素クラスタに対応しているので、例えば以下のリストのような一見異なった文字列でも、類似度は0すなわち等しいと判定されます。
var_dump(grapheme_levenshtein("\u{0065}\u{0301}", "\u{00e9}")); // Int(0)
\u{0065}は「e」、\u{0301}はダイアクリティカルマークである「́」で、\u{00e9}「é」に合成できます。これにより、両者は同じ文字列であると判定されます。
[NOTE]国際化対応関数の利用
macOS環境においてHomebrewを使ってPHPをインストールした場合、書記素関数をはじめとする国際化対応関数の利用には別途php-intlのインストールが必要です。
