はじめに
前回の記事では、Claude Skills(以下、Skills)の基本概念と公式Skillsの使い方について説明しました。
本記事では、Skillsを使うタイミングの考え方と、業務で使えるカスタムSkillsの設計・実装方法を、コード例を交えて解説します。効果的なSkillsの設計原則から、Anthropic SDK を使った実装、さらには実際の業務シーンでの活用例まで、実践的な内容をお届けします。
本記事を読むことで、以下のことができるようになります。
- Skillsを使うべきシーンと一度きりのプロンプトとの使い分け方法
- 効果的なSkillsの設計原則(metadataと本文の書き方)
- カスタムSkillsの実装・デプロイからSDKでの呼び出しまでの具体的な手順
- 実際の業務シーン(週報作成)での活用例
対象読者
- Agent Skillsに興味がある方
- TypeScriptの基本的な知識がある方
- Anthropic APIキーを取得済みの方
- 業務でのAI活用を検討されている方
Skillsを使うべきシーン
例えば、「この記事を要約して」「この論文を日本語に翻訳して」といった一度きりの指示やその場での調整には通常のプロンプトが適しています。一方、毎回長文の指示を入力している場合、それはSkillsとして作成すべきサインです。
「このAPIエンドポイントのドキュメントを作成して。リクエスト形式、レスポンス例、エラーハンドリング、認証方法を含めて、社内のAPIドキュメント標準に従って、そのドキュメントは...にあります。」
このような長い指示をSkillsに変換することで、説明の手間を減らし、実行内容の一貫性を高められます。私も普段の業務の中で、繰り返しの作業を効率化するためにSkillsを利用しています。
以下は、私が個人で開発しているキミガタリというサービスです。キミガタリでは、物語を管理・作成できます。
毎月、アップデートの記事を作成していましたが、この記事の内容はシンプルです。最初の挨拶から始まり、私が今月興味を持ったIT業界のトレンド情報を紹介し、機能更新に触れた後、締めの挨拶に入るという構成です。
単純な作業ですが、毎月行う必要があり負担だったため、専用のSkillsを作成しました。その一部を公開します。
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name: changelog-design
description: キミガタリ(Kimigatari)の月間新機能レポートを作成します。
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# キミガタリ 月間アップデートレポート・ガイド
## 概要
このスキルは、**キミガタリ(Kimigatari)** のSNS運用・広報活動の一環として、
月ごとの新機能・改善点・バグ修正をわかりやすくまとめるためのガイドラインを提供します。
**主な目的:**
- Gitコミット履歴から更新内容を抽出・分類
- 読者に伝わるトーンで月間レポートを作成
- Qiitaやブログで共有するための整った構成に整形
## 手順
### 1. 時間の確認
現在時刻を確認し、当月の対象期間(例:10月1日〜20日)を特定します。
### 2. コミット履歴の取得
指定期間内のGitコミットを調査し、どのような更新が行われたかを把握します。
### 3. 内容の整理
変更内容を以下の3カテゴリに分類します。
| カテゴリ | 内容例 |
| ------------ | -------------------------------------- |
| 主要な新機能 | 新しい機能・UI・UX 改善 |
| 技術的な改善 | ライブラリ更新・パフォーマンス向上など |
| Bug 対応 | 不具合修正・軽微な修正など |
## レポート構成
1. **冒頭の挨拶**
- 「こんにちは、キミガタリ開発チームです!」から始めてください。
- 今月、**開発チームとして興味を持った新しいサービスや業界の動向**を最大三つ紹介してください。
たとえば、生成AIやWeb技術の新トレンド、注目されたAPIサービスなど、チームとして共感したテーマを簡潔に述べます。
- 内容はPlaywright MCPの `mcp__playwright__browser_navigate` ツールを使用して、下記のURLにアクセスして取得してください。
```
https://qiita.com/Syoitu/feed
```
このフィードにはSyoituの最近の記事がAtomフォーマットで含まれています。レポート対象月の記事を抽出し、その内容から興味深いテーマを選んでください。
...その他セクションのフォーマット指定
処理の流れは、現在時刻の確認から始まり、私のQiitaで今月執筆した記事をPlaywright MCPサーバーを使って取得し、要約します。その後、今月のGitコミット履歴を取得してカテゴライズし、指定フォーマット通りに記事を作成します。このSkillsのおかげで、作業時間を大幅に削減できました(目安:従来比で約6割)。
ただし、Skillsを実装する際には、権限についても考慮する必要があります。第1回で説明したように、各Claude製品のSkills利用時のコード実行環境は異なります。今回のSkillsはGitのコミット履歴を取得する必要がありますが、キミガタリはプライベートリポジトリであるため、一時的なSandboxではアクセス権限の付与が難しく、Claude Code環境でのみ実行可能でした。そのため、Skillsを作成する際には、どの環境で動作させるかを機能要件として考慮する必要があります。
