開発チームでビジネス共有会も実施 今後は「組織を変えるハードルを下げたい」
――デザイナーとしてプロダクトに関わるようになり、印象に残っていることはありますか?
4年ほどコンサルティングの現場にいたため、開発チームがどのような雰囲気か、あまりイメージが湧いていなかったのですが、ビジネスのことを理解しようとしていることに感銘を受けました。ただ現場から発注された機能を開発するのではなく、受発注関係にならないよう、全員が当事者として、取り組んでいることがとても伝わってきたんです。
月に1回、開発チームでビジネス共有会という会議を行っていて、そこで開発としてのマイルストーンや方針だけでなく、売上の数字をはじめSaaSビジネスの指標や、お客さまからいただいたご意見なども共有をしています。いま、ビジネスとしてモチベーションクラウドがどういう状態で、だからこういった実装をする必要があるというのを開発チーム全員が意識しているんですよね。
私も、デザインしたものをエンジニアの後輩に渡したときに「これってこういう体験だったら、もっとこうした方がいいんじゃないですか?」と、フラットに提案してくれたことがあり、とても驚きました。「エンジニアが全然動いてくれない」、「PdMやデザイナーが決めてないからやれませんでした」といった受発注関係がまったくないので、私自身もストレスがないんです。こういった姿勢がとても大切なのだと改めて感じています。
――モチベーションクラウドで課題に感じていることや、今後取り組んでいきたいことについて教えてください。
家族や友人関係など、人の問題を解決するのってとても難しいですよね。それと同じく、いろいろな立場やバックグラウンドを持った人がいるなかで組織を変えることが難しいのは当然です。しかし、組織改善を“あまりにもハードルが高いもの”だと捉えている人が多いのではないかと感じています。たとえいまの組織に違和感を覚えていても、自分にはどうしようもないことだと取り組むこともなく諦めてしまうのが多くの組織の現状だと思います。
私はこれから先、モチベーションクラウドによって、組織の問題解決のハードルを下げたい。意欲さえあれば、変えたいと思った人が誰でも組織を変えられるようにしていきたいです。
「良いデザインは見えない」と言われることもありますが、そこにあることを意識させないことが大切だと、私自身も感じています。コップは持つ用に設計されているために問題なく持つことができますが、少しでも不具合があれば、違和感を抱かせてしまう。
それと同じように、組織を変えることもやる気を出さなければできないものではなく、負荷をかけなくても良い部分をもっと増やしていきたいですし、デザインによってより自然な形で実現できたらと思っています。たとえば、行動データをもとに「将来こんなリスクがありますよ」という通知が適切なタイミングで届くなど、自然にユーザーの行動を促進するようなサポートをしていきたいですね。
リンクアンドモチベーションでは、「良い会社の定義を変える」という言い方をすることもありますが、売上をあげている会社が良い会社なわけではなく、「そこで働く人たちが自分の会社を勧めたい」「この会社で実現しようとしているビジョンに共感できる」「いまの仕事にとても価値を感じている」というのも良い会社の指標としてあるべきだと思っています。お金を稼ぐことができるだけではなく、1人ひとりにとって、働く場所として会社を素敵だと思えるようにしたい。それを実現するために、ほかのプロダクトも含め、シリーズ全体のブランド体験設計やマーケティングにも関わっていけたらと個人的には思っています。
「仕事だから楽しくなくても仕方ない」と諦めてしまっている人が意外と多いように感じています。「お金さえ稼いで、定時に帰れればいいや」というような……。ですがこれから30年、40年と仕事をするなら、「この会社だからこういうことができた」とか、やりがいとは言わなくても、いてよかったなと思える時間を過ごせた方が、世の中にとっても本人の人生にとっても良いんじゃないかなと。そのために、私もできることをしていけたらと思っています。
――杉江さん、ありがとうございました!