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エンジニアのためのドキュメントライティング術

技術者向けドキュメント、書き方のコツは? ドキュメントを書き始める際の具体的な方法を伝授

エンジニアのためのドキュメントライティング術 第2回

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 本連載では、ドキュメントライティング術を学んだことがない人向けに、「ここまでは最低限知っておくと良い」という知識をお伝えします。今回の記事では、前回の内容(「ドキュメントの重要性」「準備フェーズ」)を踏まえて、いよいよ実際にドキュメントを書く「作成フェーズ」と、リリース後に持続的に価値を高めていく「運用フェーズ」について解説します。さらに、近年欠かせない話題である「生成AIとドキュメントライティングとの関連」についても触れていきます。

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これまでのおさらい

作成フェーズ

 フェーズ2(作成フェーズ)では、文章をすぐにでも書き始めたくなるところですが、いきなり文章から書き始めるのは避けましょう。もちろん、人によってはいきなり書いても、読み手のゴールを達成する文章を書けますが、ドキュメントライティングに不慣れな人の多くは、そこまで上手に書けません。結果的に、最も重要な「読み手の課題」を解決できないドキュメントが生まれてしまいます。

 フェーズ2では、大きく以下の3ステップで進めるとよいでしょう。

  1. 構造化されたアウトラインの作成
  2. アウトラインを構成するパーツである段落の作成
  3. 段落を構成する一文の作成

構造化されたアウトラインの作成

 フェーズ1(準備フェーズ)で定義した、読み手のゴールを満たすために、まずはアウトラインを先に作りましょう。読み手のゴールを最上段の目的として、ゴールの達成に資する情報(根拠・説明・例など)を構造化して追加していきます。イメージは次のような構成です。

 読み手のゴールを意識しながら、アウトラインを先に作ることで以下のメリットがあります。

  • 「このドキュメントは誰の何を解決するのか?」というゴールからブレない
  • 書いている途中で迷子になりにくい
  • 全体像と詳細のバランスを取りやすい

 アウトラインの構造には、典型的なパターンがいくつかあります。

構造化パターン

 読み手のゴールの達成につながるための情報は、単に羅列するのではなく、一定の規則を持たせて構造化すると読みやすい文章になります。典型的な構造化パターンは次の通りです。

1. 全体から部分へと展開する

  はじめに概要・大枠を示し、その後に詳細を掘り下げる方法です。たとえば、システム全体像→各コンポーネント→その詳細、といったように徐々に具体化します。

2. 既知の事柄から未知の事柄へと展開する

  読者がすでに理解している概念からスタートして、新しい情報や複雑な情報に移行します。「○○はご存知の通り△△です。一方で△△を拡張する形で、本ドキュメントでは□□を扱います」のように記述すると、情報の現在地が伝わりやすくなります。

3. 相手が知りたい事柄から説明する

  技術仕様のように、単に必要な情報だけを読み手が探しているケースは非常に多く存在します。たとえば、何らかのソフトウェアのREADMEであれば、インストール手順や基本的な使い方を先に出してあげるのがこのパターンに当たります。細かなオプション設定やニッチなユースケースを満たす拡張APIなどは、後半や別ドキュメントでおさえるようにします。

4. 作業や手順を流れに沿って説明する

 作業手順書や操作マニュアルなどでは、実際に行う順番に沿って記述するのがわかりやすいでしょう。「1. ○○をダウンロードする → 2. △△をインストールする → 3. □□を起動する」といった流れです。

アウトラインを構成するパーツである段落の作成

 構造化されたアウトラインを作ったら、アウトラインの項目ごとに肉付けしていきます。その際、「段落ごとに、言いたいことを1つに絞る」という原則を意識します。1つの段落に複数の主張や論点を詰め込みすぎると、読み手は混乱しやすくなります。混乱を避けるために、以下の2種類のセンテンス(文)を意識しましょう。

  • トピックセンテンス(主張/要旨)
    • その段落で言いたいことを一言で表します。
    • 読み手が「この段落では何を言いたいのか」を素早く把握できます。読み手がこの段階で理解・腹落ちしたならば、以降は読み飛ばしてもよいように書きます。
  • サポートセンテンス(理由/根拠/例など)
    • トピックセンテンスを補足する情報を挙げます。
    • 読み手が、トピックセンテンスだけでは腹落ちできない・理解できない場合に活用する情報です。
    • 根拠や具体例を示すと、理解を後押しできます。

段落を構成する一文の作成

 一文の書き方にもコツがいくつかあります。本記事では特に意識して欲しいポイントを2つ紹介します。

節を先にして、句を後にする

 『【新版】日本語の作文技術』(朝日文庫)で説明されるように「節を先に、句を後に」書くと、読みやすさが劇的に向上します。具体的な例を挙げてみましょう。たとえば「クラウド上にあるコンテナ」に対して補足を加える一文の場合、次のような語順が考えられます。

悪い例

 クラウド上のユーザーが頻繁にアクセスするコンテナ

良い例

 ユーザーが頻繁にアクセスするクラウド上のコンテナ

 前者は「クラウド上のユーザー」と取られてしまう可能性が多少あります。一方で後者は、誤解なく読めます。順序のちょっとした違いですが、これだけで読み手の理解のしやすさに差が生じます。「クラウド上の、ユーザーが頻繁にアクセスするコンテナ」と句点を含めることによって、意図が伝わりやすくなりますが、この例では良い例で記載している一文の方がシンプルでしょう。

「代名詞」を避ける

 文章を書くときに、「これ」「それ」という代名詞を多用すると、読み手と書き手で指している対象がずれることがあります。特に、以下のような場合はあいまいさを招きやすいです。

  • 一つ前の文で複数の要素を挙げている
  • 長い段落の最後に「それは〜」と書く

 指し示している対象を繰り返しても問題ありませんし、単に「それ」と書くよりは「そのシステム」「本機能」など具体的に書くほうが安全です。

最後に読み直す

 文章を書き上げたら、最後の仕上げとしてレビューします。時間に余裕があれば、次の取り組みを試してみましょう。

音読によるセルフレビュー

 声に出して読むことで、目視だけでは見つけられなかった「おかしな接続」「文章の冗長さ」「誤字や脱字」などに気づきやすくなります。

3Cの観点でレビュー

 優れた文章には 3C の要素が含まれている。3Cは Clear、Concise、Consistentの頭文字からなっており、それぞれ次を意味します。

  • Clear(明確さ):あいまいな表現はないか?
  • Concise(簡潔さ):短くてわかりやすいか?
  • Consistent(完全性):構造やコンセプト、語彙が一貫しているか?

 この3つの観点でドキュメントを読み直すことで、さらに読み手に有用なドキュメントを作成できます。

第三者のレビュー

 可能であればユーザー、同僚や別のチームメンバーに読んでもらいましょう。前回の記事で紹介したように、ドキュメントには常に知識の呪いが付きまといます。書き手には気付けない観点を知るには、自分以外の第三者に読んでもらうのが効果的です。

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運用フェーズ

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この記事の著者

岩瀬 義昌(イワセ ヨシマサ)

 大手通信事業者にて、大規模IP電話システムの開発、内製、アジャイル開発、人事などの業務に従事後、現在はGenerative AI Project の Leaderを務める。『エンジニアのためのドキュメントライティング』『エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか』『エンジニアリングが好きな私たちのためのエンジニアリングマネジャー入門』を翻訳。エンジニアに人気のポッドキ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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