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Developers Summit 2025 Summer セッションレポート

「両利きのプロジェクトマネジメント」に学ぶ協働のつくり方 ──“いいもの”を作るための目線の揃え方

【18-C-9】“いいもの”を作りたい!周囲を巻き込むプロジェクトマネジメント~エンジニアが部署を越えて協働するには?~

 「いいものを作りたい」。プロジェクトに関わる多くのエンジニアがそう考えているにもかかわらず、プロジェクトが進むにつれて意思や認識が噛み合わなくなり、モヤモヤや不満を抱えたまま疲弊していくケースは後を絶たない。こうした「うまくいかない構造」に真正面から向き合うのが、株式会社コパイロツトの米山知宏氏と長谷部可奈氏だ。本セッションでは、米山氏の著書『両利きのプロジェクトマネジメント』を起点に、“なぜプロジェクトは噛み合わなくなるのか”を構造的にひもときながら、「いいもの」を共につくるために必要な視点や考え方が共有された。

“いいもの”を作りたいのに、なぜプロジェクトは噛み合わなくなるのか

 登壇者の一人である米山知宏氏は、民間企業や自治体のDX・変革プロジェクトを数多く支援してきた人物だ。本セッションでは、米山氏の著書『両利きのプロジェクトマネジメント』を手がかりに、ともに執筆を担った長谷部可奈氏をスピーカーに迎え、プロジェクトで「いいもの」を共につくるための考え方を解説した。

株式会社コパイロツト Project Enablement事業責任者/新潟県村上市役所CIO補佐官 米山 知宏氏
株式会社コパイロツト Project Enablement事業責任者/新潟県村上市役所CIO補佐官 米山 知宏氏
株式会社コパイロツト プロジェクトマネージャー/一般社団法人 アクティブ・ブック・ダイアローグ協会 理事 長谷部 可奈氏
株式会社コパイロツト プロジェクトマネージャー/一般社団法人 アクティブ・ブック・ダイアローグ協会 理事 長谷部 可奈氏

 米山氏、長谷部氏が所属する株式会社コパイロツトは、成果物そのものではなく、「プロジェクトを前に進めるプロセス」を専門に扱う。業界の常識からすれば珍しい企業と言えるが、「成果を生み出すためのプロセスや仕組みこそ、広義のエンジニアリングそのもの」と両氏は位置付ける。

 こうしたエンジニアリングの技術を体系化したのが、『両利きのプロジェクトマネジメント』である。「両利き」という言葉には、「成果に向かってプロジェクトを前進させると同時に、そこに関わる人々のモチベーションや成長、さらには幸せも大切にしたい」という思想が込められている。

 ここで長谷部氏は、「皆さんの組織にも、このような課題はないだろうか」と、よくある“モヤモヤ”の例を挙げる。

 一つ目が、プロジェクト内に生じる熱量の差である。主体的に関わり、より良いものを作ろうとするメンバーがいる一方で、「アサインされたからやるしかない」と割り切って参加するメンバーもいる。この温度差を抱えたままプロジェクトが進行すると、歪みは徐々に広がっていく。

 二つ目は、違和感や懸念を口にしづらい空気だ。「何かおかしい」「このままだとまずい気がする」と感じていても、多くの場合、会議の場で言葉にされることはない。そして、問題は表に出ないまま蓄積していく。

 三つ目が、事業目標至上主義である。ビジネス側の発言力が強く、現場の事情や作る側の論理が後回しにされるうちに、スケジュールは逼迫し、実装は場当たり的になっていく。

 「プロジェクトでは、立場の異なる人が、それぞれの判断基準を軸に動くことがよくある。この基準が共有されないまま評価が行われると、すれ違いが蓄積していく」と長谷部氏は説明する。そして、この状態が続けば、「いいものを作りたい」という思いは徐々に減衰していく。

 モチベーション低下を避けるために、多くの現場が取りがちなのが「課題を洗い出し、改善タスクに落とす」対応だ。しかし長谷部氏は、これを明確に「失敗するルート」だと断じる。その理由は大きく二つある。

 一つ目が、「無限課題パターン」だ。立場や役割の異なるメンバーがそれぞれの視点で課題を挙げ始めると、多くの場合、議論はまとまらなくなる。各部署から大量の課題が集まり、「では、どうするのか」と立ち尽くす羽目になるのだ。こうなると、せっかく集まった課題も、「今も一応回っているから」と判断され、解決されないまま棚上げされることになる。

目指す姿が揃っていない状態で課題を洗い出すと、各論は増え続け、解決にたどり着けなくなる
目指す姿が揃っていない状態で課題を洗い出すと、各論は増え続け、解決にたどり着けなくなる

 もう一つが、「お通夜パターン」である。課題を出すよう促されても、「個人的な感情だと思われないか」「方向性と違っていたらどうしよう」と不安になり、誰もが言葉を飲み込む。その結果、「特に大きな課題はありません」という沈黙が場を支配する。表面的には平穏に見えても、水面下では不満や違和感が確実に蓄積されていく。

 これらに共通しているのは、「立場や役割によって見える世界は異なる」という前提を認識しないまま、課題の発見から入ろうとしている点だ。議論を有益なものとするためには、何よりも「目線を揃える」ことが欠かせないのである。

次のページ
プロジェクトの目線を揃えるための「4つの観点」と「3つの軸」

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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川又 眞(カワマタ シン)

インタビュー、ポートレート、商品撮影写真をWeb雑誌中心に活動。

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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